『ばけばけ』髙石あかり×トミー・バストウは好相性 日本の朝を笑わせるアドリブ演技合戦

家族からの公認を得て、ヘブン(トミー・バストウ)の女中として働き始めたトキ(髙石あかり)。しかし、まだまだこれで一安心とはいかなそうだ。NHK連続テレビ小説『ばけばけ』第36話では、トキがヘブンにクビを宣告される。
ヘブンはトキに夜の相手は求めておらず、単なる女中として雇ったに過ぎなかった。ほっと胸を撫で下ろすトキ。一方で、身近な人間の誤解は解けたものの、ヘブンがラシャメンを囲っていると世間から思われていることには変わりない。そのせいでヘブンはトキに対して気まずさを感じていた。

あまりのやりにくさにただでさえご機嫌ななめなヘブンをさらに苛立たせるのは、勘右衛門(小日向文世)がトキに護身用に持たせた木刀だ。「武士に憧れがあるヘブンのために用意した」とでも言っておけばいいものを、「この木刀は先生から身を守るためだそうです」とバカ真面目に説明する錦織(吉沢亮)。これにヘブンは「シジミサン、クビ!」とヘソを曲げてしまう。
責任を感じた錦織がどうにかその場を取り繕い、首の皮一枚つながったトキだが、一度不愉快なことがあると根に持つヘブンのこと。いつまた心変わりするか分からない。松野家と雨清水家の大黒柱となった今、職を失っては困るトキは必死にヘブンの役に立とうとするが、ことごとく空回りしてしまうのだった。
ヘブンの手に止まった蚊を叩こうとすれば、「セッショウ、ノー!」と制止されるトキ。そんな2人のすれ違いに「難しい〜」とハモる蛙とヘビ、もとい阿佐ヶ谷姉妹の何ともゆるいナレーションが笑わせてくる。

全体的にシリアスなムードが漂っていた第7週とは打って変わり、第8週は事前に高石が「この週の台本は大笑いしながら読みました」(※)と明かしていたように、初日からコミカル一色。特に視聴者の爆笑をかっさらったのが、トキの“ビア探し”だ。
ある日、トキは出勤するヘブンから「ビアを買っておいてほしい」と頼まれる。今でこそ世界でも有数のビール消費国となった日本だが、庶民にまで普及し始めたのは大正時代に入ってから。そのため、トキは「ビア」が何であるのか検討もつかず、花田旅館の人たちの言葉をヒントに、琵琶、ヒエ、鎌、独楽、胡麻など、それらしいものを片っ端から集める。琵琶はまだしも、それ以外はかすりもしないものだが、「カマ〜」「コマ〜」とビアに寄せた発音でビア候補を紹介するトキに、混乱した様子で「ノー! ビア!」と繰り返すヘブン。挙げ句の果てにトキはサワ(円井わん)まで召喚し、ヘブンを呆れさせた。

トキの台詞の言い回しはディレクションなし、ヘブンのリアクションもほぼアドリブだったそう。髙石とトミーもそれぞれ役の域の中で自由度の高い芝居の応酬によって笑いを生み出していた。今はまだチグハグなトキとヘブンとは対照的に、2人はすでに相性抜群のようだ。またコントのようなトキとヘブンのやりとりには、まだネットも音声翻訳アプリもない時代に、相手の言語も文化も知らない者同士がどのようにコミュニケーションを取っていたのだろうという疑問の一つの答えがある。五感を研ぎ澄ませて相手を観察し、自分に何を言いたいのか、何をしてほしいかを導き出そうとする。伝わらない、分からないもどかしさはあれど、そこに確かな信頼が生まれていくのだろう。
参照
※ https://realsound.jp/movie/2025/11/post-2219172.html
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK





















