『放送局占拠』伊吹は本当に“敵”なのか? 大和の真の目的など未解明の謎をおさらい

『放送局占拠』伊吹は本当に“敵”なのか?

大和の目的は?

 次に大和について。元々はアプリ開発会社「IZUMOビジョン」のCEO。同じ里親の尾張の元で育った妹のような存在の山城琴音(上西星来)が、新型ウイルスのワクチン開発計画「P2計画」の犠牲となってしまう。闇に葬られた不審死の真相を明らかにするために、武装集団「百鬼夜行」のリーダーとして『大病院占拠』事件を起こす。琴音は「P2計画」に従事する研究員の大輝(橋本悟志)とホテルで接触したことでハイドラウイルスに感染し、それらを隠蔽するために交通事故死として警察が処理。琴音はワクチン開発のサンプルとして界星堂病院の地下4階に冷凍保存されていた。真相が明らかとなりもう生きる意義を見いだせない大和は死を選ぶことも考えるが、武蔵との死闘の末に生きることを説得され収監されるも、『新空港占拠』のラストで脱獄したという流れだ。

 なぜ大和が再び占拠事件を起こそうと立ち上がったのかは第7話で明かされた。天狗/安室駆流(芝大輔)は大和が収監されている神奈川拘置所の刑務官で、鎌鼬事件でのっぺらぼうに殺された安室記者の兄。のっぺらぼうへの復讐計画(真相の究明?)として大和の協力をお願いするも拒否されるなか、2023年9月に突如会わせたい人がいると大和に告げる。亡き妹・琴音にそっくりの大島瞳(上西星来)が現れ、彼女は鎌鼬事件で犠牲となった2人の親友で、復讐のために力を貸してほしいと大和に懇願。最初は拒否するも何度も面会に来る瞳に妹を投影するかのように心を許し始め、もはや面会が生きる希望になりつつある中で瞳が自殺したと知らされる。事件を調べていたことでのっぺらぼうに殺されたことを聞かされ、怒りに満ちた大和は妖に協力することを決意。

 ただ普通に考えるとあまりにも出来すぎた流れで、瞳は天狗が用意した仕掛け人だと大和ですら予想できるだろう(妹コンプレックス過ぎて本当に信じている可能性もあるが)。妹に顔が似ていたのは、天狗の妹・がしゃどくろ/安室流華(瞳水ひまり)がホワイトハッカーとしての情報網を利用してそっくりな人物を見つけたり、里親の元で育った琴音の本当の生き別れた姉妹を探し出してきたなどいろいろと考えられる。ただこれが整形させてまで騙したとなると、もはや傀儡子が裏で糸を引いてるのではないかと疑ってしまうが、その可能性は低いだろう。

 ただ、妹絡みでやり残したことへの思いに火を点けたことは間違いなさそうで、その目的のために天狗たちに騙されたと知った上で話に乗ったとも考えられる。そして真相を追求していくうちに、P2計画にも関わってくる傀儡子の存在と政府・警察の闇が見えてきたのではないかと予想できる。琴音の事故死は完全なる捏造ニュースだったわけで、それを裏で操る真犯人がいると知ったのかも。ちなみに当時管理官の和泉さくら(ソニン)は捏造に加担していた人物なので、さくらに復讐心を抱いていても不思議ではない。

伊吹と大和の今後

 さて、殺人を許さない大和はのっぺらぼうを容赦なく射殺した伊吹と対立。妖を追い出されて武蔵と共闘する流れとなったが、正直まだ眉唾物だ。第8話の予告で大和が屋代と直接対話をしていた。武蔵に課せられた指令が内閣官房長官・式根泰山の息子で俳優の式根潤平(山口大地)の闇を暴くことだったのでその流れだと思われるが、それはつまり大和は武蔵と共闘することで警察内部に潜入することに成功し、真相に近づいたと言える行動だ。これが計画通りだとすると、仲間割れはミスリードで、伊吹以外の妖をも騙した大和は実は伊吹と繋がっている可能性がある。占拠事件を妨害するために犯行メールを送ったのも怪しい。ただ、もし伊吹が未だ権力側の人間だとしたら、大和の追放は正体に気づかれそうになったからで、大和は単独で真実を追求しようとしているなど様々な展開が予想される。

 大和の行動原理は今もなお琴音の死とP2計画の真相究明であり、その延長線上に青鬼の後継者を育てることがあるわけだが、ただ実際のところ武蔵への友情とライバル心、武蔵家への懺悔の気持ちもあるのではないかと考えられる。頭がスマートな大和ならば、服役中に事件のことを考えれば考えるほど、武蔵は任務を真面目に遂行していただけで何も悪くないと、認めたくなくともそう思うようになっていたはず。

