『愛の、がっこう。』を深める“サブキャラ” 田中みな実&中島歩が主人公に与えた影響

『愛の、がっこう。』を深める“サブキャラ”

 また、もう一人、この物語に欠かせない人物と言えば、中島歩演じる愛実の婚約者・洋二だ。空気を読めずに愛実をベッドに押し倒そうとするし、自分には他に関係を持っている女性がいるのに愛実のことは怪しむ。愛実とカヲルが最後の別れを告げた夜、カヲルを殴って階段から突き落とした時には、当事者ではないのに怒りさえ湧いた。

 多くの人がそうであったように、筆者も『あんぱん』(NHK総合)で中島が演じていた役柄とのギャップにショックを受けた一人だが、洋二は決して一言で“嫌なやつ”と言えるキャラクターではない。ドリンクバーでコーヒーを満杯入れてしまったり、駐車が下手くそだったり……感情がわかりやすいその人柄には親しみやすさがあって、芯から“嫌なやつ”ではないことが描写されていた。付き合っていた女性がいたことは愛実に正直に話したし、愛実の父親のおかしな点も真剣に指摘してくれた。突き落とされたのに、愛実に真実を話さなかったカヲルには、後日直接会ってしっかりと謝罪もした。

 彼の愛実に対する粘着質な行動には、第9話で本人も言っていたように、執着と嫉妬があったのだ。「僕自身も君への気持ちを考えてみた。愛情っていうより執着だったと思う」という言葉と共に、自分の罪を打ち明ける姿には今までとは違う覚悟があった。また、愛実にカヲルの想いを代弁するなど、なかなか踏み出せない愛実の背中を、すでに他人であるにもかかわらず押してくれた。さらに、カヲルにも愛実の居場所を絵に描いて教えてあげる優しさがあった。愛実と洋二の関係性よりも、カヲルに振り回される洋二という不思議な2人の関係性が、“嫉妬心”という一言では収まらないような、物語の面白みを作り出してくれたのではないだろうか。

 そしてそんな百々子と洋二の掛け合いは、この物語の一つのスパイスになっていたとも言える。愛実がホストクラブに入って行った理由を知るために、洋二がこっそり百々子の職場にやってきたことをきっかけに、そのおかしな関係性が何度か続く。執着しやすい洋二とあっさりしている百々子のやりとりは妙にテンポがよく、洋二は百々子の助言を素直に受け入れて即実行する。視聴者が洋二に言いたいことをすべて百々子が言ってくれるから、どこか爽快感もあった。

 さらに、その他のキャラクターの本質も見えてきて、物語はついにクライマックスを迎えようとしている。愛実の同僚である栄太(味方良介)について、愛実は当初「私のことを馬鹿にしている」と思っていたけれど、実は副担任として純粋に心配してくれていた。愛実を抑圧していた父親の弱さや、母親の本心も徐々に明らかになり、カヲルとの関係をきっかけに愛実を取り巻くそれぞれのキャラクターの人生が少しずつ前に進みつつある。

 いつも守られてきた愛実は、カヲルを守る番になった。2人とも人生の転機を迎え、前に進む時が来たのだ。予告では、愛実の父親が洋二と怒鳴り合い、カヲルも詰め寄られていたが、一体どうなってしまうのか……。2人が真の幸せを掴めるようになることを願いたい。

『愛の、がっこう。』の画像

木曜劇場『愛の、がっこう。』

井上由美子が完全オリジナルストーリーで描く、すれ違うことすらないはずの2人が出会い、惹かれ合うラブストーリー。高校教師・小川愛実が、文字の読み書きが苦手なホスト・カヲルに秘密の“個人授業”を続ける中で次第に距離を縮めていく。

■放送情報
木曜劇場『愛の、がっこう。』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:木村文乃、ラウール(Snow Man)、田中みな実、中島歩、坂口涼太郎、味方良介、野波麻帆、早坂美海、荒井啓志、別府由来、りょう、筒井真理子、酒向芳、沢村一樹
脚本:井上由美子
演出:西谷弘
プロデュース:栗原彩乃
音楽:菅野祐悟
制作著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/aino_gakkou/
公式X(旧Twitter):https://x.com/aino_gakkou
公式Instagram:https://www.instagram.com/aino_gakkou/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@aino_gakkou

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