末澤誠也、俳優としての強みは“人間味”? 実写版『おそ松さん』愛される長男像を深掘り

特に印象的なのが、目と口元の動きだ。調子に乗っているときの得意げな顔、都合が悪くなった瞬間に泳ぐ目、情けなさが一気に出る口元。どの表情も細かく、見ている側に「本当にどうしようもないな」と思わせる。にもかかわらず、不思議と嫌な感じにはならない。おそ松のクズっぷりをきちんと表現しながら、愛される余白も残しているところに、末澤ならではのバランス感覚がある。

サクラ(宮内ひとみ)に連れられて向かうレジスタンスの特訓シーンも見どころだ。コミカルな場面でありながら、末澤の身体の使い方にはキレがある。動きの勢い、リアクションの速さ、間の取り方が的確で、アクションとしてもちゃんと目を引く。ライブや舞台で培ってきた身体感覚が、映像の中でも生かされているのだろう。鼻血を出すシーンも、ただ見た目のインパクトで笑わせるのではなく、そこに至るまでのテンションと、その後の崩れ方まで含めておそ松になっている。
一方で、本作のおそ松が単なるギャグ要員に見えないのは、後半で見せる芝居の切り替えがあるからだ。伊皿子坂(千葉雄大)との最終対決で、珍しく正面から思いをぶつける場面も印象的だった。普段がどうしようもない人物だからこそ、まっすぐな言葉を口にした瞬間に、その本気が際立つ。ただ、ここで急に立派な人物へ変化させてしまうと、おそ松らしさは薄れてしまう。末澤はだらしなさや情けなさを残したまま、大事な場面になると逃げずに言葉を届ける。そのおそ松らしさと真剣さを同時に見せるさじ加減がうまい。
末澤のおそ松で印象的なのは、かっこよく見せることにとらわれていないところだ。だらしない顔も、情けない姿も、くだらないリアクションも、必要な場面では思いきり出す。でも、決してやりすぎには見えない。笑いとして成立するラインを見極めたうえで振り切っているからこそ、末澤のおそ松は“クズ”なのにちゃんと愛される要素がある。きっと映画を見終える頃には、そのだらしなさも情けなさも含めて、末澤のおそ松を放っておけなくなっているはずだ。ぜひ劇場で、末澤が作り上げた“愛されるおそ松像”を堪能してほしい。

また、10月16日に公開を控える『mentor』では過去の罪に囚われ続ける青年・拓海役を演じる。磯村勇斗、綾野剛という実力派俳優との共演の中でどのような存在感を放つのか。『おそ松さん』で見せたコメディセンスとは異なる表現が求められる作品だけに、2026年は“俳優・末澤誠也”の新たな可能性を示す一年となりそうだ。
■公開情報
映画『おそ松さん 人類クズ化計画!!!!!?』
全国公開中
出演:Aぇ! group(末澤誠也、正門良規、佐野晶哉、小島健、草間リチャード敬太、西村拓哉、渡邉美穂、大貫勇輔、なえなの、野口衣織(=LOVE)、三宅弘城、木村多江、宮内ひとみ、千葉雄大、船越英一郎
原作:赤塚不二夫『おそ松くん』
監督:川村泰祐
脚本:宅間孝行
音楽:橋本由香利
主題歌:Aぇ! group「でこぼこライフ」(UNIVERSAL MUSIC)
制作:はちのじ、パイプライン
配給:東宝
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