 ただ正直『占拠』シリーズに関しては他のドラマと違い「何でもあり」でありつつ、ひねりがなく「ベタ」な流れもあるので、伊吹と大和の行動も本当に読めない。

 第8話で行われる式根の懺悔は、おそらくブラウン管のニュースに映っていた「オーバードーズ マンション自室で女性死亡 飛鳥瑠璃」に関連したものだろう。それを追求する大和と武蔵。化け猫 / 高津美波(入山杏奈)の父で新聞記者の高津国光(松原正隆)が盗撮の濡れ衣を着せられ自殺に追い込まれたが、彼はオーバードーズ事件を追っていた。おそらく彼は自殺ではなく、安室光流記者のように、屋代・のっべらぼうのルートで殺され、傀儡子によってでっち上げニュースを流されたと考えられる。したがってオーバードーズの件は、式根が遊びで使ったのか、もしくは彼女を自分の物にしようと眠らせるために打ったかで、過剰な薬摂取で亡くなってしまい、官房長官の息子のスキャンダルをもみ消すために屋代が動き、傀儡子が協力したというような流れだろうか。または鎌鼬事件のように後からのっぺらぼうが注射してオーバードーズに偽装したのか。いずれにせよ次回座敷童が素顔を現すということは飛鳥瑠璃の親族と考えられ、見た目や名前からしてADの忽那翡翠(齊藤なぎさ)説が濃厚だ。シリーズ恒例の裏切り者枠である情報分析官の三宅すず(吉田芽吹)も座敷童候補で複数人説も囁かれているが、シリーズの傾向から妖の協力者ではあるが妖ではない犯罪コンサルタントのような気もする。

 改めて屋代の目的は、本庄杏(瀧内公美)との会話で「私は必要なことをしたまでだ」「お前にとっての正義とは何だ」「正義のためなら何だってする」「お前はこの国を守るという意味が分かってない」とはっきり言っていることから、やはり政府を守る=正義のために動いている中間管理職と考えるのが無難で、やっていることは傀儡子そのものだと言えなくもない。どんでん返しがあるとするなら、前述したように伊吹と繋がっている説だとしたら面白い。ただ傀儡子の正体は、もはや捏造報道番組である「NEWS FACT」のプロデューサーである奄美大智(戸次重幸)以外考えられないが、それだとあまりにもベタ過ぎるのでどうだろう。予告で登場した、武蔵の結婚式での回想に何の意味があるのか。

 そして、まだ都知事候補/看護師長の沖野聖羅(片岡礼子)が番組本番前に「倉橋綾子」というネームプレートを持っていたことに関して初回以降触れられていないので、これがどう絡んでくるのか。同じ人質のアシスタント兼インフルエンサーの真鍋野々花(宮部のぞみ)も未だ動きはないが、この人物は初回で、青鬼の記事を見たタイミングでスマホに着信したメッセージ見てほくそ笑んでいたが、おそらく数々の事件をSNSで拡散していた「くだん@預言者」説が濃厚。妖がスマホロックを解除しようとしても開かない過剰なロック。傀儡子と繋がっているかは分からないが、ある意味彼女も傀儡子と言えるのではないだろうか。

 一番気になるのが、現在退場しているさくらがどう終盤に絡んでくるのだろうか。伊吹の直属の上司であり、P2計画を提案した人物なだけに大和とも深い因縁があるだろうし、おそらく立場的にも傀儡子について知っているはずだ。

 第8話放送まで1週間、まだ考える時間は十分にあるので、過去作を観るなどしていろいろな可能性を考察してみてはいかがだろうか。

『放送局占拠』の画像

放送局占拠

『占拠』シリーズ第3作目。『大病院占拠』では鬼、『新空港占拠』では干支をモチーフにしたお面が印象的だった武装集団だったが、『放送局占拠』では、妖怪のお面をかぶった妖が500名の人質をとり、放送局を占拠する。

■放送情報
『放送局占拠』
日本テレビ系にて毎週土曜21:00~放送
出演:櫻井翔、比嘉愛未、ソニン、瀧内公美、ぐんぴぃ、高橋克典、加藤清史郎、曽田陵介、吉田芽吹、戸次重幸、福澤朗、片岡礼子、齊藤なぎさ、山口大地、真山章志、亀田佳明、北代高士、宮部のぞみ、菊池風磨
チーフプロデューサー:道坂忠久
プロデューサー:尾上貴洋
演出:大谷太郎、茂山佳則、西村了
脚本:福田哲平
音楽:ゲイリー芦屋
制作協力:AX-ON
©日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/dbs3/
公式X(旧Twitter):https://x.com/dbs_ntv

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