アナイス(ANAIS)の「2025年 年間ベストアニメTOP10」 “熱”ほとばしるTVシリーズが充実

アナイスの2025年ベストアニメTOP10
『九龍ジェネリックロマンス』オープニング映像(ノンクレジット)

 2025年は『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』と『九龍ジェネリックロマンス』のおかげで“九龍城砦”がかなり注目を浴びただろう。『九龍ジェネリックロマンス』の何が好きって、手描きの背景美術の美しさに始まり、物語の主題としてノスタルジーやアイデンティティの正体といった、哲学的ではあるが誰もが漠然と感じたことのある感情を取り扱っているところだ。そこに“街”が絡んでいることも重要で、慣れ親しんだ店も景色も失われていく今、私は少し九龍を懐かしむ彼らの気持ちがわかる。何より、ミステリーであると同時に大人向けな恋愛ものとして魅力的だった。ずっと夏を繰り返す九龍の気温、鯨井令子と工藤発の体温と汗、そこに滲む色気。ジリジリと焦がれる想い、その“熱”の表現が巧みだった。

アニメ『九龍ジェネリックロマンス』戻れない過去に思い馳せて 記号と別れの物語を紐解く

いろんなものが変わって、なくなっていく。学生時代に通っていたTSUTAYAはもうないし、原宿で友達とランチを食べた流行りの店も、…
TVアニメ「メダリスト」ノンクレジットオープニング映像|米津玄師「BOW AND ARROW」
 『メダリスト』は打って変わって氷上を舞台にした作品だが、本作が持つ熱も凄まじい。日曜劇場のような、エモーショナルな物語。小学生の年齢設定やスケートという題材から自分も最初は足踏みをしていたが、気がつけばどハマり。登場人物それぞれに共感しやすい過去があって、感情移入してしまう。そうして気持ちが入ったキャラクターのパフォーマンスを見ると、涙が出てしまうほど感動するのだ。未見の方は、一見可愛らしい結束いのりの“恐ろしさ”に早く触れてほしい。
 
TVアニメ『全修。』ノンクレジットオープニング│BAND-MAID「Zen」 / “ZENSHU” Opening Movie

 トップ3には、アニメーションのセンスはもちろん、感情を最も揺さぶられた作品を選出。特に個人的な思い入れが強いのが、ランキングの中で唯一原作を持たないオリジナル作品『全修。』だ。物書きを生業としている自分は、アニメーターの主人公・夏子が何かを“描き続けなければいけない”こと、そして“描けなくなってしまう”展開に他人事とは思えないほど共鳴してしまった。クリエイターの物語でありながらも、作品全体を通してアニメーションが持つ力や影響力の強さを、パーソナルな語り口で主張する姿勢が何より素晴らしい。生涯ベスト入りはもちろん、創作の力を失ったときに振り返りたい作品である。

『全修。』は何を描き、何を“修正”したのか? アニメに“救われた”者を再び救う

MAPPAスタジオの手がけるオリジナルアニメ『全修。』が全12話をもって完結した。すごい作品であった。 TVerで『全修。』を…
「光が死んだ夏」ノンクレジットオープニング「再会」Vaundy:The Summer Hikaru Died Opening

 『光が死んだ夏』はすべてが素晴らしかった。原作未読だったため、第1話の売店シーンの衝撃で一気に虜に。何よりちゃんと“ホラー”である点が素晴らしく、アニメを含め地上波番組からホラージャンルが薄れつつある昨今、作画や演出含め本作の恐怖描写に対する“本気度”に毎度興奮し、感銘を受けた。そしてミステリーが軸となるストーリーラインの中で輝くのは、ヒカルとよしきの関係性だ。ここまで実直にクィアネスを映した青春作品は珍しいのではないだろうか。土着的な話、民話から派生するホラー好きという個人的な趣味を置いておいても、物語の核であるヒカルとよしき、それぞれの感情変化におそらく一番魅了されていたと思う。

『僕のヒーローアカデミア FINAL SEASON』EDノンクレジット映像/EDテーマ:「 I 」BUMP OF CHICKEN/ヒロアカED

 正直、『光が死んだ夏』が1位と言っても過言ではないのだが、もう2025年の1位は何がどうしたっても『僕のヒーローアカデミア FINAL SEASON』なのだ。漫画も、毎週最新話を読むたびに泣き腫らしたが、アニメーションで改めて観ると、緑谷出久と爆豪勝己の戦いの壮絶さを改めて実感する。キャラクターが牽引していく物語のエモーショナルなストーリーテリングにおいて“お手本”としか言いようのない作品。株式会社ボンズの皆様、堀越先生ありがとうございました。2026年はスピンオフの続編・後日談もアニメ化されるとのことで、まだまだ『ヒロアカ』の世界を堪能できる喜びを噛み締めている。

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