板垣李光人&武田一義、大学生と戦争を語る 「『ペリリュー』がきっかけになってほしい」

板垣李光人&武田一義が大学生と語り合う

 12月5日に公開されるアニメーション映画『ペリリュー ー楽園のゲルニカー』のティーチイン試写会が茨城大学水戸キャンパスにて11月16日に開催され、主演を務めた板垣李光人と、原作者であり共同脚本を務めた武田一義が登壇した。

 終戦80年の節目である2025年に公開される本作は、太平洋戦争中、すでに日本の戦局が悪化していた昭和19年9月15日からはじまった「ペリリュー島の戦い」と、終戦を知らず2年間潜伏し、最後まで生き残った34人の兵士たちを描いたアニメーション映画。『ヤングアニマル』(白泉社)で連載され、第46回日本漫画家協会賞優秀賞を受賞した武田による同名漫画が原作となる。心優しい漫画家志望の主人公・田丸均役で板垣が主演を務め、田丸の頼れる相棒・吉敷佳助を中村倫也が演じる。

 多くの若者を戦地に輩出した水戸歩兵二連隊の跡地、茨城大学水戸キャンパスにて行われた本イベントには、茨城大学の学生のほか、近隣の中学校や高校の学生などを含めて約400人が来場。上映の前には茨城大学で水戸歩兵第二連隊や大学周辺の戦跡について研究している、茨城歴史探求チームの学生3グループ6人が登壇し、研究発表を行った。

 発表はそれぞれ、水戸歩兵に二連隊ができるまでとその後の市民生活への影響、満州事変が勃発してから日中戦争を経て、なぜペリリュー島に向かうに至ったのかの経緯、茨城大学周辺に現在も残る水戸歩兵第二連隊の戦跡とテーマごとに行われた。

 本作の舞台であるパラオ・ペリリュー島の戦いには、守備の要を担う水戸歩兵二連隊として、茨城から多くの若者が戦地へ赴いた。

 学長からは「本イベントへのたくさんのご協力に感謝します。ここで戦争が起きたということはどうしようもない事実ですが、その事実に対して今後どう立ち向かっていくかが大切だと思います。大学とは知を耕す場であると同時に未来を創る場でもあります。本日、中学高校大学生が集まって未来を創る場にできて本当によかった。このキャンパス以外にも、かつて戦跡だった場所が大学などといった学びの場所になっていることが多々あります。これからあなたたちは未来を創る立場として、今日感じたことを大切にしてほしいです」と学生とこのイベントへの想いを述べた。

 発表終了後、上映を終えて行われたティーチインには板垣と武田が登壇。板垣と武田が登場すると、約400人の観客は盛大な拍手の音で迎えた。

 12月5日の劇場公開に先んじて、縁のある茨城大学の学生ら若い世代に作品が届いたことに、板垣は「この大学はまさしく本作と縁の深い場所ということで、そんな場所で上映後にお話しさせていただけることを嬉しく思います」と笑顔を浮かべた。

 MCから「若い世代の皆さんにご覧いただき、どんなお気持ちですか?」と聞かれると、本作を通してペリリュー島の戦いについて知ったという板垣は、「我々の世代は戦争経験者からお話を伺う機会も少なくなって、学校によっても戦争教育にばらつきがあると感じます。戦争が教科書の中のもの、物語などのフィクションとして捉えている部分がどうしてもあります」と率直な感想を述べながら「でも知ることから広がるものは大きいと思います。今日映画を観て初めてペリリュー島の出来事を知った方もいると思いますが、そこからどんどん自分の中の考え方を深めていただけたら嬉しいです」と目を向けることの大切さを説いていた。

 武田も「戦争を知らない点において、私はここにいる学生の皆さんと同じ立場です。父親ですら、戦後生まれ。自分も10年前の当時の天皇皇后両陛下(現在の上皇上皇后両陛下)の慰霊訪問で初めてペリリュー島の戦いを知りました。そこから実際に戦地に赴いた兵士の話を聞き、『今の自分たちと全く変わらない普通の人たちだったんだ』と知り、それを描きたいと思ったのが本作が始まったきっかけです。自分で知り、考える。それが大事。その入り口が本作になってもらえたらと思います」と期待を込めていた。

