『KPOPガールズ!』Netflix史上初の北米No.1 配信、音楽、劇場を貫く社会現象に

『KPOPガールズ』Netflix史上初の快挙

 Netflix史上屈指の社会現象だ。8月22日~24日の北米映画週末ランキングは、Netflixで熱狂的人気を呼んでいるアニメーション映画『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』の“歌唱OK”のシングアロング上映がNo.1に輝いた。

 本作は、K-POPガールズグループ「ハントレックス(Huntr/x)」のルミ、ミラ、ズーイが、本当は悪魔ハンターであるという正体を隠しながら、ボーイズグループ「サジャボーイズ(Saja Boys)」に化けた悪魔と対決するストーリー。6月にNetflixで配信がスタートした当時も北米の一部劇場で公開されていたが、当時はほとんど話題にならなかった。

『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』Netflixにて独占配信中

 もっとも配信開始後、本作はSNSを火種として爆発的な人気を獲得。Netflixのアニメ映画ランキングでNo.1を獲得したほか、まもなく『レッド・ノーティス』(2021年)を抜いて英語映画の歴代視聴記録を更新する見込みだ。Rotten Tomatoesでは批評家スコア97%・観客スコア91%と評価もすこぶる高い。

 全編を彩るK-POPも大きな魅力だ。ハントレックスが歌う「Golden」は、ビルボードのメインシングルチャート「HOT100」でNo.1を獲得し、K-POPの女性アーティストとして史上初の快挙を達成。サジャボーイズの「Your Idol」と「Soda Pop」を含む3曲は、リリースから約2カ月が経過した今でもチャートのトップ10にランクインしている。

 すなわち『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』は、映像配信、音楽チャート、劇場興行をぶち抜く快進撃の真っ最中なのだ。

『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』Netflixにて独占配信中

 Netflixはいつも通り興行収入のデータを公式に発表していないが、報道によると、本作は23日(土曜)・24日(日曜)の2日間だけで1800万~2000万ドルを記録。人気ホラー映画『Weapons(原題)』を抑えてNo.1の座に輝いた。北米1700館で上映され、各地で完売が続出したという。

 この現象が証明したのは、やはり一定の層にとって映画館がイベントの場であることだ。たとえ自宅で何度観ていても、ファンは劇場へ足を運ぶ。シングアロング上映という「劇場ならではの体験」を用意したことも大きかった。これまでNetflixは自社作品の拡大公開に消極的で、賞レースの条件を満たすことだけを目的とすることも少なくなかったが、今回は絶対に成功する確信があったのだろう。そして、その確信はみごと現実となった。

 2025年のサマーシーズンは話題作が並んだが、事前の予想ほど興行収入は伸びていなかった。この週末は夏の終わりとあって話題作も公開されなかったため、北米市場全体の週末興収は夏季最低の7800万ドル程度となっている。しかし、Netflixが本作を上映していなければ6,000万ドルを下回っていた可能性さえあるのだ。

 映画館にとっては大きな恩恵となったが、唯一の例外は「自宅で観られる映画は上映しない」という方針を貫いている北米最大の映画館チェーン・AMC Theatresだった。もしもAMCが上映に踏み切っており、上映日数がもう少し多ければ、週末興収の累計額はさらに増えていたことだろう。

『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』Netflixにて独占配信中

 ローカルな想像力とクリエイティブが想像をしのぐ熱狂を呼び起こした本作は、『スパイダーマン:スパイダーバース』シリーズのソニー・ピクチャーズ・アニメーションが製作を担当。監督・脚本は、本作が監督デビューとなったマギー・カンと『ウィッシュ・ドラゴン』(2021年)のクリス・アッペルハンスが務めた。

 Netflixはすでに続編映画やスピンオフの企画に積極的だという。なお、北米で上映されたシングアロング版は『LET’S SING KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』として8月25日よりNetflixで配信開始されている。

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