“国民の元カレ”寺西拓人が声で魅せる 『タイプロ』を経て『迷宮のしおり』に挑む意義

“国民の元カレ”寺西拓人が声で魅せる

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、オーディション番組『タイプロ』こと『timelesz project -AUDITION-』を追いかけていた佐藤が、劇場長編アニメーション『迷宮のしおり』をプッシュします。

『迷宮のしおり』

 timeleszの追加メンバーを決定する『タイプロ』で、はじめて寺西拓人という存在に出会った。挑戦する姿勢や言葉選びの誠実さに惹かれ、自然と応援するようになった一人として、2025年の彼の活躍には強い感慨がある。2025年4月期の日曜劇場『キャスター』(TBS系)最終話では視聴者の記憶に強く残る謎の男役を担い、2025年12月5日に公開された『天文館探偵物語』で映画初主演を務めた。俳優として着実にステップを重ねてきた寺西にとって、2026年最初の一作となる本作での声優初挑戦は、かなり大きなターニングポイントと言っていい。アイドルというフィールドに立ちながら、俳優、声の表現へと歩みを進めてきた寺西拓人。その挑戦の現在地が、『迷宮のしおり』には刻まれている。

 本作は、スマートフォンという現代人にとってあまりに身近な存在を入口にした異世界脱出劇。SFや巨大ロボット、ファンタジーといったジャンルを長年手がけてきた河森正治監督ならではのカラーもしっかりと息づいており、日常の延長線上にありながら、どこか歪で不穏な世界観が広がっていく。主人公・前澤栞を演じるのは、新しい学校のリーダーズのSUZUKA。そこに原田泰造、伊東蒼、齋藤潤といった実力派が加わり、独特のトーンを作品全体に与えている。

 寺西が演じる架神傑は、栞に対して「本来の自分を取り戻させてあげる」と甘い言葉で手を差し伸べてくる存在だ。頼れそうで、でもどこか胡散臭い。いわば“アブナイお兄さん”。なのに、ここに寺西の声が乗ると、不思議と妙な説得力と色気が生まれてしまうのだから困ったものだ(さすが、“国民の元カレ”!)。甘い声色で距離を詰めてくる一方で、本心はなかなか見えてこない。その感じが、架神というキャラクター像と驚くほどハマっている。

 作中で架神が口にする「私には真実も現実も必要ない」というセリフも印象的だ。寺西本人もインタビューで、「“これでバズりたい”と狙って動くタイプではなくて」と話しつつ、「ただ、この業界ではそれ(=バズ)が大事な側面は確かにある」と率直に語っていた(※)。注目や評価が数字として可視化される時代を生きる感覚は、架神傑というキャラクターにも重なっている。さらに、本作の舞台が寺西自身の出身地でもある神奈川という点も、興味深いポイントだ。偶然とはいえ、そうした背景がキャラクターにささやかなリアリティを添えているように感じられる。

 あらためて振り返ると、『timelesz project -AUDITION-』の応募条件は、2024年12月31日時点で18歳から30歳までの男性だった。1994年12月31日生まれの寺西拓人は、まさにその締切日に年齢条件の上限を迎える世代である。そのタイミングで挑戦し、注目を集め、今こうして俳優、そして声の表現へと活動の幅を広げている。その歩みを見ていると、どこか必然のようなものを感じてしまう。本作で見せた(聴かせた)表現は、寺西拓人が“次のフェーズ”に入ったことを確かに示している。俳優・寺西拓人のギアは、間違いなく一段上がった。

参照
https://realsound.jp/movie/2025/12/post-2265292.html

■公開情報
『迷宮のしおり』
全国公開中
キャスト:SUZUKA(新しい学校のリーダーズ)、原田泰造、伊東蒼、齋藤潤、、速水奨、坂本真綾、杉田智和、寺西拓人(timelesz)
監督:河森正治
原作:スロウカーブ、Vector Vision、ギャガ、フジテレビジョン
キャラクターデザイン:江端里沙
脚本:橋本太知
アニメーション制作:サンジゲン
企画・プロデュース:スロウカーブ
主題歌:新しい学校のリーダーズ「Sailor, Sail On」
配給:ギャガ
©『迷宮のしおり』製作委員会
公式サイト:https://gaga.ne.jp/meikyu-shiori/ 
公式X(旧Twitter):@meikyu_shiori

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