若林時英が視聴者の心を掴む理由 『豊臣兄弟!』『風、薫る』で発揮する“誠実さ”

NHK連続テレビ小説『風、薫る』第7週より、帝都医科附属病院で看護婦見習いとして、りん(見上愛)や直美(上坂樹里)たちの実習が始まった。
看護とは何かを模索する日々の中で出会う、さまざまな事情を抱えた患者たち。外科の患者で、背中の苔癬(たいせん)の治療のために入院している丸山忠蔵を演じるのが、注目の俳優・若林時英だ。看護を担当する直美のおかげで体調が上向くだけでなく、少しずつ心を開いていく様子があまりにも自然で、その演技が称賛を集めている。
初登場の第31話では、不自然な体勢で背中をモゾモゾと痒そうにしており、見るからにつらそうだった。直美が担当する前は、看病婦から「痒がったり、痛がったりしてるけど、適当にあしらっておけばいいから」と放置され、患部も悪化していたようだ。
丸山自身、医学の研究や医学生の教育に協力する代わりに無料で治療を受ける「学用患者」であることから、「自分は医師や看病婦から見下されている」と自暴自棄になっていた。
しかし、直美が薬を塗る前に丁寧に背中を拭き、清潔な状態にしてから薬を塗るだけでなく、薬の回数も1日1回から3回に増やすようかけ合ったところ、効果はてきめん。不潔な状態で痒みや痛みを無視し、適当に薬を塗っても効くはずがない。医療に関する知識や薬の効能を学んだ上で、真摯に患者と向き合おうとする直美の奮闘が間違っていなかったことの証明になった。
ベッドの中で背中の痒みと格闘するだけの毎日だった丸山だが、直美の看護の甲斐あって、次第に穏やかな表情で本を読むように。直美が休みの日にはりんとの会話も弾み、「退院後には何をしたいか」という少し先の未来にまで思いを馳せるなど、確かな心の変化を見せるようになっていた。

入院や手術というのは、体だけでなく心にも大きなダメージを与えることがある。治療や手術をしてくれる医師との信頼関係やコミュニケーションももちろん大事だが、体温や血圧を測ったり点滴をしたりといった、日常的な看護婦とのやりとりによって救われる患者はとても多い。
直美とはまた違う方向から患者の心を癒やすりんとのやりとりで、本来自分がやりたいことを考えるまでに心の回復を見せた丸山は、まさにその体現者だろう。
本作の主人公は実在の人物である大関和と鈴木雅がモチーフになっているが、若林時英が演じる丸山忠蔵にもモチーフにしていると思われる人物がいる。それは「新宿中村屋」の創業者である相馬愛蔵だ。
史実でも、相馬愛蔵は長野から上京し、東京専門学校(現在の早稲田大学)に入学するタイミングで、帝国大学医科大学附属第一病院(現在の東京大学医学部附属病院)に入院。そこで大関和に、硫黄の匂いが強い軟膏を1日1回ではなく3回塗ってもらったという。

その時の献身的な看護に心から感謝し、その後も大関和と相馬愛蔵の交流は続いたそうだ。日本で初めてクリームパンを売り出し、本格的なカレーの店を手掛けた実業家は、義理堅く恩義に厚い誠実な人だったからこそ成功したのだろう。






















