『ばけばけ』北川景子&板垣李光人が体現した“葛藤” 雨清水家がトキに与えた影響とは?

放送がはじまったばかりの頃は、いずれのキャラクターも一面的だった。タエは絵に描いたようなお姫様であり、三之丞は恵まれた環境で育ったおぼっちゃま。多くの視聴者がこんな印象を抱いたことだろう。けれどもほどなくして、まずは三之丞の抱える葛藤が明らかになった。

家督を継ぐのは彼の兄であるため、本当の意味での三之丞の居場所は雨清水家にはない。いつも朗らかな笑顔を浮かべていたが、その胸中は複雑なものだったはず。演じる板垣の声と表情は、その明度が変わる。三之丞の内なる葛藤を示唆するような、そんな表現の繊細さが光っていた。やがて彼こそが雨清水家を背負うことになったわけだが、板垣の表情からは重圧の大きさが伝わってきたものだ。
境遇の変化に合わせて演技の質感が変わっていったのは北川も同じ。先述しているようにタエは高潔な人物だ。たとえ転落しようとも、生活が困窮しようとも、染みついた品性が彼女の言動から消えることはない。でも、それでも、生きていかなくてはならない。愛する三之丞とともに。ここに、タエの葛藤が生まれた。

それまで見せることのなかった彼女の狼狽ぶりは、北川の演技に“揺れ”としてあらわれた。声も表情も揺れている。品の高さを保とうとしているが、それはいつ崩れてもおかしくない。そんなタエの不安定さを、北川は安定したパフォーマンスで私たちの前に差し出したのだ。見た目の変化はメイクなどでどうにでもなるが、人間としての変化は俳優の力によってこそ立ち上がるもの。改めてそう感じた。
タエと三之丞の葛藤は、やがてトキの葛藤を生むことになった。そしてこれがドラマとして発展し、現在に続いている。
本作の『ばけばけ』というタイトルは、変わりゆく世界に対する“うらめしさ”と、それがいつしかかけがえのないものになるように、というある種の願いが込められている。トキを演じる髙石だけでなく、北川も板垣もまた、このタイトルを体現してきたといえるだろう。“この世はうらめしい。けど、すばらしい。”という本作のキャッチコピーが、雨清水家のふたりの存在によって響いてくることになるのではないか。
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK






