 武田による原作を読んだ印象について板垣は、画と内容のギャップを魅力に挙げた。「かわいらしい絵柄と内容の凄惨さと生々しい戦争の歴史。表情もデフォルメされていて、だからこそこちら側に想像の余地が生まれる。心情や置かれている状況で田丸均が何を考えているのか、想像ができる。読みやすいけれど現実を突きつけられる。そのギャップが魅力的だと思いました」と語った。

 また、水戸二連隊の跡地である茨城大学水戸キャンパスを訪れたことに板垣は「実際にこの地に足を運んで、本作を届けることができたことが嬉しいです。学生の皆さんを前にして、若い世代の方々が戦地に送られたという事実を感じて、改めて戦争の怖さと残酷さを感じました」と思うところもある様子だった。

 アフレコ収録に入る前、板垣は実際にペリリュー島を訪問している。「劇中でも『楽園のような場所』というセリフがありますが、実際に海は青くて緑も綺麗です。でも一歩足を踏み入れると兵士の方がいた洞窟があったり、戦車も当時のまま錆びた状態で山道に現れたり」と情景を回想しながら「映像芝居と違ってアフレコ収録ではマイクとモニターに向かってイマジネーションを働かせないといけないけれど、島の風土、気温、風、全てを感じることでイメージを補うことができました。実際に戦闘があった島に行くことで、田丸均を演じる事の重さを感じました」と貴重な経験と述べていた。

 その後は上映前に発表を行った学生とのティーチインが行われた。

 今回の映画を通して、これまでに抱いていた歴史に対する見方や認識などに変化などはあったかと問われた板垣は、「変わったというかアップデートされたような感覚です」と述べた。「この作品にフィクションはあれど、ペリリュー島で悲惨な事実があったことは現実で、どうしたらいろいろな世代に届くんだろうと戦争に対して改めて考えさせられました。だからこの作品に関わること、全てが勉強でした」と慎重に大切に言葉を選びながら語った。

 普段の俳優業と全く異なるアフレコには苦戦したと話す板垣。「普段見慣れている台本とは違うものなので『何だこれは?』と脳が処理できませんでした。普段は台本にマーキングはしないけれど、今回は自分のセリフとト書きにマーキングしました。台本という構造から根本から違かったのが大変でした」と振り返った。

 最後に板垣は「学生の発表を拝見して、また新たに知ることがありました。世代関係なく人としてお互いが人として知り合っていくことの大切さを改めて感じることができました。そして今から家に帰って“ただいま”と言える日々を大切に思う、この映画が幸せに生きていることができている今を大切に思う一つのきっかけになってくれたら嬉しいです。今日は貴重で有意義な時間をありがとうございました」と全体に呼び掛けながら感謝していた。

 最後には会場の全員をバックに写真を撮影し、大きな拍手に2人は見送られ、大盛況のもとにイベントは終了した。

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板垣李光人
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(左から)武田一義、板垣李光人
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(左から)武田一義、板垣李光人
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■公開情報
『ペリリュー ー楽園のゲルニカー』
12月5日(金)全国公開
キャスト:板垣李光人、中村倫也、天野宏郷、藤井雄太、茂木たかまさ、三上瑛士
原作:武田一義『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』(白泉社・ヤングアニマルコミックス)監督:久慈悟郎
脚本:西村ジュンジ・武田一義
キャラクターデザイン・総作画監督:中森良治
プロップデザイン:岩畑剛一、鈴木典孝
メカニックデザイン:神菊薫
美術設定:中島美佳、猿谷勝己(スタジオMAO)
コンセプトボード:益城貴昌、竹田悠介(Bamboo)
美術監督:岩谷邦子、加藤浩、坂上裕文(ととにゃん)
色彩設計:渡辺亜紀、長谷川一美(スタジオ・トイズ)
撮影監督:五十嵐慎一(スタジオトゥインクル)
3DCG監督:中野哲也(GEMBA)、髙橋慎一郎(STUDIOカチューシャ)
編集:小島俊彦(岡安プロモーション)
考証:鈴木貴昭
音響監督:横田知加子
音響制作:HALF H•P STUDIO
音楽:川井憲次
制作:シンエイ動画 × 冨嶽
配給:東映
©武田一義・白泉社/2025「ペリリュー ー楽園のゲルニカー」製作委員会
公式サイト:https://peleliu-movie.jp/
公式X(旧Twitter):@peleliu_movie
公式Instagram:peleliu_movie
公式TikTok:@peleliu_movie

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