100年後の私たちは何を聴いている? 『火星の女王』第2回で驚きの事実が明らかに

『火星の女王』第2回で驚きの事実が明らかに

 全3回で構成されるドラマ『火星の女王』(NHK総合)第2回は、火星でのISDAとコクーンの抗争、さらには火星と地球の対立を描きながら、最終回に向けて驚きの真実が次々と明かされていく回だ。

 まず、最大のトピックとなるのが、リリ-E1102(スリ・リン)がエマ(UA)の娘だったということだろう。22年前にコクーンの創始者・シュガー(ソウジ・アライ)が亡くなった宇宙港事件の時に生まれたエマの子がリリだった。タキマ・スズキ(宮沢りえ)は駐留軍出動を要請し、リリを預かる育ての親となった。

 『火星の女王』における重要な要素の一つとして、音楽がある。本作の舞台は今から100年後の2125年。現在、世界的にもヒップホップや情報量の多いポップスが主流となっているが、今から100年後にはどんな音楽が流行っているのかは神のみぞ知ること。『火星の女王』の中では、驚くほどにみんなで歌えるようなフォークソングが口ずさまれる。プロデューサー・服部竜馬が公式サイトに綴った記事を読むと、リリやアオト(菅田将暉)たち若者と呼ばれる世代が大切にしているのが、“オリジン”=自分だけのもの。反骨精神、カウンターカルチャーとされている。100年後にAIがどこまで進化を遂げるのかは想像もつかないが、だからこそ、その先の未来で人の温もり、実際に会って話すということは、たとえ地球と火星という距離があろうとも、さらに重んじられていくのではないかと、確かに思える。

 リリとアオトを繋ぐきっかけになったバンド「ディスク・マイナーズ」やリリのエレキギター、アオトの古着チックな衣装や鉱物など、劇中には至る所に彼らのオリジンが散りばめられている。ミドリ-E0106(鈴木亮平)とデイル-E0302(松岡茉優)がパーソナリティを務める『ミドリ・デイルのアルトコロニーラジオ』(ラジオ第1)は、『火星の女王』のスピンオフラジオとして世界観を拡張する役割を持つが、そこで昔聴かれていた懐かしい楽曲として流れていたのが森山直太朗「花」やTHE BLUE HEARTS「青空」だった。

 チップ(岸井ゆきの)は、ギターを弾くリリの姿にかつて労働歌を歌ってくれたエマの面影を重ねていた。駐留軍の弾圧によって亡くなったチップの追悼式に、リリがステージに上がるところで第2話は幕を閉じることとなる。UAの起用を筆頭にして、ディスク・マイナーズのボーカルを務める君島大空、プロジェクトの立ち上げ段階から関わっていたという坂東祐大とyuma yamaguchiの劇伴(配信されているOSTも最高)と、今作の柱の一つとなっているのが、音楽ということが分かるだろう。

 “シュガー”を名乗る、チップたちコクーンの指示役が、ISDA側のガレ-J0517(シム・ウンギョン)だということも明らかになった。ガレはシュガーの妹で、地球への帰還を拒否し火星に残る住民がいても、いずれコロニーゼロの機能は完全に停止させることを知り、反旗を翻した。指示役がガレだということを突き止めたのは、同じく労働者の街で育ったISDAのマル-B2358(菅原小春)だった。

 ISDAの最高責任者ファン総長(サンディ・チャン)が企てているのは、火星改造計画。テラフォーミングし、もう一つの地球を創ろうとしているのだ。そのために必要としているのが、リキ・カワナベ(吉岡秀隆)が見つけた「物体」。「強大な爆発力を持つ物体なら火星の環境を変えられるはず」と、ファン総長はタキマに恐ろしいことを言い放つ。地球ではアオトの父・白石恵斗(松尾スズキ)が22年もの間、「物体」を隠し持っていた。恵斗と同じく、やがてカワナベもまた「物体」への恐怖を抱くようになっていく。人類が核を発見した時を例に、大いなる発明は欲望と災いを生んできた。「人類にはまだ早い」と恵斗は言う。火星と地球、同じタイミングで起こる超常現象の謎を究明するために、8800万km離れた、タイムラグが20分ある中で、アオトとカワナベの実験が始まろうとしていた。

 「物体」の確保に動くファン総長、その配下にある駐留軍は、「物体」だけでなく、カワナベ、そして彼に協力するリリもターゲットとみなしていた。カワナベの助手・AJ(寛一郎)だけでなく、ホエール社のCEO・ルーク・マディソン(デイェミ・オカンラウォン)もISDA側の裏切り者に見えるが……。「物体」の実験結果は、そしてその謎の正体とは一体。そして、リリは地球に向かいアオトと会うことができるのか。宇宙空間を漂うリリが青く輝く地球を目の前にして「美しいと言われた地球を、私は見ることができない」と話すのに対する、アオトの「見えないだけでないわけじゃない」という言葉が、第1話冒頭の父・恵斗がカワナベに言ったセリフを彷彿とさせる。

■放送情報
放送100年特集ドラマ『火星の女王』
NHK総合にて、毎週土曜22:00〜23:29放送 ※全3回
※NHK ONE(新NHK プラス)で同時・見逃し配信予定
出演:スリ・リン、菅田将暉、シム・ウンギョン、岸井ゆきの、菅原小春、宮沢氷魚、松尾スズキ、滝藤賢一、デイェミ・オカンラウォン、サンディ・チャン、宮沢りえ 吉岡秀隆 ほか
主題歌:「記憶と引力」君島大空、坂東祐大、yuma yamaguchi feat. ディスク・マイナーズ
原作:小川哲
脚本:吉田玲子
音楽:坂東祐大、yuma yamaguchi
制作統括:渡辺悟
プロデューサー:石川慎一郎、原英輔、大久保篤、服部竜馬
演出:西村武五郎、川上剛
写真提供=NHK

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