“名脇役”坂口涼太郎のしなやかな演技力 『愛の、がっこう。』『ちはやふる』など大活躍

演劇を観に劇場へと通う人々にとっても、坂口は特別な存在だ。
私がステージ上の坂口を目にしたのは、2023年に再々演された木ノ下歌舞伎の『勧進帳』がはじめてのことだった。あのときの衝撃と感動はいまでも鮮明に覚えている。鋭く伸びやかな声、指の先まで洗練された身のこなし。最前列でそのパフォーマンスに触れて、思わず見惚れた。それまで坂口の出演する舞台を見逃していたことを後悔したほどだ。
もちろん、それからちょうど1年後に上演された木ノ下歌舞伎の5時間におよぶ大作『三人吉三廓初買』には駆けつけた。やはり素晴らしかった。しかも彼は体調不良により降板した俳優に代わって急きょ参加した立場だったのだが、物語の中心に立ち、手練れの演技者たちとともに美しく壮大な作品をつくり上げていた。つくり手たちの坂口に対する信頼度の高さがうかがえたものだし、いち観客としても彼の安定感あるパフォーマンスへの期待が確信に変わったものだ。俳優・坂口涼太郎とは、各作品に圧倒的な強度を与えてみせる俳優である。それも、じつに軽やかに。
さて、彼が“いいアジ”を出している『愛の、がっこう。』に話を戻そう。坂口の演じる竹千代は底抜けに明るい人物だが、人間的にも非常にできた存在だ。たんに人間力の優れた人物なのか、はたまたこのような人間に至る経験を過去にしているのか。劇中でも少し明かされているが、後者が強いのだろう。その軽快で深みのある言動に触れるたび、竹千代というキャラクターの背景が見えてくる。すると自然と人物像の奥行きが生まれ、作品が深みを増すことにつながる。本作への坂口の貢献度は極めて大きい。

カヲルと竹千代が特別な関係だと先述したが、これはそれぞれの役を演じるラウールと坂口においてもいえること。ラウールはアイドルとしてキャリアを重ね、昨年は主演映画『赤羽骨子のボディガード』(2024年)も公開されたが、俳優としての経験が豊富だとはまだいえない。カヲルは個性的で特異なキャラクターなだけに、周りに頼れる存在がいないと浮いてしまったり、上滑りしてしまうのではないかと思う。そういう難しい役どころだ。
そんな彼の手を取り、ときに肩を組むのが、“竹千代=坂口涼太郎”なのである(もちろん、主演の木村文乃もそうだ)。坂口のようなプレイヤーの存在があってこそ、“カヲル=ラウール”は成立し、『愛の、がっこう。』は成立しているのではないだろうか。じつに頼もしい存在である。脇から支えるポジションなのだが、その美しいパフォーマンスをどうしても目で追ってしまうのだ。
井上由美子が完全オリジナルストーリーで描く、すれ違うことすらないはずの2人が出会い、惹かれ合うラブストーリー。高校教師・小川愛実が、文字の読み書きが苦手なホスト・カヲルに秘密の“個人授業”を続ける中で次第に距離を縮めていく。
■放送情報
木曜劇場『愛の、がっこう。』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:木村文乃、ラウール(Snow Man)、田中みな実、中島歩、坂口涼太郎、味方良介、野波麻帆、早坂美海、荒井啓志、別府由来、りょう、筒井真理子、酒向芳、沢村一樹
脚本:井上由美子
演出:西谷弘
プロデュース:栗原彩乃
音楽:菅野祐悟
制作著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/aino_gakkou/
公式X(旧Twitter):https://x.com/aino_gakkou
公式Instagram:https://www.instagram.com/aino_gakkou/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@aino_gakkou






















