今田美桜が『あんぱん』の主人公である面白さ “夫を支えた妻”美談から解き放つのぶの叫び

今田美桜が『あんぱん』の主人公である面白さ

 次期朝ドラ『ばけばけ』にも出演が発表されたシャーロット・ケイト・フォックスが出演した『マッサン』(2014年度後期)では、彼女が演じた妻エリーは夫より先に亡くなった。ウイスキー作りに余念のない夫マッサン(玉山鉄二)と二人三脚で歩み、夫を思いやりながら亡くなり、彼女の残した手紙が涙を誘った。

 『あんぱん』と同じ高知が舞台の『らんまん』(2023年度前期)も植物研究に余念のない夫・万太郎(神木隆之介)を経済的に支えていた寿恵子(浜辺美波)は夫を残して先に亡くなる。万太郎は力を注いだ植物図鑑に彼女の名前をつけた「スエコザサ」を載せる。

神木隆之介×浜辺美波『らんまん』充実の半年間に感謝 実に劇的だったスエコザサの脚色

充実の半年だった。朝ドラことNHK連続テレビ小説『らんまん』は、清濁併せ持ったひとりの植物学者・槙野万太郎(神木隆之介)の生涯を…

 モデルの夫が先に亡くなったのは『まんぷく』(2018年度後期)と『ゲゲゲの女房』(2010年度前期)。どちらも妻は専業主婦で夫を支えた。

 このなかで、妻当人が記録を残しているのは『ゲゲゲの女房』の妻・布美枝(松下奈緒)のモデルになった武良布枝のみ。ただし『ゲゲゲの女房』に勝るとも劣らず『マッサン』のエリーや『らんまん』の寿恵子はときに主人公にも見えるほど主体的に動いていた。『まんぷく』の福子(安藤サクラ)は布美枝と同じく主人公なので、専業主婦ではあるが主体性をもたされて彼女のイベントが多く描かれていた。

 夫より長生きした『ゲゲゲの女房』と『まんぷく』は妻が主人公で、先立った『マッサン』と『らんまん』は夫が主人公で、亡くなった妻に大いなる感謝を捧げるところが見せ場になる。

 つまり、主人公だが、夫より先に亡くなる朝ドラは珍しい。あくまで史実ではというものなのであくまで史実に基づいたフィクションの『あんぱん』がどうなるかはわからない。

 のぶはこれからどうなるのだろう。お金使いが豪快で、夫の手綱を握って好きなことをやっているが、世間には発信しない。そういう人になるのだろうか。それはそれで忸怩たる思いがあるんじゃないかという気もするが。筆者の妄想としては、暢さんは夢多きやなせたかしの妄想に取り込まれ理想のキャラクター化されたのだと思う。本人がそれに満足しちゃったのか、内心不満だったかまではわからない。こんなふうにあまり記録が残っていない人物のほうが想像が膨らんで興味をそそる。

 今田美桜が明らかにはちきれそうなエネルギーをその身に宿している俳優なのに、それを抑制されて持て余している感じがよく出ていて、勝手ながらそこがひじょうに面白い。見事なキャスティングだと思う。

参照
※1. https://diamond.jp/articles/-/370430
※2. https://diamond.jp/articles/-/362588

■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、高橋文哉、眞栄田郷敦、大森元貴、戸田菜穂、戸田恵子、浅田美代子、吉田鋼太郎、妻夫木聡、阿部サダヲ、松嶋菜々子ほか
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる