『いつか、無重力の宙で』主人公をしなやかに支える森田望智 『虎に翼』でも見せた光

9月8日に放送がスタートした夜ドラ『いつか、無重力の宙で』(NHK総合)。大阪の広告代理店に勤める飛鳥(木竜麻生)が日々の仕事に忙殺されるなかで、かつての友との再会をきっかけにして、高校時代に抱いた“宇宙への夢”を思い出していく青春ストーリーが描かれる。
一緒に宇宙へ行こうと夢中で語り合った天文部の4人が、それぞれ30歳になって仕事や家庭の忙しさに翻弄されるなかで、もう一度、宇宙への夢を再燃させていく。無謀にも思える夢に向かって果敢に挑もうとする彼女たちの姿は、同世代の筆者にとって憧れに近しい眩しさを感じるだけでなく、やりたいことに悔いなく手を伸ばす勇気をお裾分けしてくれるようだった。

本作の第1話では、飛鳥が立場や責任という名の“重力”に押しつぶされそうになりながら、自身のやりたいことを取り繕って必死で働く姿が映し出される。そして、飲み会の手配や上司のミスの肩代わりに奔走した結果、ついには会社からの帰り道で座り込んでしまう。そこに颯爽と現れては、座り込む飛鳥に手を伸ばしたのが、高校時代の天文部の仲間であるひかり(森田望智)だった。
13年ぶりの再会でありながら、高校生のときと変わらない純粋な表情で「実は今、FBIにいるんだよね」と突拍子もない冗談を言うひかり。しかし、彼女自身も、学生の頃に抱いていた「宇宙飛行士になる夢」を断念せざるを得ない理由があった。
そんなひかりの存在が、これまで飛鳥が胸にしまっていた宇宙への憧れと仲間との約束にもう一度、陽を当てる。ひかりの太陽のような明るさとポジティブさはもちろんのこと、彼女を演じる森田のしなやかな芝居が、主人公に希望の光を浴びせていたように思う。

これまでも森田はさまざまな作品で、矢面に立つ主人公を親友として支える役柄を担ってきた。NHK連続テレビ小説『虎に翼』では、主人公の寅子(伊藤沙莉)の女学校時代からの親友であり、兄・直道(上川周作)の妻となる女性・花江を演じている。
『虎に翼』森田望智が“花江を超えた”瞬間 「お芝居の楽しさってこういうところ」
NHK連続テレビ小説『虎に翼』で“もうひとりの主人公”と呼ぶにふさわしい・猪爪花江。主人公・寅子(伊藤沙莉)の親友という立場から…本編に登場したときから「結婚して幸せな家庭を作る」ことを宣言して、実際に卒業と同時に直道と結婚した花江は、作品を通して寅子のもっとも身近な存在だった。寅子が法律を学んで法曹の世界に足を踏み入れたときも、強い覚悟からなる自身の主張は曲げずとも、彼女の志を尊重して応援する柔軟さを持ち合わせる。もの柔らかなのにからっとした人柄は、物語がどんよりと暗くなりそうなときに、ぱっと周囲を明るく照らしてくれる光を放っていた。
それでも、彼女の不安や葛藤がまったく描かれなかったわけではない。寅子とともに法律を学ぶ女性たちの姿を目の当たりにして、ひとり家庭で過ごすことへの心寂しい気持ちを募らせることもあった。夫を戦争で亡くした際には泣き崩れてしまうが、幼い2人の子どもを養うために、猪爪家の主柱として立ち続ける。簡単には飲み込めない屈折した思いを抱えながらも、寅子の味方であり続けた花江の姿を、ハキハキとした口調や朗らかな表情で森田は体現してくれた。
『恋は闇』万琴×浩暉の“依存関係”に何が待ち受ける? 岸井ゆきのが演じてきた“生々しさ”
志尊淳と岸井ゆきのによる水曜ドラマ『恋は闇』(日本テレビ系)が、じわじわと視聴者の心に深く刺さりつつある。6月4日放送の第8話で…さらに、「究極の恋愛ミステリー」と銘打たれて4月に放送された『恋は闇』(日本テレビ系)で演じたのは、情報番組のディレクターを務める主人公・万琴(岸井ゆきの)の学生時代からの親友である向葵。連続殺人事件を嗅ぎ回っていた週刊誌のフリーライターである浩暉(志尊淳)が気になり、どんどん距離を縮めていく親友の万琴を心配しながらも、恋愛ごとに対しては好奇心を抑えられていないお茶目な姿が印象的だった。
連続殺人鬼の犯人として浩暉に疑いの目が向けられるなかで、彼と親密な関係を続けていた万琴の身を案じて、毅然とした態度で注意喚起を行う。普段は万琴の相談相手として明るい表情を浮かべているが、橋の下で浩暉と対峙するシーンでは、危険を顧みることなく立ち向かっている。彼女のチャーミングさだけでなく、凛とした強さを体現する森田は、ハラハラした展開が続く物語のなかでもほっと心が休まるひとときを作り出してくれた。

彼女が演じる人物は、いつも主人公をしなやかに支えている。そして、それは森田が演じるからこそ、柔らかな表情と芯の強さが合わさった魅力的なキャラクターになっているように思う。
再び、宇宙の夢に向かって歩み始めた飛鳥とひかり。ふたりは天文部の仲間たちと伴走する未来をどのように照らしていくのか。2度目の青春物語は、まだ始まったばかりだ。
■放送情報
夜ドラ『いつか、無重力の宙で』
NHK総合にて、毎週月曜から木曜22:45~23:00放送
出演:木竜麻生、森田望智、片山友希、伊藤万理華、奥平大兼、田牧そら、上坂樹里、白倉碧空、山下桐里、鈴木杏、生瀬勝久
天の声(語り):柄本佑
脚本:武田雄樹
制作統括:福岡利武
音楽:森優太
主題歌:吉澤嘉代子「うさぎのひかり」
プロデューサー:南野彩子
演出:佐藤玲衣、盆子原誠、押田友太
写真提供=NHK























