『アウトローズ』ジェラルド・バトラーの“魂”を体感せよ 自分らしさをめぐる“男”の葛藤

『アウトローズ』ジェラルド・バトラーの魂

 「自分らしく生きよう」と人は言う。しかし、そういう生き方は必ずしも楽しいだけではない。自分らしく生きていても辛いことや苦しいことは起きるし、時には自分を押し殺しておけば起きなかったような災難にも襲われる。「自分らしく」とは決して楽な道を選ぶことではない。しかし、それでも一度きりの人生ならば——こうした厳しくも熱い想いを背中で語ってくれる男、それこそがジェラルド・バトラーである。

 ジェラルド・バトラーといえば、現状、ハリウッドのアクションスターで最もクマさんに近い男だ。高い演技力はもちろん、「マッチョ」というより「ガタイがいい」と言いたくなる太いシルエット、有無を言わさぬ顔面力、そして誰がどう見ても頼りになる雰囲気を持ち味に、現代アクション映画業界で確固たる地位を築いている。そんなジェラバトさんの新作『アウトローズ』(2025年)は、快作『ザ・アウトロー』(2018年)の続編であり、ジェラバトさんの美学と生き様を背中で語る1本にも仕上がっている。

 同作は明確にシリーズ化を狙っていて、そのスタートとして十分な完成度に到達している。前作は簡単に言うと『ヒート』(1995年)だったが、今回は『オーシャンズ11』(2001年)的な泥棒ものにジャンルがチェンジ。主人公の荒くれ刑事ニック(ジェラルド・バトラー)は、前作で刑事と強盗団を出し抜いた敏腕泥棒のドニー(オシェア・ジャクソン・Jr.)を追って、ヨーロッパに突撃。しかし、ドニーが欧州で暗躍する窃盗団とともにデカい盗みを計画していると知ると、「俺も仲間に入れろ」と迫る。最強の押しかけ女房と化したニックを、ドニーは受け入れるしかなかった。こうしてニックとドニーはタッグを組み、超高難易度のダイヤモンド強盗にチャレンジする。この強盗の実行シーンはスリリングで、まさに手に汗握る名シーンになっている。

 ジャンルだけではなく、作品全体の雰囲気も少し変わっている。前作は当時としても珍しいほど「男」感のみで構成された映画だった。主要な登場人物は全員がコワモテで、とにかく「男!」「男!」と画面に暑苦しさすら感じたが、今回はそこにユーモアと愛嬌がトッピング。相変わらず登場人物は太くて顔が怖い傾向にあり、ジェラバトさんも登場して10秒後にはブチギレるが、その後は冗談を言ったり、酒とアレでご機嫌になったりと、全体的に愉快さが強調される(教会でさりげなく弱さを見せるシーンも様になっている)。前作の荒くれ刑事一筋から、今回はさながらジェラバトさんの七変化。このへんはさすがジェラバトさんで、どの姿も様になっているのだ。革ジャンを着たゴリゴリの荒んだ刑事ファッションに、パーティー仕様のリラックスファッション、潜入のためのスーツ姿に、完全武装姿も、完璧に着こなしてくれている。

 しかし、個人的に本作で一番グッと来たのは、終盤でニックが重要な決断を行うシーンだ。そこに本作最大のカタルシスがあるのだが、この行動は、どこかジェラバトさん本人の人生にも重なって見えた。実はジェラバトさんには、弁護士を目指していた過去がある。大学では猛勉強し、実際に弁護士事務所で研修もして、一人前の弁護士になる寸前までいったそうだ。しかし、どうしてもそっちの道に面白味を見いだせず、勤務態度は悪くなり、元から激しかった酒の飲み方も悪化。ついには事務所を解雇され、俳優の道を歩もうと決意した。こたけ正義感のような経歴の持ち主だが、こたけ正義感とは魂の形が違ったのだろう。それまでの数年間にわたって積み上げたものを無にしてでも、自分の「性(さが)」に従ったのである。さらに俳優として成功したあとも、痛み止めの依存症に苦しんでリハビリ施設に入院するなど、ジェラバトさんの道は決して平坦ではない。

 ジェラバトさんの映画では、こうした自分の「性」との葛藤がしばしば取り上げられる。「そっちの道に行くべきだと分かっていても、そっちの道にいけない」という不器用さだ。『エンド・オブ・ホワイトハウス』シリーズ(2013年〜)も、痛快アクションではあるが、一方で戦闘ジャンキーの物語でもあった。恐らくだが、ジェラバトさん自身が自分らしくしか生きられない男なのである。「自分らしさ」とは大切な個性だが、同時に悪癖とも言えるし、それによって代償を支払う羽目になるかもしれない。「自分らしさ」の危険性を承知の上で、それでも自分らしく生き続けている。時には傷を負って、将来が台無しなるかもしれなくても、自分らしくあり続ける。この不器用な真摯さ、そして強さこそが、ジェラバトさんという男の唯一無二の魅力だろう。

 クライマックス、「虎は縞模様を変えられない」と語るジェラバトさんの渋みたるや。これまで重ねて来た人生が載った、無類の説得力がある。そこらの中年男性には決して出せない、ジェラバトさん特濃の渋みを是非とも全身で浴びてほしい。不安な未来に向けて、自分らしい一歩を踏み出す勇気がもらえるはずだ。あ、もちろん、いくら自分らしくても犯罪はダメです。

■公開情報
『アウトローズ』
全国公開中
出演:ジェラルド・バトラー、オシェア・ジャクソン・Jr.、エヴィン・アフマド、サルヴァトーレ・エスポジト、オーリ・シューカほか
監督・製作総指揮・脚本:クリスチャン・グーデガスト
キャラクター作成:ポール・シュアリング
製作総指揮:グレッグ・レンカー、グレゴワール・ジャンソラン、クリスチャン・ペアレント、マーク・シャバーグ、ゼブ・フォアマン、ジェン・ゴートンほか
製作:タッカー・トゥーリー、ジェラルド・バトラー、アラン・シーゲル、マーク・キャントンほか
撮影:テリー・ステイシー
編集:ロバート・ノード
音楽:ケヴィン・マトリー
配給:クロックワークス
原題:DEN OF THIEVES 2: PANTRA/2025年/アメリカ・カナダ・スペイン/シネマスコープ/5.1ch/字幕翻訳:北村広子/131分/PG12
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公式サイト:https://klockworx-v.com/outlaws

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