生田斗真が作品にもたらす“刺激” 『もしがく』菅田将暉との競演で浮かび上がる俳優力

生田が登場した時点で、『もしがく』の世界観はすでに出来上がっていた。ここに途中から参加する場合、俳優の在り方として、おもに2パターンあると思う。ひとつは、自身の登場シーンで場を乱すことなく、作品世界にうまく溶け込むこと。それまでもどこかで日常を送っていて、久部やリカたちと交流する瞬間をたまたまカメラが捉えた、というふうに。

もうひとつは、異質な存在として立ち振る舞い、作品に刺激を与えること。主要キャラクターたちと同じ世界の住人でありながら、独自のリズムやトーンで生きる。これによって物語は大きく転調し、視聴者はグッと引き込まれることになる。生田はこの後者の役どころを見事にまっとうしてみせた。『もしがく』の世界に溶け込むのではなく、トロというキャラクターのルールで、この世界を乗りこなしていたのだ。声にしろ、身のこなしにしろ、荒っぽいのにどこか軽やか。彼には自由を感じる。

しかし、トロ以上にこの世界を乗りこなしている男がいる。それが久部だ。演劇に自らの魂を捧げる彼は、芝居のこととなると、まるで人格が変わる。これを表現するため、菅田は“熱演”を繰り広げてきた。久部もまた、独自のリズムやトーンを持ち、自分だけのルールで生きてきた男であり、『もしがく』の世界を乗りこなす主人公。そんな男が、劇団員のひとりを奪われそうになったらどうなるか。それも、想いを寄せている女性・リカである。久部とトロが対峙した第9話、菅田の演技は本作において過去最高に爆発していたものだ。
こうして本作で火花を散らした菅田と生田だが、彼らは2017年に舞台『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』でダブル主演を務めた過去がある。シェイクスピアの『ハムレット』に登場するローゼンクランツとギルデンスターンを、ふたりが演じていたのだ。三谷が脚本を手がけた『鎌倉殿の13人』(2022年/NHK総合)でも共演している彼らだが、劇場で彼らのかけ合いを目撃していた方々にとっては、今回の共演こそ感慨深いものがあったのではないだろうか。

さて、第10話では、再びトロが登場するようである。しかも、役者としてだ。ここで生田の演技の質がどのように変わるのか。生田といえば、大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK総合)でまさかの“一人二役”を演じ、多方面をにぎわせているところ。こうした特別なポジションを任せられる演技者だ。彼こそが『もしがく』をベストな着地点に導く存在になる可能性だってあるだろう。
1984年の渋谷を舞台に、脚本家・三谷幸喜の半自伝的要素を含んだ完全オリジナル青春群像劇。「1984年」という時代を、笑いと涙いっぱいに描いていく。
■放送情報
『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』
フジテレビ系にて、毎週水曜22:00~22:54放送
出演:菅田将暉、二階堂ふみ、神木隆之介、浜辺美波、戸塚純貴、アンミカ、秋元才加、野添義弘、長野里美、富田望生、西村瑞樹(バイきんぐ)、大水洋介(ラバーガール)、小澤雄太、福井夏、ひょうろく、松井慎也、佳久創、佐藤大空、野間口徹、シルビア・グラブ、菊地凛子、小池栄子、市原隼人、井上順、坂東彌十郎、小林薫ほか
脚本:三谷幸喜
主題歌:YOASOBI「劇上」(Echoes / Sony Music Entertainment (Japan) Inc.)
音楽:得田真裕
プロデュース:金城綾香、野田悠介
制作プロデュース:古郡真也
演出:西浦正記
制作著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
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