『ロマンティック・キラー』は恋愛映画ではない “恋愛=制度”をパロディで解体する試み

恋愛学園テンプレとしての主要3キャラクター

香月司(高橋恭平)、速水純太(木村柾哉)、小金井聖(中島颯太)。『ロマンティック・キラー』の主要男子であるこの三人は、過去の学園ラブコメが繰り返し使用してきたテンプレートを、あまりにも分かりやすく体現している。
香月司は、料理が得意なツンデレ系。そして、なぜか杏子と絶賛同居中だ。転校生(=物語を強制的に動かす装置)、クール(=実は傷を抱えている)、同居/半同棲(=恋愛イベント即時発火スイッチ)という、最強カードを同時に3枚も切っている。

幼なじみの速水純太は、野球部所属の努力家で、爽やか系。『タッチ』以降、日本の学園恋愛が何度も反復してきた、王道青春男子の完成形といえるだろう。かつては冴えない少年だったが、成長とともに魅力的な存在へと変貌するという設定も含め、既視感がアリアリだ。そして小金井聖は、セレブ美少年。度を超した大金持ちで、一般常識からズレているがゆえに、ヒロインとの交流を通して庶民的価値観を学んでいく。
クールな転校生、健全な幼なじみ、ズレたセレブ。これは恋愛学園作品が長年「選択肢」として提示してきた男性像のカタログである。『ロマンティック・キラー』はそれを更新するのではなく、むしろ過剰に提示する。そしてそれが臨界点を超えたとき、テンプレートはロマンではなく、制度として姿を現す。

星野杏子は恋愛を拒んでいるのではない。彼女が問題にしているのは、「いま恋愛をしない」という選択が許容されない状況だ。恋愛が幸福かどうかではなく、恋愛が必須科目として課され、履修しないことが欠落として扱われる構造こそが問われている。魔法界の論理は極端だが、その背後にある価値観は、現実社会とも地続きだ。
原作者の百世渡は、上白石萌歌に「杏子がいちばんハンサムであってほしい」(※)と伝えたという。イケメンが大量に配置される物語において、最も能動的で、最もカッコいい存在がヒロイン自身である――おそらくここに、本作の思想は集約されている。恋愛を神聖視しないからこそ、恋愛を雑に扱わない。ロマンを絶対視しないからこそ、ロマンを選び取る主体の意思を尊重する。
『ロマンティック・キラー』は、恋愛をするかどうかを、誰かの物語ではなく、自分の時間軸で決めてもいいのだと宣言した、革命的映画なのだ。
参照
※https://bunshun.jp/articles/-/83551
■公開情報
『ロマンティック・キラー』
全国公開中
出演:上白石萌歌、高橋恭平、木村柾哉、中島颯太、髙橋ひかる、伊藤俊介、上坂樹里、森香澄、本多力、藤堂日向、津田健次郎(声)、内藤秀一郎、豊田裕大、藤原丈一郎、佐藤大樹、與那城奨、竹財輝之助、白濱亜嵐
監督:英勉
脚本:山岡潤平
音楽:橋本由香利、睦月周平、設楽哲也
ミラクルテーマソング:なにわ男子「Never Romantic」(ストームレーベルズ)、アオハルテーマソング:INI「True Love」(LAPONE ENTERTAINMENT)、キュンラブテーマソング:FANTASTICS「ずっとずっと」(rhythm zone)
原作:百世渡『ロマンティック・キラー』(集英社『ジャンプコミックス』刊)
制作プロダクション:TOHOスタジオ、ダブ
配給:東宝
©2025「ロマンティック・キラー」製作委員会 ©百世渡/集英社
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