『火星の女王』2025年最後に“まるで映画”のドラマが誕生 スリ・リンの抜擢も納得

とんでもないスケールのドラマが始まった。放送100年特集ドラマ『火星の女王』(NHK総合)だ。
舞台は100年後の2125年、火星に10万人が移住した世界。『DUNE/デューン 砂の惑星』を彷彿とさせる世界観に、地上波のドラマでここまでできるのかと驚かされる。脚本に『17才の帝国』(2022年/NHK総合)の吉田玲子、演出には『17才の帝国』、『きれいのくに』(2021年/NHK総合)の西村武五郎が参加しており、近年NHKで放送されてきたSFドラマのスタッフが名を連ねている。

本作は菅田将暉をはじめ、吉岡秀隆、宮沢りえ、菅原小春、岸井ゆきのといった豪華俳優が多く出演している中で、主演を台湾出身の新星スリ・リンが担っていることが大きなポイントだ。スリが演じるのは、視覚障害がある火星生まれのリリ-E1102。火星を統治する組織ISDAの日本支局長タキマ・スズキ(宮沢りえ)の娘で、アオト(菅田将暉)の恋人だ。地球帰還計画に参加し、帰還便に乗る直前にチップ(岸井ゆきの)たちに拉致されてしまう。目の見えない役であり、日本語でのセリフも数多くある間違いなくスリにとっては難役なはずだが、時折見せる弾ける笑顔、そして綺麗に頬を伝う涙で、なぜ彼女が『火星の女王』の主演に抜擢されたのか分かった気がした。劇中にはチップの仲間・コーン(栁俊太郎)がリリに心惹かれていき、解放しようとするシーンがあるが、言語を超えてその理由がなんとなく察せられるのが彼女の芝居あってだということを物語ってもいる。

設定や専門用語がかなり難解なため詳しい解説はNHKの公式サイトに任せることにするが、ストーリーラインとして掴んでおくべきは2つ。リリの拉致事件、そしてリキ・カワナベ(吉岡秀隆)が火星で発見した謎の物体を巡る争いだ。その物体とは漆黒の球体で、超重元素。火星を爆発させる危険を伴う代わりに、莫大なエネルギー源として利用ができる。この2つの縦軸に交わる人物が、準主人公的ポジションにいるアオトだ。火星に続き、地球にもあるはずの物体の探索をアオトはタキマから命令される。第1話ではISDAの若手職員として翻弄されるがままといった印象だったアオトだが、今後登場する記者の北村(滝藤賢一)とともに物体を探しにいくところから躍動していくのだろう。菅田将暉が出演した12月13日放送の『土スタ』(NHK総合)やインタビュー(※)で話している西伊豆での登山ロケからもそれは明らかだ。
第1話のラストでは、カワナベの助手AJ(寛一郎)が物体の研究内容を売り飛ばす裏切り者としてニヒルな笑みを見せた。VFXを駆使した最先端の映像だけでなく、約1時間30分という1話あたりのボリューム(全3話)を含め、“まるで映画”と言わざるを得ない圧倒的スケールのSFドラマが幕を開けた。
参照
※ https://realsound.jp/movie/2025/12/post-2248339.html
■放送情報
放送100年特集ドラマ『火星の女王』
NHK総合にて、毎週土曜22:00〜23:29放送 ※全3回
※NHK ONE(新NHK プラス)で同時・見逃し配信予定
出演:スリ・リン、菅田将暉、シム・ウンギョン、岸井ゆきの、菅原小春、宮沢氷魚、松尾スズキ、滝藤賢一、デイェミ・オカンラウォン、サンディ・チャン、宮沢りえ 吉岡秀隆 ほか
主題歌:「記憶と引力」君島大空、坂東祐大、yuma yamaguchi feat. ディスク・マイナーズ
原作:小川哲
脚本:吉田玲子
音楽:坂東祐大、yuma yamaguchi
制作統括:渡辺悟
プロデューサー:石川慎一郎、原英輔、大久保篤、服部竜馬
演出:西村武五郎、川上剛
写真提供=NHK




















