『第26回東京フィルメックス』全作品ラインナップ発表 スー・チー初監督作『女の子』も

11月21日から11月30日まで開催される『第26回東京フィルメックス/TOKYO FILMeX 2025』の全作品ラインナップが発表された。
東京フィルメックスは、アジアを中心とした世界から独創的な作品を集めた国際映画祭。2000年に創設され、今回が26回目の開催となる。
オープニング作品にはツァイ・シャンジュン監督の『太陽は我らの上に』、クロージング作品にはフオ・モン監督の『大地に生きる』が決定している。
コンペティションには国際審査員として、初長編『記憶が私を見る』がロカルノ映画祭で最優秀新人監督賞、東京フィルメックスで審査員特別賞を受賞したソン・ファン、2024年に公開された『煙突の中の雀』がロカルノ映画祭コンペ部門でワールドプレミアされ、中国・平遥国際映画祭の外国映画コンペ部門で作品賞、スイス映画賞の作品賞、脚本賞などを受賞したラモン・チュルヒャー 、そして最新作『you burn me(原題)』が2025年2月の恵比寿映像祭や11月のTAMA CINEMA FORUMでも上映されるマティアス・ピニェイロが参加する。
さらに観客の投票によって選出される観客賞に加え、熊谷萌花、永山凜太郎、Paula GEORGIEVNAの学生審査員がコンペティション部門の作品を対象に審査する、東京学生映画祭主催の学生審査員賞が設けられている。
コンペティション部門で上映されるのは、アジアの新進作家が2024年から2025年にかけて監督した10作品。女優スー・チーの監督デビュー作『女の子』、全編NYロケでチャン・チェンが新境地を開く『ラッキー・ルー(仮)』、ショーン・ベイカーが脚本・製作で参加した台湾映画『左利きの少女(原題)』やユン・ガウン監督の『The World of Love(英題)』、アレクサンドレ・コベリゼ監督の『枯れ葉』も登場する。また、インドの農村を舞台に男性同士の愛を描く『サボテンの実』、シンガポールの管理教育を痛烈に風刺するガールズムービー『アメーバ』、国外移住を控えた青年の目でイランの現実を映す『アミールの胸の内』も上映される。
日本からは『佐々木、イン、マイマイン』で脚光を浴びた内山拓也監督が北村匠海を主演に迎えた最新作『しびれ』がワールドプレミア上映される。そして、フランスの国立映画学校La Fémisの映画監督科を日本人で初めて卒業した畑明広監督の初長編『グラン・シエル』の上映も決定した。
さらに、特別招待作品としてタイのナワポン・タムロンラタナリット監督による『ヒューマン・リソース』、イスラエル出身の鬼才ナダヴ・ラピド監督の『YES』、ガザ空爆で命を奪われたパレスチナ人女性ジャーナリストがイラン出身の女性監督と交わした映像書簡『手に魂を込め、歩いてみれば』の、パレスチナ情勢を考えさせる2作品も上映。あわせてツァイ・ミンリャン監督の『家へ』、モーリー・スリヤ監督の『市街戦』も上映される。
そして、特集上映として、ルクレシア・マルテルが構想に15年をかけた初のドキュメンタリー『私たちの土地』と代表作『サマ』、『沼地という名の町』の2本を上映。コンペティション審査員を務めるチュルヒャー監督の『煙突の中の雀』『ガール・アンド・スパイダー』『ストレンジ・リトル・キャット』の“動物三部作”も特集上映される。
そのほか、志萱大輔監督の『猫を放つ』、日本を舞台に、中国東北部出身の移民が直面する厳しい現実と差別的待遇を描いた連作短編集『ハーフタイム』『相談』『祝日』の上映も決定した
また、東京フィルメックス関連企画として、11月13日から15日までアテネ・フランセ文化センターでは没後10年を迎えるマノエル・ド・オリヴェイラ監督の長短編6作品を厳選して上映する『マノエル・ド・オリヴェイラ監督作品セレクション Manoel de Oliveira』も開催される。
プログラム・ディレクターの神谷直希からはコメントも到着した。
神谷直希(プログラム・ディレクター)コメント
今年のプログラムは、現代の映画、特にアジア映画の活発な「今」を映し出す、挑戦的で力強いラインナップとなりました。世界各地から集められた珠玉の作品群は、私たち観客の視覚と心を揺さぶり、映画という芸術の持つ大きな可能性を再認識させてくれるでしょう。
