“朝ドラのクズキャラ”は憎めない? 『風、薫る』藤原季節、『ばけばけ』岡部たかしなど

“朝ドラのクズキャラ”は憎めない?

 NHK連続テレビ小説『風、薫る』第8週「夕映え」では、患者の心に寄り添う“看護”とは何かと思い悩むりん(見上愛)と直美(上坂樹里)の葛藤が映し出され、徐々に2人の間に確固たる絆が芽生えていることを実感する。

 帝都医科大学附属病院に入院した和泉侯爵の夫人・千佳子(仲間由紀恵)を看護するりんが彼女と心を通わせるために奮闘する一方で、直美は思わぬ場所で因縁の相手と再会する。自身を「夕凪」という名の女郎と見間違えた初老の男性の後をつけていくと、彼がお金を渡していた人物はなんと詐欺師の寛太(藤原季節)。かつて直美が鹿鳴館で結婚相手を探していたとき、寛太はアメリカ帰りの海軍中尉・小日向栄介と素性を偽り、彼女にお付き合いを申し出た過去があった。ほかの人とは異なる寛太の誠実さを信じていた分、裏切られた怒りと失望は大きかったのだろう。直美は彼が嘘をついていたことに激昂して詰め寄るものの、寛太は飄々とした態度で開き直って意に介さない。

 直美を騙して泣かせて、清々しいほどの詐欺師ぶりを見せつけた寛太だが、どこか憎めないところがあるのも確かだ。財布を盗んで追われている少年を逃がすために、追っ手には逆の方向を指し示す優しさも見せていた。初めて世界地図を見たときに興奮して、外の世界を見たいと思ったことに嘘はないと言い切り、親がいない境遇が似ている直美にはわざわざ本名を名乗った寛太。いつかまた直美と再会するとは思っていたが、想像よりも早めの再登場となったため、以前のように直美の心をかき乱すのは間違いないだろう。

『ばけばけ』司之介

 これまでの朝ドラでも、やっていること自体は許せないはずなのに、なぜか憎めない寛太のようなキャラクターが多く存在する。特に前クールに放送された『ばけばけ』は思い当たる人物が多いが、やはり主人公・松野トキ(髙石あかり)の父親である司之介(岡部たかし)が真っ先に思い浮かんだ。西洋化が急速に進む明治に入り、時代の変化に取り残された松野家を象徴していたのが、家を飛び出して橋の上で立ち尽くす司之介の姿。トキの幼少期、士族の商法に手を出した司之介は、うさぎ事業の大失敗によって多額の借金を背負うことになる。しかし、いつまで続くかもわからない貧乏長屋での暮らしを強いられる原因を作ったにもかかわらず、牛乳配達の仕事は真面目に取り組まずに、借金の返済は娘の稼ぎを当てにしていた。さらには、トキがヘブン(トミー・バストウ)の女中として多額の給金をもらっていることを知ったときは、家族からどさくさに紛れて仕事を辞めようとしていたと疑われる始末。

 そして、彼のダメ親父ぶりが顕著に現れたのが、熊本に移住してからのこと。仕事を辞めて暇を持て余していた司之介は、見るからに怪しい荒金(夙川アトム)の儲け話に乗り、ヘブンが稼いだお金を投資事業に費やす。結局、増やした分を減らしただけでことなきを得たが、司之介の暴走が視聴者をざわつかせたのはいうまでもない。それでも、東京で作家としての自信を無くしていたヘブンに対して、司之介は「おぬしは昔のわしじゃ」と彼にしか口にできないだろうエールでヘブンを元気づける。どれだけ貧乏で生活が苦しくても、他愛のない会話で笑い合う松野家の温かい空気を生み出していたのは、間違いなく司之介だった。

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