『ばけばけ』寛一郎が“最初の夫”に抜擢された理由 「誰からも愛される男になるように」

寛一郎が“最初の夫”に抜擢された理由

 髙石あかりがヒロインを務めるNHK連続テレビ小説『ばけばけ』が現在放送中。松江の没落士族の娘・小泉セツとラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルに、西洋化で急速に時代が移り変わっていく明治日本の中で埋もれていった人々を描く。「怪談」を愛し、外国人の夫と共に、何気ない日常の日々を歩んでいく夫婦の物語。

 主人公・松野トキ(髙石)とその家族を支える雨清水タエ(北川景子)と傳(堤真一)の三男・三之丞役を演じるのは板垣李光人。お坊ちゃまながら、兄が家督を継ぐため自身は特に役目がないという、複雑な思いを抱えるキャラクターだ。

 制作統括の橋爪國臣と演出の村橋直樹は、ともにNHK大河ドラマ『青天を衝け』(2021年)で板垣とタッグを組んでおり、そのとき感じた“空気感”が今回の起用につながったという。

 橋爪は「松江の名家である雨清水家では、他とは違う色を出さなければいけない。その三男坊を演じられる人は、役者さんでもとても稀有な存在で。あの役は、本当に板垣さんにしか演じられないと思いますね。“自分に何も期待されていない中、それでも何かをやらなければいけない。では、どうしようか”という惑いの部分で、板垣さんの力を発揮できる。それに加えて、北川さんと堤さんから生まれた子どもとして、納得できる雰囲気を持っているところも重要でした」と語る。

 さらには「三之丞は他の人物とは少し違う方向を向いて生きているような、ちょっと特異なキャラクター」とし、「そこで見せる彼のお芝居はグッと胸にくるところがあるし、試写を観ていても泣けてくる。本当に彼に任せてよかったなと思っています」と手応えを口にした。

 同じく村橋も「彼の持っているものが、役に直結している」と述べ、板垣の存在そのものを生かすため、あえて芝居をつけていないと説明する。

「板垣さんは『何か運命を背負っていなければ、こんなふうには見えないでしょう』という存在感をお持ちの方で、人間の揺れもちゃんと表現できる。まさに三之丞ですよね。大きな時代のうねりの中でのどうしようもなさ、みたいなものと1人で戦わなければいけない。時代を変えるような大きな戦いではなく、雨清水家の中で小さな戦いを強いられて立ち尽くす人なんだと、彼が映っただけで伝わってくる。そういった“彼の持っているもの”を殺さないことだけを考えながら撮影しています」(村橋)

 第9話では、トキのお見合い相手・山根銀二郎役で寛一郎が初登場。銀二郎は鳥取県因幡の貧窮足軽の次男で、トキと怪談話で無邪気に盛り上がる姿も印象的だ。

 村橋は、板垣と同じく寛一郎からにじみ出る人柄が役に通ずるといい、唯一無二の魅力についてこう語る。

「現代人は子どもの頃から様々な情報を取捨選択していますが、時代劇に出てくる人たちには選択肢がなく、決められた価値観で生きている人が多いんです。それゆえ現代の感覚で見ると、純朴で、まっすぐなんですが、それを現代人で表現できる方は本当に少なくて。その中で寛一郎さんは、きっと平安時代でも奈良時代でも戦国時代でも、『この時代の人なんじゃないかな』と思えるようなまっすぐさがある。純朴さ、汚れていない感じが、彼から匂い立ってくるんです」(村橋)

 また、橋爪は「この後のネタバレになってしまうところもありますが」と前置きしつつ、「トキは銀二郎と結婚しますが、もちろん最後はヘブン(トミー・バストウ)と一緒になるわけで、どこかで別れることになるんですよね。それでも銀二郎には、トキと素敵な生活をしてほしいと思っていました」と、2人の結婚生活に言及。

 キャスティングについては「銀二郎が誰からも愛される男になるように、嫌味にならない芝居を髙石さんと一緒にしていただける方を探したいと思った」と振り返り、「寛一郎さんが持つ実直さによって、みんなが愛する推しキャラクターになっていくだろうなと。きっとみんなが銀二郎を好きになるし、銀二郎ファンがいっぱいできると思いますよ」と期待を寄せた。

 登場するなり、SNSで話題沸騰となった三之丞。一方、銀二郎が今後どのように視聴者の心を掴んでいくのか。トキや松野家の面々との掛け合いも楽しみだ。

■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK

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