井上由美子×西谷弘『愛の、がっこう。』対談 木村文乃とラウールが生んだ化学反応

現在放送中の木曜劇場『愛の、がっこう。』(フジテレビ系)は、立場も境遇も異なる二人が出会い、惹かれ合う姿を描くオリジナルラブストーリー。木村文乃とラウールが演じる小川愛実とカヲルの関係性は回を追うごとに深みを増し、第6話では全編の大半を二人だけで紡ぐ異例の構成が大きな話題を呼んだ。
「タイパ」「コスパ」が重視され、時間や手間のかかる恋愛を遠ざけがちな現代。だからこそ、あえて真正面から「純愛」を描くことに意味がある。そんな新たな扉を開くべく、『白い巨塔』(フジテレビ系)や『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』(フジテレビ系)など数々のヒット作を生み出してきた井上由美子(脚本)と西谷弘(演出)が再びタッグを組んだ。木村文乃とラウールの芝居について「素晴らしいコンビネーション」と語る二人に、制作秘話をはじめ、異例の構成が注目を集めた第6話制作の背景などを聞いた。
井上由美子「思い描いていた以上の化学反応を見せてくれた」

――井上さんは、キャストに会う前に脚本を書かれたそうですが、完成した映像をご覧になって改めて感じた、木村文乃さんとラウールさんの化学反応についてお聞かせください。
井上由美子(以下、井上):今回はまったくお会いしたことのない状態で、自分の想像力を頼りにキャラクターを立ち上げていきました。いつも役者さんの実際の個性がどう重なるのか読めない不安もありますが、木村さんとラウールさんはその不安を一気に吹き飛ばしてくれましたね。とくにラブストーリーは、キャストの相性が作品の成否を大きく左右する部分でもあるのですが、お二人は想像以上にプロフェッショナルで、芝居がぶつかり合ったときの力は圧倒的でした。期待以上どころか、こちらが思い描いていた以上の化学反応を見せてくれたと思います。
西谷弘(以下、西谷):現場で見ていて印象的だったのは、芝居を“つくる”段階を経ても、最後には二人だけの世界にジャンプしていける強みがあることです。愛実(木村文乃)が言葉を発すればカヲル(ラウール)がどう受け止めるのか、その返しに対して愛実がどう反応するのか……。その応酬は笑えて泣けて、そしてロマンティックで見応えのあるものになりました。

――座長としての木村さんにはどんな印象を持たれましたか?
西谷:木村さんは背中で現場を引っ張るタイプだと感じました。ベテランでありながらも、こちらの細かい指示にきちんと体を向き直して「はい」と答える姿が印象的で。芝居の技術ももちろんですが、根本にある心の綺麗さがあるからこそ、さらに一段上の表現に到達できるのだと思います。ラウールさんはやんちゃなカヲルを演じていましたが、本人は年齢以上に大人で落ち着いていました。二人の胸に秘めた情熱のぶつかり合い、今作品の最大の魅力ですね。
井上:台本に描かれたキャラクターを無理のない範囲で立体化してくれて、自分が書いたことを忘れて見てしまう瞬間がありました。セリフを“言わされている”ように見せず、自然にキャッチボールできるのは簡単なことではありませんが、ベテランの木村さんとフレッシュなラウールさんのコンビネーションが見たことのない空気感をつくってくれました。脚本家としてこれほど嬉しいことはないですね。安っぽい言葉はあまり使いたくないんですが……「天才!」と思いました(笑)。

――カヲルの舎弟・竹千代を演じる坂口涼太郎さんも、作品に良いアクセントを加えているように感じました。
井上:竹千代は演じ方次第で怪しさが前に出る役ですが、坂口さんは絶妙な塩梅で魅力を引き出してくれました。

西谷:坂口さんは以前から注目していた俳優で、いつかご一緒したいと思っていたんです。経験豊かな彼を、ラウールさんと組ませることで、新たな化学反応が生まれ、作品に厚みを出せると思いました。
井上:西谷さんが強く推してくださった坂口さんと中島(歩)さんの存在は大きかったです。竹千代は、私の周囲でも「イケメンホストより竹千代と飲みたい!」なんて声も多くて(笑)。あらためて坂口さんにお願いできてよかったと思います。



















