興収で読む北米映画トレンド
『ジョーズ』50周年記念上映、北米No.2のサプライズ 波乱の夏が終わる

Netflixアニメーション映画『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』の嵐が、ひとまず北米の映画館を去った。今週末は祝日のレイバー・デー(労働者の日)を週明け9月1日に控えた3連休となったが、サマーシーズンの締めくくりにあたるレイバー・デーは、いつも映画館の客足がさほど伸びないことでおなじみだ。
8月29日~31日の北米映画週末ランキングは、話題のホラー映画『Weapons(原題)』が公開4週目でNo.1に返り咲いた。週末3日間の興行収入は1021万ドル、月曜日(レイバー・デー)を含む4日間では1240万ドル(推定)で、北米興収は1億3460万ドル。世界興収は2億3406万ドルと、製作費3800万ドルの低予算作品としてはやはり圧倒的な成果である。
もっとも、『Weapons』の首位復活劇は今週のサプライズではない。驚くべきは、スティーヴン・スピルバーグ監督『ジョーズ』(1975年)の製作50周年記念上映が新作2本を抑えてNo.2に輝いたことだ。北米3200館で、週末3日間では810万ドル、月曜日を含む4日間では980万ドル(推定)を記録。実際には1000万ドルを超えているという推測もある。

では、『ジョーズ』の再上映に敗れた新作とはなんだったか。『ザ・ホエール』(2022年)や『ブラック・スワン』(2010年)のダーレン・アロノフスキー監督が新境地に挑んだクライムコメディ『Caught Stealing(原題)』と、オリヴィア・コールマン&ベネディクト・カンバーバッチ主演の離婚コメディ『ローズ家~崖っぷちの夫婦~』だ。
第3位『Caught Stealing』(日本公開未定)は、『デューン/砂の惑星』シリーズのオースティン・バトラー&『THE BATMAN―ザ・バットマン―』(2022年)のゾーイ・クラヴィッツが共演した犯罪群像劇。90年代後半のニューヨークを舞台に、高校野球の元天才球児が、隣人に飼い猫の世話を頼まれたことから裏社会に付け狙われるストーリーだ。

北米興収は3日間で782万ドル、4日間で推定950万ドルと、事前の予想をわずかに下回った。もっとも製作費は4000万ドルと控えめだから、劇場公開後のリリース展開も含めてコストを回収していく狙いだろう。
Rotten Tomatoesでは批評家スコア84%・観客スコア86%と高評価で、映画館の出口調査に基づくCinemaScoreも「B」評価と堅実。共演者もレジーナ・キング、マット・スミス、リーヴ・シュレイバー、ヴィンセント・ドノフリオ、そしてバッド・バニーという、特に海外ドラマファンには熱い顔ぶれだ。
また『ローズ家~崖っぷちの夫婦~』(日本公開10月24日)は、週末3日間で635万ドルを記録して第5位に初登場。4日間の興行収入は推定800万ドル、海外興収920万ドルを含めれば世界興収は1720万ドルという、コロナ禍以降の大人向けコメディらしい滑り出しだ。
本作は、マイケル・ダグラス&キャスリーン・ターナー主演『ローズ家の戦争』(1989年)を『オースティン・パワーズ』『ミート・ザ・ペアレンツ』シリーズのジェイ・ローチ監督と『哀れなるものたち』(2023年)の脚本家トニー・マクナマラがリメイクした一作。愛し合い結婚したはずの夫婦は、夫の事業破綻をきっかけに激しく衝突し……。

Rotten Tomatoesでは批評家スコア65%・観客スコア77%、CinemaScoreでは「B+」評価とまずまずの成績。観客の男女比は男性43%・女性57%と女性の割合が大きいが、年代別には全体の約半数が45歳以上だった。25歳未満は全体のわずか14%だから、題材のためでもあろうが、ヒットのカギとなる若い世代に訴求できていない。



