今年の大きな傾向の一つは、個人の内面と、人々を取り巻く世界の断絶や調和を深く掘り下げた作品の多さです。特にコンペティション部門には、社会の構造や制度、既存の価値観といった外から与えられた「枠」のなかで登場人物が葛藤し、自分なりの出口を見出そうとする作品が数多く並びました。世間の同情に抗う『The World of Love(英題)』、家族の桎梏と闘う『女の子』や『しびれ』や『左利きの少女』、名門校のプロパガンダ教育に少女たちが反旗を翻す『アメーバ』、移民ギグワーカーが苦闘する『ラッキー・ルー』、家父長的共同 体の同性愛者を描く『サボテンの実』、祖国残留と移住の間で揺れる『アミールの胸の内』…。こうした「枠」 の存在は物語の基本構造であり今年だけの特色というわけではありませんが、今回は「枠組み/壁」がことのほか多様で、それらが現代社会の閉塞感の理由を映し出していると感じています。
そしてもう一つの特筆すべき傾向は、プログラム全体が、映画表現の最前線を切り拓く、革新的な作家性に満ちていることかもしれません。『枯れ葉』、『グラン・シエル』、『Yes』、『家へ』、そして『私たちの土地』といった作品たちは、既存のジャンルや形式にとらわれず、独自の映画言語を追求する映画作家たちの野心的な試みに溢れています。物語(ストーリー)の語り方だけでなく、音響の設計を含めて、映像そのものの表現方法を大胆に刷新しようとする作品群は、映画というメディアが持つ表現の自由さと、それを通して世界を捉え直す喜びを私たち観客に提供します。
■イベント情報
『第26回東京フィルメックス』
会期:11月21日(金)~11月30日(日)
会場:有楽町朝日ホール、ヒューマントラストシネマ有楽町
公式サイト:https://filmex.jp/
【東京フィルメックス・コンペティション】
『The World of Love(英題)』
監督:ユン・ガウン
英題:The World of Love/韓国/2025/120分
配給:ビターズ・エンド
『女の子』※長編監督デビュー作
監督:スー・チー
英題:Girl/台湾/2025/125分
『ラッキー・ルー(仮)』※長編監督デビュー作
監督:ロイド・リー・チョイ
英題:Lucky Lu /カナダ、アメリカ/2025/103分/
配給:リアリーライクフィルムズ
『枯れ葉』
監督:アレクサンドレ・コベリゼ
英題:Dry Leaf/ドイツ、ジョージア/2025/186分
『アメーバ』※長編監督デビュー作
監督:タン・スーヨウ
英題:Amoeba/オランダ、フランス、スペイン、韓国、シンガポール/2025/98分
©AKANGA FILM ASIA_JULIANA TAN
『左利きの少女(原題)』※長編監督デビュー作
監督:ツォウ・シーチン
英題:Left-Handed Girl(左撇子女孩)/アメリカ、イギリス、フランス、台湾/2025/108分
配給:スターキャット アルバトロス・フィルム
© 2025 LEFT-HANDED GIRL FILM PRODUCTION CO., LTD ALL RIGHTS RESERVED
『アミールの胸の内』
監督:アミール・アジジ
英題:Inside Amir/イラン/2025/103分
『サボテンの実』※長編監督デビュー作
監督:ローハン・パラシュラム・カナワデ
英題:Cactus Pears/インド、イギリス、カナダ/2025/112分
『グラン・シエル』※長編監督デビュー作
監督:畑明広
英題:THE SITE/フランス、ルクセンブルク/2025/92分
『しびれ』
監督:内山拓也
英題:NUMB/日本/2025/118分
配給:NAKACHIKA PICTURES
【特別招待作品】
『市街戦』
監督:モーリー・スリヤ
英題:This City is A Battlefield/インドネシア/2025/117分
『家へ』
監督:ツァイ・ミンリャン
英題:Back Home(回家)/台湾/2025/65分
©Homegreen Films
『ヒューマン・リソース』
監督:ナワポン・タムロンラタナリット
