人気俳優にオファーが集中? 『国宝』、大河ドラマ、朝ドラにみる芸能界のいま

人気俳優にオファーが集中?

 2025年大ヒットした映画『国宝』も、俳優同士の関係と役柄の関係が重なるところがあった。

『国宝』©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会

 本作は任侠の一門に生まれながら歌舞伎の家に引き取られた喜久雄(吉沢亮)と歌舞伎の名門の家に生まれた俊介(横浜流星)が親友として、ライバルとしてお互いの芸を高め合う姿を描いた物語だが、若い頃に吉沢亮と横浜流星は、2011年の特撮ドラマ『仮面ライダーフォーゼ』(テレビ朝日系)で親友同士の役で共演している。

 『国宝』での2人の演技は絶賛されたが、それは本作の「演じる」というテーマに若手俳優の2人が没入できたことが大きかったことに加え、2人の関係性が役とシンクロしていたことも大きかったのではないかと思う。役者同士の関係性と役柄がシンクロすることで演技のポテンシャルを高まるというのは、観客の側が過度な深読みをしている側面もあるため、余計なことは考えず演技だけを観てほしいという俳優も多いかもしれない。

 ただ、よくも悪くも日本の映画やテレビドラマは、俳優の経歴や過去の出演作が生み出す文脈を大切にしており、過去作で確立された俳優のイメージを活かした上で、その俳優の魅力をどう活かすのかという視点で作られるものが多い。

 その観点で見たときに面白いのが、近年の松村北斗の活躍だ。

『秒速5センチメートル』©2025「秒速5センチメートル」製作委員会

 声優として出演した新海誠監督のアニメ映画『すずめの戸締まり』、岩井俊二監督の『キリエのうた』、三宅唱監督の『夜明けのすべて』、坂元裕二脚本の『ファーストキス 1ST KISS』、そして新海誠監督のアニメ映画をリメイクした奥山由之監督の『秒速5センチメートル』といった映画に出演し、繊細な内面を抱えた青年といえば松村北斗というイメージが完全に定着している。

 人気俳優は多くの作り手からオファーされるため、様々な作品に出演する。そのため共演者が重なる作品も多いのだが、2024年度前期のNHK連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『虎に翼』と同時期に放送された連続ドラマ『新宿野戦病院』(フジテレビ系)では、仲野太賀、岡部たかし、平岩紙といった複数の出演者が重なっていた。

 そのため視聴者は「転生」と言って楽しんでいたが、筆者は“劇団『虎の翼』”の俳優が、別の作品に出演しているように感じた。

 2017年度前期の朝ドラ『ひよっこ』(NHK総合)のときも、脚本を担当した岡田惠和が次回作で有村架純、岡山天音、和久井映見といった出演俳優を起用し、共演することも多かったため、“劇団『ひよっこ』”の次の公演を観ているように感じた。

 おそらく朝ドラと大河ドラマは、長期にわたる撮影となるため出演者の結束が固まり、劇団のようになりやすいのだろうが、そもそも日本のテレビドラマは、1人の俳優にオファーが集中しやすい傾向が強いため、複数の人気俳優をみんなで共有している巨大な劇団のようなものなのかもしれない。
 
 この劇団化は、特定の人気俳優にオファーが集中し、新人や無名の俳優が頭角を現しにくくなるという意味では功罪ある。俳優の人間関係や過去の経歴などはノイズで、純粋な演技力だけで俳優を観たいという人も少なくないだろう。だが、今のネット社会において、俳優をこれまでの経歴なしで評価することは可能なのだろうか? 特にテレビドラマの場合、SNSの反応などで出演者の情報を調べながら観ることは当たり前のものとなっており、そういった情報環境を前提にして今のテレビドラマは回っているので、劇団化に関してはクオリティや商業性を求める以上は仕方がないことだと思っている。

 ただ、個人的には下手でも未熟でも構わないので新しい才能が観たいという気持ちはある。

 人気アイドルグループだけで出演者を固めた深夜ドラマが面白いのは、演技の質が玉石混交なところで、そういう場所から予想外の才能が飛び出すことは多い。

 もちろんあれも別の意味で劇団で、学芸会と揶揄されることも多いのだが、そういう場所を常に用意し、新人が現れやすい環境さえ用意できていれば、芸能界の劇団化は大歓迎である。

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