『放送局占拠』伊吹は本当に“敵”なのか? 大和の真の目的など未解明の謎をおさらい

『放送局占拠』伊吹は本当に“敵”なのか?

 櫻井翔主演の『占拠』シリーズ第3弾となるドラマ『放送局占拠』(日本テレビ系)第7話では、これまで武蔵刑事(櫻井翔)とはシリーズを通しての宿敵であった大和(菊池風磨)が、妖のリーダー・般若こと伊吹(加藤清史郎)の暴走を止めるために手を組むという胸熱の展開を迎えた。

 しかし8月30日は『24時間テレビ』(日本テレビ系)があるために本作の放送は休止。このタイミングで、伊吹が般若になった経緯、そして大和のこれまでの行動原理を中心におさらいしてみたい。

伊吹の目的とは?

 まずは改めて伊吹について。武蔵裕子(比嘉愛未)の弟で25歳。義兄の武蔵に憧れ警察官となり、武蔵が立てこもり犯罪対策班BCCTに出向したのを聞き自らも異動願を出した、姉譲りの強い正義感の持ち主。そんな伊吹が般若になった元凶が、5年前に起きた「鎌鼬事件」。2020年1月14日、神奈川県三日月の桜咲海浜公園で、伊吹の幼なじみで恋人の神津風花(花田優里音)が鎌を振り回し、テレビ日本「NEWSFACT」の記者・安室光流(山本直寛)と同じ桜葉大学の学生の白石純恋(彩香)を殺害。現行犯逮捕したのが武蔵だ。逮捕された風花から薬物反応があり、動機は三角関係のもつれであると報道されてSNSでの誹謗中傷が激しくなり、風花は留置所で自殺。

 しかし事実は異なる。何かの真相を追う安室が、裏社会の始末屋である「のっぺらぼう」の大野原(北村優衣)と地内(谷川昭一朗)に殺害され、その死体を運んでいるのを神津と白石が偶然遭遇してしまい、のっぺらぼうは面白がって口封じのために神津に薬を射ち錯乱させ、彼女が殺害したようでっちあげた。そしてこの「のっぺらぼう」に指示を出していたのが警視庁警備部長の屋代(高橋克典)だったという事実も明かされた。

 そんな暗い過去を持つ伊吹を大和が拉致。同じのっぺらぼう(とその背景にいる者)への復讐と放送局占拠を企てる大和が「青鬼の後継者を育てることです」と、鎌鼬事件の真相を伝えることで伊吹の復讐心に火を点け、妖のリーダーに仕立て上げた。当初他メンバーはリーダーとして認めなかったが、銃口を自身の頭につけるなどの異常な覚悟を目の当たりにしたことで認められる。

 そして決定的に般若のように鬼になる事件が訪れる。妖たちが捕らえていたのっぺらぼうの2人が爆弾を盗んで逃走。それを追いかけた妖の“ムードメーカー”輪入道こと八丈豪(原西孝幸)が嵌められ、警察には彼が爆弾魔であると疑われてしまう。逃走した輪入道は結果的にバスジャックをして武蔵に迫られるかたちで自爆してしまった。伊吹はそれを嘲笑うのっぺぼうを、殺人をタブーとする大和の忠告も聞かずに射殺。「貴方のような甘い考えでは世の中は変わらない。罪深き人間を裁くには殺すしかないんだ」と言い放ち、思想の違いから大和を妖から追放して復讐の鬼と化した。思想の相違による仲間割れは前作『新空港占拠』でも見られたパターンだ。

 妖の目的は、それぞれの事件を裏で操る傀儡子の正体と、その裏側にあるものを世間に晒すことだろう。

 ここでいくつか気になる点がある。そもそも伊吹は風花が亡くなってから5年間何も行動を起こしたような雰囲気がないこと。ただこれに関してはネタバレにもなるので描くタイミングがなかったとも言えるが、風花を捕まえた武蔵に対してこれまで何らかの復讐心はあったのか。冷酷になったわりには懺悔させられる人質たちの命までは奪わない。よくよく考えると、のっぺらぼうたちを生かしておいたほうが目的の傀儡子の存在やテレビ局に隠された何かのヒントを引き出せるはずなのに、なぜ口封じのように殺したのか。またその裏にいた屋代を真っ先に拉致せず警察に任せているのはなぜなのか。今回の妖の目的は事実を捻じ曲げられ報道された被害者家族となったことでそれを裏で操っていた傀儡子。個人的な復讐以上に世間にその存在を晒そうと、テレビ局の秘密の部屋にある何かを探している。現段階で考えられるのが、傀儡子が政府や警察などの権力者の依頼で握りつぶしてきたゴシップのニュースデータが保存されている部屋で、その証拠を残していることで傀儡子が権力者の弱みを握り操ることができているのではないかということ。『大病院占拠』でのワクチン開発「P2計画」、『新空港占拠』での地下資源発掘の「Mプロジェクト」の真実を把握している可能性も。

 そう考えると、真っ先に秘密の部屋を探し出したいのは政府や警察であり、伊吹の行動は『潜入兄妹』のような警察側の特命部隊によるものと考えるといろいろと辻褄があってくる。そもそもわずか3カ月で人をここまで洗脳させられるものなのかという疑問もある。恋人の恨みはあるにしても今生きている姉を犠牲にしてまで強行するものなのだろうか。

 ただ分からないのが、大和が伊吹について「大勢の命を奪おうとしている」と言っていた「PM PLAN」。元カノが世論によって殺されたとはいえ、大量殺人計画はさすがにバランスが悪いと思うし、他の妖たちが伊吹に賛同しないだろう。またその証拠を見つけたところで、大勢の命を奪うものになりうるのか? ただ、他国と戦争になるようなネタだったら話は別だが、そこまで話を広げるだろうか。

 また、姉に最後まで見届けてもらうと言っていたが、もう般若になった理由は分かったのであとは何を訴えたいのか。

 しかし、冷凍室に監禁された大和を見るときの心配そうな顔、武蔵に対しては今もさん付け、姉への接触ぶりを見る限り、悪に染まりきっておらず、無理をしている感じにも見えなくもないが果たして。

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