坂東彌十郎が『風、薫る』に吹き込む新しい風 熟練の“愛されキャラ”が放つ存在感

『風、薫る』坂東彌十郎が吹き込む新しい風

 演じた北条時政が大きな話題になったのは、周知のことだろう。「三谷さんからは『江戸の長屋のおやじのように』と言われただけ」(※2)だったというが、そのキャラクター造形は秀逸だった。元々は地方の平凡な豪族で、 豪快で憎めないダメおやじだった時政が、幕府を牛耳る権力者へと変貌していく。その様を、彌十郎は魅力的かつ自然体で演じてみせた。歌舞伎では「悪」のイメージが強い時政役だが、「演じてみて、僕は人間味豊かな時政が大好きになりました。ドジなところも僕に似ていて。普段の僕を知っている人からは『素顔の彌十郎そのままだ』と言われます(笑)」(※3)と語るように、そのユーモラスな演技で“愛されキャラ”へと昇華させた。

『鎌倉殿の13人』坂東彌十郎、北条時政のラストシーンは「三谷幸喜さんに感謝」

毎週日曜日に放送されているNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』北条時政役の坂東彌十郎よりコメントが寄せられた。  NHK大河ドラ…

 また、初回で「最後は、首ちょんぱじゃねーか」というセリフが飛び出し、SNSでは議論を呼んでいた。時代劇としては斬新なこのセリフも、彌十郎にかかれば、なぜかはまってしまうから不思議だ。それはやはり、歌舞伎の基礎の上に“ふざけた”セリフをのせることができる、役者としての経験と技量があるからなのだろう。

 これ以降、映像の世界での活躍も目覚ましく、TBS日曜劇場『VIVANT』(2023年)、『グレイトギフト』(2024年/テレビ朝日系)、NHK夜ドラ『VRおじさんの初恋』(2024年)、『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(2025年/フジテレビ系) など、多彩な作品に次々と出演する。年齢的にも、いわゆる「おじさん」の役なのだが、威厳を感じさせつつも茶目っ気があり、すっとぼけた人物はお手のもの、そしてその中に一抹の哀愁を感じさせるところが憎めない。

 歌舞伎の世界で半世紀をかけて磨き続けてきた芸と存在感は、今やテレビドラマや映画でも欠かせない存在となった。こんな第2のステージがあるのなら、歳をとるのも悪くはないとすら思わされる。70歳近くになってなお新しい経験に飛び込み続けるその姿勢こそ、坂東彌十郎という役者の最大の魅力なのかもしれない。

 連続テレビ小説『風、薫る』では、日本橋で舶来品などを手広く扱う「瑞穂屋」を営む実業家を演じるという彌十郎。文明開化の先駆者的な人物を、どんなふうに味付けしてくれるのか。

参照
※1. https://futabasha-change.com/articles/-/1143
※2. https://gendai.media/articles/-/101516?page=5
※3. https://tsubasa.ana.co.jp/travel/dom/izu/izu_202211-03/

■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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