推し活と信者ビジネスは紙一重? 『銀河の一票』『るなしい』などから紐解く

推し活と信者ビジネスは紙一重?

 テレビドラマで「宗教」や「信仰」を扱うことは、一時期までどこかタブー視されていたように思う。だが、コロナ禍という未曾有の事態を経て、ますます不安定な時代となったいま、それらはドラマのなかでも身近なテーマになりつつある。現在も“信者ビジネス”をテーマにした『るなしい』(テレ東系)がつつましやかに放送中だ。

『るなしい』©意志強ナツ子/講談社 ©「るなしい」製作委員会©「るなしい」製作委員会

 「火神の子」として育てられ、家業の鍼灸院を手伝うるな(原菜乃華)は、恋愛を禁じられた身でありながら、同級生の健章(窪塚愛流)に恋をする。だが、その想いはあっけなく玉砕。失恋したるなは、信者ビジネスで培ったノウハウを駆使し、健章を自らの世界へ引き込もうと画策する。その思惑に気づいた健章とのスリリングな駆け引きが本作の見どころだ。

 るなとの出会いをきっかけに、“自己実現”への欲望に火がついた健章は、自らもビジネスを立ち上げる。卒業後の彼が目をつけたのは、独居老人向けの見守りサービスだった。設定料金以上の対価を支払う老人たちの好意に目をつけた健章は、やがて高額な投資話を持ちかけるようになる。

『るなしい』©意志強ナツ子/講談社 ©「るなしい」製作委員会©「るなしい」製作委員会

 健章は出資者である老人たちを、自らの夢をともに叶える“戦友”と呼ぶ。健章の夢を応援することを、あたかも老人たち自身の「自己実現」であるかのように感じさせるのだ。人生の終盤を迎え、新たな目標や夢を見出しにくくなった老人たちの承認欲求や自己実現欲求を巧みにくすぐり、それを金に変えてゆく。

 健章が出資者たちを集めてライブで歌う第8話は、まさに“推し”と“ファン”のようだった。その光景は、神の子ではない健章が、“神の子”として崇められてきたるなに近づいた瞬間でもある。人は主体性を失い、自らの夢や願いを他者に仮託するようになったとき、「信仰」へと一歩足を踏み入れてしまうのかもしれない。

「政治の話じゃないです。私たちの話です。私と、あなたの」

 では、『銀河の一票』の話に戻ろう。本作が画面越しの視聴者に繰り返し訴えかけてきたのは、これはあくまでも“私たちの話”だということだ。

『銀河の一票』©︎カンテレ

 物語の中心にいるのは、元幹事長秘書の茉莉と都知事候補のあかりだが、本作は国の舵取りを担う特別な人々や、その周囲で繰り広げられるパワーゲームだけを描いたドラマではない。「国のことはさ、任せるしかないでしょ。偉い人に」とぼやいていたスナックとし子の常連客たちやガラさん(岩谷健司)の相談所に駆け込まざるを得なかった人、雲井蛍(シシド・カフカ)のパン屋で働く人、車椅子ユーザーである茉莉の義母・桃花(小雪)や視覚障害を持つ明(望月歩)。ひいては、行き場を失って通り魔事件を起こした“無敵の人”の物語でもある。

 私たちは政治家のように国会で答弁することも、政策を立てることもできない。自分の考えに近い人、あるいは「まあ、この人なら大丈夫そうかな」と思える人に票を投じ、想いを託すことしかできないのが現状だ。

『銀河の一票』©︎カンテレ

 だが、私たちには国の代表者を選ぶ権利がある。私たち有権者一人ひとりの手に、世界を変えられる“一票”があることを忘れてはならないのだ。

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