『永久のユウグレ』が描く地続きのSF世界 P.A.WORKSが放つ“本格ラブストーリー”を堪能

近年のアニメは、漫画や小説といった人気原作をもとにした既存ファンの支持を前提にした企画も多い。もちろんそうした作品にも確かな魅力がある一方で、「次に何が起こるのかわからない」という予測不能さや、監督や脚本家をはじめとした制作陣の個性を堪能できるのはオリジナル作品ならではだろう。
なかでもP.A.WORKSは、青春や仕事、地域社会など、身近なテーマを丁寧に描き、現実を生きる私たちの心に寄り添う物語を送り出してきたスタジオである。『花咲くいろは』『SHIROBAKO』『サクラクエスト』といった数々の名作を生み出し、今やオリジナルアニメの歴史を語る上で欠かせない存在だ。
そのP.A.WORKSがこの秋に送り出す新作が『永久のユウグレ』だ。本作は完全オリジナルの“本格ラブストーリー”でありながら、SF的な要素が組み合わさった、実にユニークで野心的な一本といえるだろう。
ドラマファンも必見! 物語を彩る得田真裕の音楽
作品の注目度を一層高めているのが、豪華な制作陣の顔ぶれだ。監督は『妖狐×僕SS』や『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズで独自の演出センスを発揮してきた津田尚克。キャラクター原案には、漫画家として独自の世界観を築いてきたタヤマ碧が初めてアニメーションに参加し、『無職転生 II ~異世界行ったら本気だす~』『久保さんは僕を許さない』で繊細かつ柔らかなデザインを手がけた齊藤佳子とタッグを組む。

アンドロイド研究に没頭するトワサや、突然のプロポーズでアキラを驚かせるユウグレなど、新鮮さを兼ね備えたキャラクター造形は、すでに多くの視聴者の心を捉え始めているに違いない。
さらに音楽には、ドラマファンにはおなじみの得田真裕が名を連ねる。『アンナチュラル』(TBS系)、『MIU404』(TBS系)、そして『silent』(フジテレビ系)、『いちばんすきな花』(フジテレビ系)、『海のはじまり』(フジテレビ系)と、近年のテレビドラマに欠かせない名場面を数々生み出してきた作曲家だ。日常の一瞬を特別な時間へと変える緻密な劇伴づくりは、アニメというフィールドでも存分に発揮されており、全曲を通して聴ける日が今から待ち遠しい。
“エルシー”が問う、これからの愛のかたち

では、『永久のユウグレ』が掲げる“オリジナル本格ラブストーリー”とはどのようなものなのか。象徴的なのは第1話のシーンだ。200年の時を経て北海道・ハコダテ村にたどり着いた主人公アキラは、偶然にも4人の女性が儀式を行う場面に遭遇する。戸惑うアキラにイディは「好きな人同士で宣誓してシエラーになる」儀式だと解説するが、それは結婚と似ていながらも異なる、新しい“エルシー”と呼ばれる制度だった。

互いに誓いを立てる点では一見結婚式に近い儀式だが、エルシーは性別や年齢、家族制度といった既存の枠組みに縛られない。「一緒に生きる」という誓いを社会制度として認める世界に、「従来のラブストーリーとはひと味違う」と感じた人も多いだろう。本作には「愛の形とは何か」「共同体の中で人と人との関係がどう変わっていくのか」といった問いを自然に投げかける仕掛けが随所に盛り込まれており、視聴者自身も思わず立ち止まり、自分の価値観を見つめ直すことになるはずだ。






















