劇場版『名探偵コナン』新作も興収100億円超えか ファンを飽きさせない“伝統”と“更新”

劇場版『コナン』新作も興収100億円超えか

モチーフを更新しつづける劇場版シリーズの挑戦

 悲願ともいえる100億円を超えて138億円の興行収入を稼ぎ出した2023年の『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』は、人気の黒ずくめの組織が登場して、コナン同様に追われている灰原に危機が迫るというシリーズでも関心の高いテーマをぶち込み、カーチェイスや格闘といったアクションも見せて観客の満足感を最大級に引き上げた。コナンといえばやはり黒ずくめの組織との戦いという“原点”を思い出させ、その決着を観るまでは離れられないという意識を改めて喚起させた。

 100億円の大台を初めて達成した実績を鑑みて、次もその次も黒ずくめの組織でいけばいいのにといったことにはならない点も、劇場版『コナン』の巧妙さであり長く愛され続けている理由だ。立て続けに同じテーマをぶつければ、観客の間に「またか」という気分が起こってしまう。過去の蓄積の中で散りばめたフックを都度に引っ張り出して、今回はいったいどのようなテーマでどのキャラがどう活躍するのかといったワクワク感を抱かせ続けることで、次もまた次も観たいという気にさせられる。

 それが、劇場版コナンの衰えない人気の理由の一端だろう。

 加えて、毎回毎回、しっかりとした宣伝戦略を立てて観客の中にある劇場版コナンへの意識を途切れさせないところがある。2018年に開催された「AnimeJapan2018」では、その年公開の『名探偵コナン ゼロの執行人』でどのような宣伝活動が行われたかを紹介する展示が行われた。この『ゼロの執行人』では、前年の『名探偵コナン から紅の恋歌(ラブレター)』上映時に、安室透を演じる古谷徹の声で「ゼロ」という声だけで次回作を予告。安室の話になると期待させた。

 11月に安室も登場するキービジュアルと『名探偵コナン ゼロの執行人』というタイトルを発表して気分を一気に盛り上げた。そのあたりから、「AnimeJapan2018」の会場で紹介されていた「ロゴも宣伝だと思っています」という宣伝プロデューサーのコメントどおりに、安室をイメージできるデザインのロゴを作り、キャッチコピーでも安室とコナンの対峙を想像させるものを採用して、何が描かれる映画かをジワジワと浸透させた。これによって、ファンが作品にのめりこめるような雰囲気が生まれていった。

 最新作の『ハイウェイの堕天使』でもそうした戦略が続けられている。『100万ドルの五稜星』公開時にオートバイの音や横溝重悟の声で神奈川県警ものだと想起させ、程なく白バイ隊員の萩原千速を予告映像に登場させていった。千速は安室や黒ずくめの組織ほどシリーズでは目立った存在ではなかったが、バイクで疾走するシーンも登場する予告映像が流れ、公開間際に過去のTVシリーズへの登場エピソードが配信サイトでピックアップされたことで、一気にヒロイン感を高めた。

 結果、活躍する萩原千速に憧れる女性の観客を大勢劇場に引き寄せた印象だ。元より女性ファンの多いシリーズだが、自分たちが気持ちを添えられるキャラの存在に惹かれた観客でどの劇場も例年どおりかそれ以上の賑わいを見せている。

 長い歴史の中で蒔かれた様々な種を埋もれさせることなくしっかりと育て続け、ここぞという時に大輪の花として咲かせた上に、宣伝によって多方面に知らしめる繰り返しが、劇場版コナンを毎年のルーティン以上の存在にして、興行収入や観客動員の記録を伸ばし続けている。

■公開情報
『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』
全国公開中
キャスト:高山みなみ(江戸川コナン役)、山崎和佳奈(毛利蘭役)、小山力也(毛利小五郎役)、沢城みゆき(萩原千速役)、三木眞一郎(萩原研二役)、神奈延年(松田陣平役)
スペシャルゲスト:横浜流星、畑芽育
原作:青山剛昌
監督:蓮井隆弘
脚本:大倉崇裕
音楽:菅野祐悟
主題歌:MISIA「ラストダンスあなたと」(Sony Music Labels Inc.)
アニメーション制作:トムス・エンタテインメント
製作:小学館/読売テレビ/日本テレビ/ShoPro/東宝/トムス・エンタテインメント
配給:東宝
©2026 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

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