『ばけばけ』吉沢亮の喜びを噛み締める姿が逆に切ない トキを思うがゆえのヘブンの嘘

『ばけばけ』トキ×ヘブン、2度目の夫婦喧嘩

 トキ(髙石あかり)とヘブン(トミー・バストウ)が2度目の夫婦喧嘩をした『ばけばけ』(NHK総合)第91話。1度目の喧嘩は、ヘブンの嘘が判明したことが発端だった。今度は、ヘブンがついた嘘にトキが気づかないことで喧嘩が起きる。

 ヘブンから松江を離れようと言われたトキは、突然のことで理解が追いつかない。無理もない。だって、ほんの少し前にヘブンは“ラシャメン”呼ばわりされるようになったトキを友人たちが気遣う光景に感動し、松江は素晴らしい街だと絶賛していたのだから。トキが理由を問うと、ヘブンは熊本の高等中学校から引き抜きの誘いがあり、これを機に冬になると地獄の寒さになる松江を離れたいと話す。

 これまでは自分の気持ちよりも他者の気持ちを優先してきたトキだが、今回ばかりは断固として拒否。ヘブンはトキが家族と離れたくないならば、松野家と雨清水家、勘右衛門(小日向文世)夫婦も連れていくと提案する。しかし、トキは納得がいかなかった。むしろ、「寒いのが嫌だから」という身勝手な理由で家族全員を巻き込もうとするヘブンへの怒りは増していく一方だ。

 翌朝も気まずい空気のままの2人を見て、何も事情を知らない司之介(岡部たかし)とフミ(池脇千鶴)は「思ったことを言い合える仲になったってことだが」と呑気にニヤニヤ。だが、ヘブンに熊本行きを打診されるや否や、慌てふためく。もともと松野家、特に司之介は環境の変化に弱い。武士の時代が終わっても、しばらくは髷を落とせなかったほどだ。当然のことながら、生まれてから一度も離れたことのない松江を出て、新しい土地で生活することには抵抗がある。でも、ヘブンのおかげで仕事もせずに広い屋敷で悠々自適な生活を送れているのは事実。もし熊本行きを断り、ヘブンがトキと別れて家を出ていきでもしたら、また貧乏長屋生活&牛乳配達の日々に逆戻りするかもしれない。こういうことに関しては頭の回転が早い司之介は保身のためにも一旦、答えを保留にする。

 あまりにも急すぎる話に困惑しっぱなしのトキたち。ただ、フミだけはヘブンが松江を離れようとする本当の理由に気づいたのではないだろうか。先週の放送で描かれたラシャメン騒動は、江藤知事(佐野史郎)のスキャンダルによって一旦は落ち着いた。サワ(円井わん)やなみ(さとうほなみ)をはじめ、何があってもトキの味方でいてくれる人も大勢いる。だが、昨日まで自分を手放しに褒めそやしてくれていた人たちが、次の日には軽蔑の眼差しとともに石を投げつけてくる恐怖はトキの心に植えつけらえたようだ。

 その証拠にトキは久しぶりの、しかも不快な金縛りに遭い、今でも外出時には顔を隠すためのショールが手放せない。最初の妻マーサ(ミーシャ・ブルックス)との過去から他者の心の傷に人一倍敏感になっているヘブンはそのことに気づき、誰も自分たちを知らない土地に移住しようと考えたのだろう。以前は日本食ばかりの生活に疲れ、トキを傷つけたくない一心で嘘をついてこっそりと洋食屋に通っていたヘブン。今度の嘘もトキのためだ。どんな理由であれ、嘘が嫌いだったはずが、すっかり本音と建前を使い分ける日本の文化に馴染んでいる。それが良いことなのか分からないが、本当のことを伝えたところでトキのことだから「私は大丈夫」と言うのは目に見えている。

 いずれにしても、次週・第20週から舞台が熊本に移ることは公式に発表されており、トキとヘブンが松江を離れるのは間違いない。そうなると心配なのは錦織(吉沢亮)だ。錦織は「ヘブンがいる松江中学校の校長」という看板を盾に、弟の丈(杉田雷麟)をはじめとする生徒たちを帝大に送り出すと息巻いている。また、錦織にとってヘブンはただの仕事上のパートナーではなく、何にも変え難い友人である。ヘブンが『日本滞在記』に書いた「(錦織友一は)文学的にも気が合う、唯一の親友」という記述を何度も嬉しそうに読み返す様は、まるで恋する乙女のよう。無論、恋愛感情ではないが、錦織はヘブンの才能や人柄に惚れ込んでいるのだろう。そんな錦織がヘブンという存在を失ったらどうなるのか。そもそも、ヘブンを松江に引き留められなかった錦織は無事に校長になれるのか。ようやく錦織のヘブンに対する長年の献身が報われると思った矢先の急展開に、こちらまで心がざわつく。

■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK

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