『チラムネ』OPの映像美が高評価 『アオのハコ』などたなかまさあき作品の魅力を分析

『アオのハコ』
たなかまさあきの仕事としては、『アオのハコ』第2クールのEDも有名だろう。
高校生の青春の要素を入れつつ、蝶野雛の見事な負けっぷりを描いており、満足感のある映像である。
ハイテンションなPVであった「アニメとススメ」とは異なり、失恋を描くEDということでこちらは落ち着いた雰囲気が漂う。
露光が強く繊細で清潔な画面を提示し、ホワイトアウトやディゾルブを多用したカット繋ぎは情感に溢れ、音楽と合わさり胸が締め付けられるような印象を与える。
思い出を振り返るような場面では、アスペクト比を4:3にし、スマホのカメラロールのような一枚絵を繋げていく。『チラムネ』で見られた演出の原形となるものが、すでにここで提示されている。「アニメとススメ」でアスペクト比を用いた演出を駆使していたたなかまさあき氏らしい技法である。
また、目を瞑り今までを思い返す蝶野雛と、雛の目に焼きついてきた想い人猪股大喜の姿、二つを重ねながら繋ぐことで、彼女の切実な思いが現れている。この二つの映像のオーバーレイ的な演出はたなかまさあき氏の他の作品にも見られる特徴的な部分である。
『永久のユウグレ』
たなかまさあきと言えば高校生の青春、というイメージからはみ出したのが、『永久のユウグレ』のEDであろう。
『永久のユウグレ』はSFモチーフの作品であり、学園青春的なエモさを使うと作品との乖離が発生してしまうが、たなかまさあきは持ち味を残しつつ見事に作品に寄り添うED映像を作成している。
『アオのハコ』EDとは共通点が多く、露光が強く、ディゾルブが多く、白いイメージ空間での回想など、画面作りの多くの部分で重なりが見える。
特に、3人の旅を思い目を瞑るアモルは、想起者と思い出をオーバーレイして映し出す演出という点で、先ほど紹介した大喜を思う雛の姿に似ている。
アモルも雛も、大切な日々を思い出しながら最後に歩み出すなど、EDにおける二人にはかなり重なる部分が多い。
ただ、成長したアモルがかつての少女時代を思い返している描写もあるため、雛が自分の気持ちを振り払おうとしても思わず囚われてしまうような切なさがある『アオのハコ』ED2に対し、『永久のユウグレ』EDのアモルは3人で過ごしてきた大切な日々を思い返し懐かしむようだ。
二つのEDの演出自体は近いものの、想起される感情にはかなり差があると言える。
たなかまさあきは、アスペクト比を変更する演出や、二つの映像をオーバーレイして思い出の重みを描く演出など、特徴的な技法を多用することがあるが、それらの使い方はそれぞれ作品に寄り添い個別の魅力を生み出している。
『永久のユウグレ』EDで青春的なモチーフから大きく離れた映像を出したたなかまさあきが、今後どのような作品を手がけるのか、注目していきたい。





















