アンソニー・マッキーのスター性が炸裂 『ツイステッド・メタル』は最高のカーアクション!

『ツイステッド・メタル』最高のカーチェイス

 映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』『マインクラフト/ザ・ムービー』からテレビシリーズ『THE LAST OF US』まで、近年大きな成功を収めているテレビゲーム原作の映像化作品。ストーリーのない“間違い探しゲーム”『8番出口』までスマートな不条理ホラーへ変換できてしまうのだから、いよいよこのムーブメントはホンモノだ。

 テレビシリーズ『ツイステッド・メタル』は1995年に発売されたカーバトルアクションゲームが原作。プレイヤーは機関銃を積み込んだ改造車を操り、敵機を撃破して次のステージへと進む。レトロアクションゲームにプロットはあってないようなもの。「謎の人物カリプソの主催するバトルロワイヤルに勝利すれば、どんな願いも叶えられる」というあらすじはゲーム中どこにも出てこない。現在はダウンロード販売でプレイ可能だが、2025年に遊ぶにはやや理不尽すぎる難易度だ(筆者は1時間ほどでコントローラーを放り投げてしまった)。当時人気を博したとはいえ、最後に新作がリリースされたのは2012年のこと。よくぞ掘り起こしたと言いたい企画力である。

 ロールプレイングゲームなどストーリー性の高い作品とは異なり、基本設定がシンプルなゲームであるほど他のフォーマットには変換しやすくなる。テレビシリーズ版は原作ゲームの設定を叩き台に、独自の世界観を構築している。舞台は大規模サイバー攻撃によって崩壊した“アメリカ分断国”。主人公ジョンは町から町へと物資を運ぶ通称“ミルクマン”。凶暴な野党、カルト集団など危険な奴らがひしめく荒野を、改造された2002年型スバルWRXで駆け抜ける……と聞けば『マッドマックス』シリーズ好きにはたまらないものがあるだろう。重火器を積んだ改造車が暴れ回り、バイオレンスシーンは満載。それらと同等以上に盛り込まれているのがケシカランまでのダークなギャグ。そう『ツイステッド・メタル』は1話30分のバイオレンス・カーアクション・コメディなのだ!

 ショーランナーを務めるのが『デッドプール』シリーズを手掛けてきた脚本家レット・リース&ポール・ワーニックのコンビと聞けば、『ツイステッド・メタル』のノリは十二分に理解できるだろう。となればここはライアン・レイノルズ級の減らず口が欲しいところ。主演を務めるのは同じくMCUから“2代目キャプテン・アメリカ”ことアンソニー・マッキーだ。今でこそ大いなる責任を背負い過ぎたサム・ウィルソンを神妙に演じているものの、軽口を叩きながら危機を乗り越える主人公ジョン役では陽性のチャームが炸裂している。輝くような笑顔に「なんでもっとコメディに出てくれなかったんだ!」とファンなら地団駄踏みたくなること必至。彼のスター性を再確認するはずだ(初期MCUから続投し続ける中堅スターのキャリア形成はそろそろ再検証されるべき)。

 そんなアンソニー・マッキーが背中を預け、コメディセンスを引き上げてもらっているのがヒロイン“クワイエット”を演じるステファニー・ベアトリス。人気コメディシリーズ『ブルックリン・ナイン-ナイン』で仏頂面の武闘派刑事ローザを演じた役者と聞けば顔が思い浮かぶ人も少なくないはず。99分署で鍛え上げられた瞬発力抜群のコメディセンスに加え、彼女の武器は低音から高音まで使い分ける声音の表情の豊かさ。マッキーとの相性は抜群。反目し合いながらも次第に恋に落ちていく2人が、本シリーズの大きな見どころとなっている。

 シーズン1ではサンフランシスコ〜シカゴ間を10日間で往復しなければならないジョンのタイムリミットと、兄の復讐のため終末世界の支配者ストーン(トーマス・ヘイデン・チャーチ)を追うクワイエットの物語が交錯。行く先々で恐るべきヴィランと対峙しながら、2人はやがて絆を深めていく。テレビシリーズのアクションものといえばB級が関の山だが、ショーランナーには『コブラ会』のマイケル・ジョナサン・スミスが参入。ジョンとクワイエットの意固地さは終末世界を生き抜いた強さの証だが、やがて2人が執着を捨て、人生に新たな価値を見出していく展開は思いがけず胸を熱くするものがある。

 ……という具合に、原作ゲームの基本設定である“バトルロワイヤルもの”という展開が全く登場しないことにファンは不安を感じるかもしれない。ご心配なく! シーズン2ではいよいよカリプソ(『バリー』のアンソニー・キャリガン)が登場し、アメリカ各地からヤバいマシンに乗ったヤバい奴らが集められ、カーバトルトーナメント“ツイステッド・メタル”の幕が上がる。同じシチュエーションを繰り返す“お約束の味”を良しとするジャンル作品が多い中、本作はシーズンごとに新たな展開を迎え、物語をより遠くまで運ぶ意欲作でもあるのだ。

 もう1つ話しておきたいのが、『ツイステッド・メタル』のクセになる味、殺人ピエロの“スウィート・トゥース”だ。世界崩壊に乗じて精神病院を抜け出し、ラスベガスを拠点に旅人を拉致。自身のショーの観客として監禁する……と設定だけでも相当ヤバいキャラクターを元WWEの人気プロレスラー、サモア・ジョーが演じ、声を『ボージャック・ホースマン』でおなじみのウィル・アーネットが当てている。“新たなファン”を獲得すべく、敵味方お構いなしに殺人行脚を繰り広げる様は一周回って痛快。文字通りトリックスターとしてシリーズを賑やかすマスコットキャラクターである。
 
 画面を埋め尽くさんばかりの改造車のカーチェイス、景気よく打ち上がる火薬量に心躍らずにはいられない。そして人気コメディシリーズの才能たちが本作のグレードを2つも3つも上げている。おなじみ「Rotten Tomatoes」ではシーズン2で92%をマーク。2025年テレビシリーズのダークホースとしてまくりあげているぞ。

■配信情報
『ツイステッド・メタル』シーズン2 
Huluにて全話独占配信
出演:アンソニー・マッキー、ステファニー・ベアトリス、アンソニー・キャリガン
声の出演:ウィル・アーネットほか
製作総指揮:マイケル・ジョナサン・スミス、レット・リース、ポール・ワーニック、アンソニー・マッキーほか
©2025 Sony Pictures Television Inc. and Universal Television LLC. All Rights Reserved.
配信サイト:https://www.hulu.jp/twisted-metal

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