『28年後... 白骨の神殿』は驚くべき内容に 前作とはトーンが変化した物語の衝撃

『28年後... 白骨の神殿』の衝撃

 ここから物語は、新たな世界に進むのかと思いきや、すでに描いた世界に後戻りしていく。本作の「白骨の神殿」というタイトルは、前作公開後より喧伝されていたものだと記憶しているが、当時筆者は、新たな神殿が登場するのだと誤解していた。しかし、本作で重要な舞台となるのは、またしてもあの白骨の塔が立ち並ぶケルソンのテリトリーだったのだ。

 確かにこの美術は、担当したカーソン・マッコールとギャレス・ピューの労作であり、何度も出したいところだろう。しかし、新たな世界の扉を開いたスパイクの旅の通過点だった場所に、また戻ってくるという展開は、新たな世界を提示した前作のイメージを狭小なものにしてしまったことは否めないだろう。

 だが、そんな本作の物語が、誰あろうガーランド自身によって書かれたものである事実は重要である。つまり本作の展開には、「地理的な意味ではない“広がり”が描かれていた」と見るのが妥当ではないのか。そういった目で本作をあらためて眺めると、前作に登場した強力な感染者“アルファ”ことサムソン(チ・ルイス・パリー)がケルソンと意思疎通をするようになる描写の“可能性”を際立ってくる。本シリーズのみならず、『28日後...』から始まった絶望に次ぐ絶望をひっくり返す可能性を秘めた新要素だ。

 モルヒネを打たれて朦朧としているサムソンを促し、ケルソンが一緒にダンスするシーンは衝撃的かつユーモラスであり、いったい何を見ているのか混乱させられる。親友とも精神的なパートナーとも受け取れるほどの親密さだ。ここにあるのは、偏見を克服して互いを分かり合おうという意思である。

 また話題となった、アイアン・メイデンの「The Number of the Beast」が鳴り響くシーンでは、あの名優レイフ・ファインズが驚くべき演技を見せる。『教皇選挙』(2024年)で神に仕える威厳ある姿の、まさに真逆ともいえる動きは、ニア・ダコスタ監督が最初に脚本を読んだ際に「私のキャリアを終わらせるかもしれない」と感じた場面だったという。しかしダコスタ監督は、ユーモアとエモーションを的確に融合させ、この破綻しかねない場面を作品の効果的なアクセントとしている。(※)

 対照的に、どんどん陰惨さを披露していくのがジミーズだ。彼らはジミー・クリスタルの教えにより悪魔を崇拝しながら、民家に押し入って略奪、拷問、虐殺行為におよぶ。ジミー・クリスタルは、前作の冒頭で描かれたように、聖職者の父親が感染者に殺されたのを子ども時代に目の当たりにしていた。

 そして、子ども番組の司会者であり、未成年への性的虐待に及んだとして後に問題となったジミー・サヴィルの記号性や、『テレタビーズ』の視覚的要素から、ブロンドにトラックジャケット、カラフルな色分けといったカルトのスタイルを確立させている。これは、彼が幼い日々に文明が崩壊したことで、知識が更新されていかなかったことを意味している。自分が知り得る範囲のものをパッチワークのように繋ぎ合わせ、それが世界の真理かのように仲間たちに信じさせるのである。

 こういった子どもじみた思考が惨劇にエスカレートしていく構図は、他者への思い込みや都合の良いレッテル貼りに陥り、その場その場で自分の都合の良い判断を正しいものだとする強引さが、事態をどこまでもエスカレートさせていく恐怖を表現しているといえよう。こういった独善性はカルト宗教の特徴でもあると同時に、ファシズムと繋がることで排外や差別、戦争、“民族浄化”などの歴史的な犯罪へと結びついていく。

 他者との理解を通して希望を見出そうとするケルソンと、欲望のままに信じたいものだけを信じて他者に危害を加えるジミーズ。そのどちらに希望への可能性があり、スパイクが選び取りたい未来があるのかは明白だといえる。そして、この映画が暗示するのは、現在の世界がいま、そのような分岐点にあるということではないのか。

 前作に引き続き、ラストで意外な趣向を見せる本作。現時点で『28年後...』シリーズの最後になると見られる次作では、いったいどのような展開が描かれるのだろうか。レイジウイルスの悪夢はついに終わるのか、それともさらなる混沌へと突き進むことになるのか。スパイクの旅の行方とともに、その終着を見届けたい。

参照
※ https://mashable.com/article/28-years-later-bone-temple-number-of-the-beast-iron-maiden

■公開情報
『28年後... 白骨の神殿』
全国公開中
出演:アルフィー・ウィリアムズ、ジャック・オコンネル、レイフ・ファインズ
監督:ニア・ダコスタ
製作:ダニー・ボイル
脚本:アレックス・ガーランド
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
原題:28 Years Later: The Bone Temple
公式サイト:https://www.28years-later.jp/
公式X(旧Twitter):https://x.com/28YearsLaterJP

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