『真夏の方程式』は“俳優・福山雅治”を堪能できる一作

俳優・福山雅治を堪能できる『真夏の方程式』

 9月12日に福山雅治主演映画『ブラック・ショーマン』が公開されたことを記念して、10月4日に『ガリレオ』シリーズの劇場版第2弾『真夏の方程式』が、フジテレビ系『土曜プレミアム』で放送される。

 本作は、2013年4月にフジテレビ系で放送された連続ドラマ 『ガリレオ』第2シーズン後のエピソードとして描かれたもの。福山が演じる天才物理学者・湯川の相棒となる刑事役はドラマ第2シーズンと同じく吉高由里子演じる新人女性刑事・岸谷美砂なのだが、劇中で湯川は岸谷よりもキーパーソンとなる夏休み中の少年・柄崎恭平(山﨑光)と多くの時間を過ごす。そのため本作は、ストーリーが比較的淡々と進んでいく『ガリレオ』らしさと相まって、“福山の演技を堪能する映画”として楽しむことができる。

 「家族になろうよ」、「桜坂」、そして『ガリレオ』がきっかけで生まれた柴咲コウとの音楽ユニット・KOH+の「ヒトツボシ」など、さまざまな名曲を生み出し、ミュージシャンとしても活躍している福山の声は、演技の上でも重要な役割を持っている。常に落ち着いたそのトーンは、緊迫した場面では安心感を与えてくれる。

 一方で本作では、舞台となる玻璃ヶ浦で変死体が見つかった事件に無関心だった湯川が恭平とペットボトルロケットを飛ばした帰り道、あることに気づき、岸谷に捜査状況を聞き始める。そこで湯川はふいに「ここの家族のことは調べてる?」と恭平が夏休みを過ごしている親戚の家族について質問する。その淡々とした声は、逆に事件に何かしらの“裏”があることを感じさせ、状況は一転してミステリアスな雰囲気に。福山の魅力的な声は場面を一変させる力もあるのだ。

 また、湯川の“本業”は物理学者で、『ガリレオ』シリーズの中でも研究しているものについて熱弁を振るおうとする場面が何度も描かれている。この時の湯川の様子は、小難しい専門用語ばかりが飛び出している上に「語りたい!」という気持ちが先走った、いわゆる“オタクの早口”であるにもかかわらず、とても聞き取りやすい。いい声と明瞭な発声は、それぞれ別の技術である。

 福山は現在の所属事務所が主催した「アミューズ・10ムービーズオーディション」で合格し、1988年に公開された映画『ほんの5g』で俳優デビューしたことでキャリアをスタートさせている。現在に至るまで多くのドラマや映画に出演していることから、福山が今でも俳優としてのトレーニングに力を入れ、俳優活動も自らの活動の一環として大切にしていることが窺える。

 さらに『ガリレオ』シリーズでは、福山が基本的に無表情を貫いているのもポイントで、湯川の“超理論派”な人物像をより浮き彫りにしている。その無表情も美しい福山は、おそらくそれさえも自分の“武器”になることを理解しているのではないだろうか。そしてクールであるからこそ、ふとした時に見せる表情の変化が分かりやすく、そのギャップにハマってしまう。本作では、湯川はペットボトルロケットを飛ばして、恭平に海の中を見せようとする。“実験”が成功し恭平は大興奮。ちょっと困りながらもそんな恭平を優しく見守っている湯川を見ることもできる。

 そして湯川のクールさは、勝ち気だが心の底に不安や弱さを抱えている女性たちをより引き立てる。それはドラマ 『ガリレオ』第1シーズンや『容疑者Xの献身』、『沈黙のパレード』の相棒・内海(柴咲コウ)との名コンビぶりや『ガリレオ』第2シーズンの小生意気な相棒・岸谷との軽妙なやりとりに表れている。そこへ本作では、日焼けした肌が健康的な川畑成実(杏)も加わってくる。成実は環境活動家で湯川とは意見が合わず対立するが、2人が事件を通してどのように心を通わせていくかも本作の見どころの一つといえるだろう。

■放送情報
土曜プレミアム『真夏の方程式』
フジテレビ系にて、10月4日(土)21:00~23:40放送
出演:福山雅治、吉高由里子、北村一輝、杏、山﨑光、塩見三省、白竜、風吹ジュン、前田吟ほか
原作:『真夏の方程式』東野圭吾(文春文庫刊)
脚本:福田靖
監督:西谷弘
音楽:菅野祐悟、福山雅治
©2013 フジテレビジョン アミューズ 文藝春秋 FNS27社

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