英題:Human Resource/タイ/2025/122分
『Yes』
監督:ナダヴ・ラピド
英題:Yes/フランス、イスラエル、キプロス、ドイツ/2025/150分
『手に魂を込め、歩いてみれば』
監督:セピデ・ファルシ
英題:Put Your Soul on your Hand and Walk/フランス、イラン/2025/113分
配給:ユナイテッドピープル
©Sepideh Farsi Reves d’Eau Productions
【特集上映:ルクレシア・マルテル 「植民地」の残影】
『私たちの土地』
監督:ルクレシア・マルテル
英題:Landmarks/アルゼンチン、アメリカ、メキシコ、フランス、オランダ、デンマーク/2025/122分
©Rei Pictures – Louverture Films
『サマ』
監督:ルクレシア・マルテル
英題:ZAMA/アルゼンチン、ブラジル、スペイン、ドミニカ共和国、フランス、オランダ、メキシコ、スイス、アメリカ、ポルトガル、レバノン/2017/115分
『沼地という名の町』
監督:ルクレシア・マルテル
英題:The Swamp/アルゼンチン、スペイン/2000/103分
【特集上映:ラモン・チュルヒャー 「動物」三部作】
『煙突の中の雀』
監督:ラモン・チュルヒャー
英題:The Sparrow in the Chimney(Der Spatz im Kamin)/スイス/2024/117分
提供:JAIHO
『ガール・アンド・スパイダー』
監督:ラモン・チュルヒャー
英題:The Girl and the Spider/スイス/2021/98分
提供:JAIHO
『ストレンジ・リトル・キャット』※長編監督デビュー作
監督:ラモン・チュルヒャー
英題:The Strange Little Cat/ドイツ/2013/72分
提供:JAIHO
©Alex Hasskerl
【メイド・イン・ジャパン】
『猫を放つ』※長編監督デビュー作
監督:志萱大輔
英題:Leave the Cat Alone /日本/2025/102分
配給:Iha Films
東北短編集『ハーフタイム』『相談』『祝日』
監督:張曜元
英題:Northeastern Shorts Collection: Half-Time, Life Is Snow,Selection/日本、中国/2025/83分
©張曜元
東京フィルメックス関連企画
『マノエル・ド・オリヴェイラ監督作品セレクション Manoel de Oliveira』
期間:11月13日(木)~11月15日(土)
会場 :アテネ・フランセ文化センター
『ドウロ河』
監督:マノエル・ド・オリヴェイラ
原題:Douro, Faina Fluvial/ポルトガル/1931/21分
『春の劇』
監督:マノエル・ド・オリヴェイラ
原題:Acto de Primavera/ポルトガル/1963/91分
『過去と現在ー昔の恋、今の恋』
監督:マノエル・ド・オリヴェイラ
原題:O Passado e o Presente/ポルトガル/1972/115分
『フランシスカ』
監督:マノエル・ド・オリヴェイラ
原題:Francisca/ポルトガル/1981/166分
『言葉とユートピア』
監督:マノエル・ド・オリヴェイラ
原題:Palavra e Utopia /イタリア、スペイン、フランス、ブラジル、ポルトガル/2000/130分
『レステロの老人』
監督:マノエル・ド・オリヴェイラ
原題:O Velho do Restelo/ポルトガル、フランス/2014/19分
主催:特定非営利活動法人東京フィルメックス
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画祭支援事業)、アーツカウンシル東京【芸術文化魅力創出助成】
特別協賛:シネマイニュテイル
協賛:シマフィルム、コネクション、KODAK
協力:アテネ・フランセ文化センター、東京テアトル、東京学生映画祭、Festival Scope







































































