中島歩が語る、作品選びの基準と芝居へのこだわり 「ちゃんと“生きてる人”を演じていたい」

フジテレビ系木曜劇場『愛の、がっこう。』で、高校教師・愛実(木村文乃)の交際相手・川原洋二を演じている中島歩。川原は、大手銀行に勤める“ハイスペック男子”ながら、どこか奇妙な違和感をまとった人物であり、物語に不穏な空気をもたらすキーパーソンだ。脚本・井上由美子×演出・西谷弘という名コンビによる完全オリジナルストーリーの中で、中島はいかにしてこのキャラクターに“人間味のある滑稽さ”を吹き込んでいるのか。
朝ドラ『あんぱん』(NHK総合)に続く連ドラ出演に加え、『ルノワール』や『無名の人生』など話題作への出演が続く中島に、川原という複雑な人物像の立ち上げ方や作品選びのポイント、そして俳優という道を選んだきっかけを聞いた。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】
「みっともなくても、感情に正直でいる人のほうが救われる」

ーー『愛の、がっこう。』の脚本を読まれたとき、作品全体の印象をどのように受け止められましたか?
中島歩(以下、中島):最初に思ったのは、「あまりいい人が出てこないな」ということでした。でもそれが逆に、気持ちよく感じられたんです。もちろん、“いい人”を見ると安心感もあるとは思うんですけど、どこか空々しく感じてしまう部分もあって。それよりも、たとえみっともなくても、自分の感情に正直でいる人のほうが、僕は救われる気がするというか。この物語に登場する人たちは、我慢ができない人たちなんだと思います。普通、人に迷惑をかけないように、ある程度は自分の気持ちを押し殺して生きている。でもこの作品の登場人物たちは、どこかからその我慢ができない。だからこそ、どこか共感できる部分があるんじゃないかって。視聴者の方が、「この人たち、なんか分かるかも」と思ってもらえるような瞬間があったら嬉しいです。川原にイライラする方もいるかもしれないけれど、感情を揺さぶるようなキャラクターであることは間違いないと思います。
ーー川原洋二というキャラクターについては、どのように捉えていますか? 演じる上で意識していることがあれば教えてください。
中島:川原って、すごく変わった人なんです。でもその変な部分を前面に出しすぎてしまうと、視聴者にとっては“怖い人”に見えてしまう。共感以前に引いてしまうというか、サイコパス的な印象になってしまう危険性があるんです。だから、彼の裏にある人間味、心の奥底にある不安とか寂しさとか、そういった部分を丁寧に想像しながら演じています。演出の西谷(弘)さんからも「滑稽に見えるようにしてほしい」と言われていて。哀しさや空回りも含めて、ちょっと笑ってしまうような不器用さを感じてもらえるように意識しています。

ーー演じる中で、川原に対して共感できる部分はありましたか?
中島:正直に言うと、あまり共感はできません(笑)。彼は「学歴」や「出世」といった価値観に縛られすぎていて、自分の心の声が聞こえなくなってしまっている。ある意味で、自分を見失っているんだと思います。僕自身も一時期は「いい学校に行って、いい会社に入らなきゃ」みたいなことを考えていた時期もありました。でもわりと早い段階でそこからドロップアウトしているので、彼のように結婚までも出世のためという考え方は共感できなくて。ただ、それでももがきながら必死に生きている姿は、ちょっと笑えるけど、切なくもあって。視聴者の方には、その“ズレ”を面白がっていただけたらいいなと思っています。



















