劇場版『名探偵コナン』は作り手によって作風が違う? “2本柱”の脚本家と歴代監督たち

劇場版『名探偵コナン』歴代脚本家と監督たち

 それでは監督の作風についてはどうだろうか。近年の劇場版シリーズでいえば、まずは静野孔文が監督を務めていた時期があり、その後永岡智佳へとバトンが受け継がれつつも、さまざまな監督の手が入っている。

 静野監督の作風として印象的なのは、ド派手なアクションを盛り込んだ大作志向だ。たとえば『異次元の狙撃手』では、激しい銃撃戦やカーチェイスが繰り広げられるほか、高さ635メートルの巨大建造物が舞台装置として登場。また『純黒の悪夢』では、支柱が外れて転がり出した観覧車をコナンがサッカーボールで止めるという衝撃のクライマックスが用意されていた。静野監督の作品には、「ここまでやるのか」と思わせるスケール感がある。

 続く永岡は、劇場版『名探偵コナン』シリーズで初となる女性監督。2026年1月期に大ヒットしたTVアニメ『多聞くん今どっち!?』の監督でもある。

『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』©2024 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

 作風としては、静野監督からアクション大作という方向性を受け継ぎつつも、むしろキャラクターの魅力を引き出す手腕においてその本領を見せつけた。とくにラブコメ描写に定評があり、『紺青の拳』では園子と京極、『100万ドルの五稜星』では平次と和葉の関係を描いたことで話題を呼んだ。さらにラブコメ路線の名作と名高い『から紅の恋歌』でも助監督を務めている。

 その一方、シリーズ屈指の完成度と言われる『黒鉄の魚影』を手掛けたのが立川譲監督。『モブサイコ100』や『BLUE GIANT』の監督も務めた実力者なのだが、劇場版『名探偵コナン』でもその手腕を見事に発揮していた。

 『黒鉄の魚影』はアクションに人間ドラマ、繊細な心理描写、そして人気キャラクターの活躍まで、あらゆる要素を過不足なく押さえているのが見事な一作。今後立川監督がカムバックすることを期待するファンも多いようだ。

『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』©2026 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

 そして最後に触れておきたいのが、『ハイウェイの堕天使』を手がけた蓮井隆弘だ。蓮井は『モブサイコ100』の第3期や青山剛昌原作の『真・侍伝 YAIBA』でも監督を務めている若手監督で、アクションシーンの見せ方に定評がある。

 とはいえ『ハイウェイの堕天使』ではたんなるバトルや爆発シーンのアクションではなく、スピード感あふれるカーチェイスにこだわりを見せていた。これまでの劇場版とは一味違う、独自路線のアクション描写を開拓しているように見えるので、今後の活躍に期待が高まる。

 いまや“毎年大ヒットを約束された劇場アニメ”という規格外の位置を占めている劇場版『名探偵コナン』。制作陣には多大なプレッシャーがかかっているものと思われるが、その重圧に負けず、今後も自分たちの色を活かすような作品を作ってほしい。

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