堤真一の凄さが堪能できる『容疑者Xの献身』 前半と後半の別人のような変化は必見

9月12日に福山雅治主演映画『ブラック・ショーマン』が公開されたことを記念して、『ガリレオ』劇場版3作品がフジテレビ系『土曜プレミアム』で放送。9月13日は、天才物理学者・湯川学(福山雅治)と天才数学者・石神哲哉(堤真一)のバトルが描かれる『容疑者Xの献身』がオンエアされる。
ここでは、湯川と静かに“知の対決”を繰り広げた石神を演じた堤真一に注目していきたい。
石神は、湯川とは帝都大学の同期にあたる。湯川は物理学科、石神は数学科に在籍していたが、ひょんなことから会話を交わす機会を得て交流を深めた。湯川に「天才」と言わしめるほどの数学の才能を持つ石神だが、家庭の事情で博士課程への進学を諦め、現在は高校で数学を教える教師となっている。劇中では数学の研究に没頭して翌日学校を休んでしまうことがあるというエピソードが明らかになっており、人に教えるよりも数学の研究に没頭している“学者”的な側面が強いと言える。
映画やドラマ、演劇にもジャンル問わず出演し、幅広い役柄を演じている堤だが、この石神役からも彼の徹底した役作りを細部から感じ取ることができる。
劇中後半では、数学の面白さを理解できない高校生に数学を教えるだけの毎日にうんざりしている石神の様子が映し出されるが、その時の石神は頭髪は薄めで前部に白髪があり、年齢の割に年老いていた。堤はそんな石神の雰囲気を表現するために、白髪に見えるように髪を染め、一部をそり落としたり毛を抜いたりして撮影に臨んでいる。ぜひ、この“老いた石神”と劇中前半に登場する石神の様子を見比べてほしい。石神の白髪が少なくなり、多少身なりを気にするようになっていることが分かるはずだ。この小さな変化が、花岡靖子(松雪泰子)と美里(金澤美穂)親子との出会いが、どれほどまでに石神に大きな影響を与えたのかを物語っている。このことは、石神が深く関わり、湯川が解決することになる事件のキーポイントとなってくる。
さらに、石神は湯川と同じく「天才」の「理系男性」だが、その人となりが全く異なる。湯川は、超理論的に畳みかけるような物言いや、やや嫌味な言い回しをしながらも人と交流することを嫌がらないが、石神はほとんど人と交流せず、不器用だが好きなこと(=数学)には熱中する。石神が、高校で教えるために小難しい数式を板書している時や湯川の突然の訪問を受け、ある論文に書かれていることが本当にあっているかを確認してほしいと言われた石神の様子をよく見てほしい。うっすらと口元に笑みを浮かべているのだ。堤の芸が細かすぎる。でもその細かさが石神がただの無愛想な人間でないことを証明するものになっているのだ。
このように繊細さを垣間見せる石神だが、劇中ではストーカーのような執着を見せる場面がある。事件の真相がよくわからない中での、まるで人が変わってしまったかのような豹変ぶりは、作品により深く惹き込まれるきっかけにもなっている。人には、自分でもよくわからない、言葉では表現しきれない思いや簡単には割り切れない複雑な感情がある。そんな人間の多面的な側面を、堤は見事演じきっているのだ。
ここで紹介した以外にも、石神はちょっとはにかんだり、嫉妬の炎を燃やしたり、泣き叫んだりと様々な表情を見せる。堤が演じる石神のどんな表情が心に刺さるか。そんなことを考えながら映画を楽しむのもいいかもしれない。
■放送情報
土曜プレミアム『容疑者Xの献身』
フジテレビ系にて、9月13日(土)21:00~23:40放送
出演:福山雅治、柴咲コウ、北村一輝、松雪泰子、堤真一ほか
原作:東野圭吾『容疑者Xの献身』(文春文庫刊)
脚本:福田靖
音楽:福山雅治、菅野祐悟
監督:西谷弘
主題歌:「最愛」KOH+(ユニバーサル ミュージック)
©2008 フジテレビジョン、アミューズ、S・D・P






















