『お別れホスピタル2』が描いた“対話”の意義 誰もが最後は一人だからこそ大切なこと

『お別れホスピタル2』が描いた“対話”

 愛する人に生きてほしい、でも苦しんでほしくない。愛する人を悲しませたくない、でも生きているのは苦しい。愛する人を生かしてあげたい、でも、でも。矛盾する2つの気持ちは両立し得る。辺見が角川家の選択を尊重する一方で、本庄に怒り、植物状態で寝たきりの娘と心中を図ろうとした母親を止め、「私は最後まで生きることを肯定したい」と思うのだって何ら不自然ではない。

 安易に答えを出そうとすると歪みが生まれるのは、映画『ロストケア』を観るとよく分かる。本作で広野役を務める松山ケンイチは、同作において、介護に疲弊する家族と苦しむ本人のため、“救済”と称して42人を手にかけた介護士を演じている。そんな彼に対し、主人公の検事は「あなたが殺した方たちの、一人ひとりの人生の何があなたにわかるって言うんです?」と問うのだ。

 終末期の患者と一口に言っても、人生はそれぞれだ。置かれている状況も、心にある思いも、みんな違う。だから、辺見は対話をやめない。「あなたは、本当は何を思ってるの? どうしてほしい」と問いかけ、返ってきた言葉が「死にたい」だったとしても。

 末期のすい臓がんで入院している桜田(YOU)も、身体は健康だけど心に深い傷を負っている辺見の妹・佐都子(小野花梨)も「死にたい」と言う。人が「死にたい」と思う理由はいろいろあるけれど、大きくまとめるとするならば、自分の“無価値さ”に耐えられないからではないか。

 ベストセラー作家として一世を風靡しながらも、今は見舞う人もおらず、ひとりぼっちの桜田。人生で唯一深く心を通わせた人も自分から傷つけて失ってしまった。「私は無価値で、生きる意味がない人間だ」というレッテルを誰かに、あるいは自分に貼られたままで生きていくのは、耐え難い苦しみだろう。その苦しみはきっと簡単には消えない。だけど、誰かに話すことで少しでも和らぐ部分はあるのではないか。

 自分が抱える孤独を言葉ではなく行動で表して、赤根(内田慈)に気づいてもらった大戸屋(きたろう)。その大戸屋に、生き甲斐だった看護師の仕事を諦める決断を受け止めてもらった赤根。死にたいと思いながら生きることを、母・加那子(麻生祐未)に認めてもらった佐都子。自分のファンだった医師の谷山(国広富之)に、子どもの頃の夢を打ち明けた桜田。

 思うような人生ではなかったかもしれない。最後に「ひどい人生だった」と振り返る道のりだったかもしれないけれど、懸命に生き抜いたこと。それを知ってくれている誰かがいるというだけで、安心して旅立てるような気がするのだ。

 だから、話したい。自分が何を思い、何を望むのか。最後は一人だからこそ。

■配信情報
土曜ドラマ『お別れホスピタル2』
NHK ONE(新NHKプラス)にて見逃し配信中
出演:岸井ゆきの、松山ケンイチ、内田慈、仙道敦子、国広富之、円井わん、長村航希、山本裕子、きたろう、根岸季衣、田村泰二郎、麻生祐未、小野花梨、丈太郎、伊東四朗、渡辺えり、YOU、広岡由里子、阿川佐和子、柄本明
原作:沖田×華
脚本:安達奈緒子
音楽:清水靖晃
演出:柴田岳志
制作統括:小松昌代(NHKエンタープライズ)、谷口卓敬(NHK)
写真提供=NHK

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