宮沢賢治の言葉とリンクする『銀河の一票』 誠実なドラマだからこそ抱えるジレンマ

宮沢賢治の言葉とリンクする『銀河の一票』

社会派ドラマが抱えるジレンマと果てしない道

 選挙の裏側が描かれていて興味深く見られる。茉莉の思いもあかりの思いもわかりみが深い。あかりがみるみる自分の言葉をもつようになっていくのもたのもしい。社会が明るいほうへ少しでもいってほしいという願いのこもった誠実なドラマである。脚本はNHKドラマ『舟を編む~私、辞書つくります~』の蛭田直美で、企画・取材協力に劇団「贅沢貧乏」の山田由梨が入っている。

 ただし、これ、かの社会派ケン・ローチ(現在『オールド・オーク』公開中)の映画にもあるあるで、描かれている生活者たちの娯楽にはならない。知的好奇心が旺盛な人たちだけが、ノブレス・オブリージュな気持ちを再確認する娯楽になってしまうという、どうしても突破できない壁がある。あえてそこに的を絞って作っているともいえるだろう。そういう意味では極めてトンマナをわかった優秀作だ。

 OPでメインの3人のまわりで踊っているような人たちは、たぶんこのドラマを観ていない(認識不足だったらすみません)。そこを対象にすることに挑んでいるのは『ミッドナイトスワン』や『ナイトフラワー』の内田英治監督がいる。『逆火』は社会派作の状況、あるいは限界を自虐している作品だった。ほかに助監督・稲留武が長年助監督として支えてきた堤幸彦監督作も大衆と社会派がうまく混ざっている。

 わかっている人たちの結束を強くして大きな岩を動かす力になるといいなと思いつつ、どうしたら、そこには入ってない人たちが楽しめたうえで、ちょっとだけ社会にコミットしようと思うようになる作品ができるのだろう。農民(市民)芸術、農民(市民)ドラマへの道は果てしなく遠い。

 余談だが、中道改革連合の小川淳也氏を演じるなら松下洸平が似合っている(声や発声がちょっと似てる)と思っていたら、今回、政治家役だけど全く違うタイプの政治家役だった。でも松下洸平の政治家、観てみたかったので楽しみにしている。OPの無表情が絶妙だ。

■放送情報
『銀河の一票』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00~放送
出演:黒木華、野呂佳代、三浦透子、渡邊圭祐、倉悠貴、小雪、本上まなみ、シシド・カフカ、岩谷健司、山口馬木也、木野花、岩松了、坂東彌十郎、松下洸平ほか
脚本:蛭田直美
演出:松本佳奈、藤澤浩和、瀧悠輔、稲留武
プロデュース:佐野亜裕美(カンテレ)
制作プロデュース:植木さくら、森田美桜
音楽:坂東祐大
主題歌:浜野謙太(在日ファンク)&後藤真希 feat. 黒木華&野呂佳代「おーへい」(日本コロムビア)
制作協力:AOI Pro.
制作著作:カンテレ、MYRIAGON STUDIO
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/ginganoippyou/
公式X(旧Twitter):https://x.com/gingaippyou
公式Instagram:https://www.instagram.com/gingaippyou/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@gingaippyou

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