『ばけばけ』“庄田”濱正悟דサワ”円井わんの恋が始まる? 朝ドラ“名サブカップル”の歴史

NHK連続テレビ小説『ばけばけ』(2025年度後期)で、サワ(円井わん)の恋が動き始めたと感じさせたのが第80話である。サワはサロン「白鳥倶楽部」で教員試験の勉強を続けており、そこへトキ(髙石あかり)が訪ねてくる。そこに庄田多吉(濱正悟)が戻ってきた。錦織(吉沢亮)の後任として松江に再登場した庄田とサワが出会い、ナレーションの蛇と蛙(阿佐ヶ谷姉妹)が「これは恋よ」と茶々を入れる。物語が「ここからサワの恋が動き出す」と告げるような、わかりやすい合図であった。
サワの魅力は、単なるトキの親友で終わらない切実さにある。トキのすぐそばにいながら、同じ道を選べなかったことで、焦りや悔しさが心の奥に残っている。そのため彼女は、誰かに励まされて安心するよりも、「自分の力でつかみ取る」ことを優先している。だからサワの恋は、ただ甘い出来事として描かれにくい。もし恋に落ちるとしても、それは癒やしではなく、人生を選び直すための一歩として描かれていくはずである。

そこへ庄田が現れる構図がいい。庄田は誠実そうで、人に何かを教えたり支えたりできるタイプに見える。だが大事なのは、庄田が助けてあげる側に固定されると、この関係は一気に薄くなるという点である。サワは他人に頼らないことを自分の誇りにしてきた人物だ。だから彼女に必要なのは、上から手を差し伸べる善意ではなく、同じ目線で隣を歩いてくれる相手である。庄田がその距離感を保てたとき、この恋はぐっと厚みを増すのではないだろうか。サワが勉強を教わることが、弱さではなく“前へ進むための選択”として描かれることになるだろう。
この恋が、ただの恋のときめきで終わらず、サワの人生を前に進める物語として描かれるのではないか。そう思わせるのは、朝ドラがサブカップルを通じて、その時代の結婚観や人生観を映してきた歴史があるからである。
林遣都×大島優子、『スカーレット』の世界観を支える演技力 “主役”の2人が親友役を演じる贅沢さ
朝ドラ『スカーレット』の放送もいよいよあと1カ月となった。幼い頃、大阪から信楽に移住し、陶芸に目覚めたヒロイン・喜美子(戸田恵梨…たとえば、『スカーレット』(2019年度後期)の照子(大島優子)と信作(林遣都)だ。ふたりが支えていたのは、派手な恋愛ドラマではない。幼なじみという関係の強さで、物語に安心感を足していた。同じ土地で育ち、同じ時間を積み重ねてきた者同士だからこそ、隣にいるだけで画面が柔らかくなる。喜美子(戸田恵梨香)が苦しい局面に入るほど、照子と信作は“戻れる場所”として効いてくるのである。照子は明るく勢いのある人物だが、現実の重さから逃げない。信作は優しいがゆえに迷い、決断が遅れることもある。そうした不器用さも含めて、ふたりは主役の物語の温度を守るクッションになっていた。結果として照子と信作は、恋愛の盛り上がりよりも、人生の相談相手へと関係が育っていく過程が魅力になっていた。
奈緒&矢本悠馬が物語を動かす 『半分、青い。』もう1組のカップルを振り返る
『半分、青い。』(NHK総合)第19週「泣きたい!」は、鈴愛(永野芽郁)と律(佐藤健)が再会する2人の第2章のスタートであり、岐…『半分、青い。』(2018年度前期)の菜生(奈緒)とブッチャー(矢本悠馬)は、照子と信作とは対照的に、とにかく賑やかで、しかし妙に現実的でもあるカップルである。鈴愛(永野芽郁)たち幼なじみの空気をそのまま引き継ぎながら、恋愛が大人の生活に繋がっていく瞬間を、軽やかに見せた。菜生は受け身ではなく、自分で状況を動かすタイプである。言うべきことは言い、欲しいものは欲しいと押し出していく。一方のブッチャーは、情けなく見える場面も多いが、いざというときは逃げずに言葉を出す。だからこのふたりの関係は、甘さよりも勢いと本音が先に立つ。この凸凹が面白いのは、恋がロマンチックな理想だけでは続かないことを、笑いの形で示してくるからである。主役の恋が大きなドラマとして進む一方で、菜生とブッチャーは、恋がそのまま日々の暮らしや将来の話に繋がっていく関係を描いていた。視聴者が惹かれたのは、綺麗に整った恋物語というより、「こういう関係、あるよな」と思える現実味のある着地だったのである。























