『ウェンズデー』がZ世代を中心に支持を受ける理由 新世代ポップスターへの人気とリンク

『ウェンズデー』がZ世代を中心人気の理由

 たしかに、オルテガ演じるウェンズデーというキャラクターが、いまの若者に訴求したというのは、この“媚びない”姿勢、自分の個性を曲げずにナチュラルな生き方をしているところにあったのではないか。そんな彼女の態度は、音楽業界でいえば、Z世代からロールモデルとして絶大な人気を得ているビリー・アイリッシュにも通じるところがあると思える。

 であれば、イーニッドのキャラクターは、さしずめサブリナ・カーペンターのような、自身の魅力をスイートに表現するタイプといったところだろう。それぞれにスタイルは大きく違うものの、自身のポリシーや欲望に忠実に、ブレない態度を持っているのが彼女たちの共通点であり、その条件をクリアーしていることで、若い世代の憧れとして機能していることになる。

 Z世代、デジタルネイティブが、こういった生き方に憧れるというのは、思春期からSNSで自分を表現したり意見を言うような環境下で、嫌われたくないという恐怖感と、できるだけ大勢に好かれたいという承認欲求のはざまで、慎重なものいいが求められる状況にあるからだろう。プレッシャーのなかで身動きができず、守りに入って気を遣った発言しかできないのが、多くの若者に共通する状況であるといえる。それは、日本の多くの芸能人にすら共通する課題だといえる。

 ウェンズデーは、シーズン2の最初のエピソードにおいて、自分のことをカリスマだとして従おうとするような学生たち全てを否定し、孤立を選ぶのである。それは、ウェンズデーというキャラクターのイメージを守るのと同時に、人気に右往左往せずに、やりたいように生きるという、彼女のスター性をより輝かせているといえよう。つまり、この一連のシーンにおいて、本シリーズの支持のベースには、新世代ポップスターへの人気と同様の現象が起きていたことが考えられるのだ。

 つまり、ここでのウェンズデーは、従来のキャラクターを再定義し、ロールモデルとして慕われるダークヒーローとして登場したのだということが、この現象を受け新作として提出されたシーズン2で、はっきり示されたということとなる。それは、ディズニー映画『101匹わんちゃん』(1961年)で憎まれていた悪役のクルエラが、実写作品『クルエラ』(2021年)において、新たなファッションの時代を作る新進クリエイターとして肯定的に描かれた試みに近いものがあるといえる。

 とはいえ、それだけにもともとの『アダムス・ファミリー』のウェンズデーから、本シリーズのウェンズデーが、かなり乖離した存在になってしまったことも確かだ。そこに違和感をおぼえるものの、これがこのシリーズなのだと、原作から切り離して楽しむ姿勢が、視聴者に求められることになるだろう。そして新生ウェンズデーは、ポップスターのような人気者として慕われながら、それを唾棄する存在として描かれ、より求心力を獲得することになるのだろう。

 かつてウェンズデーを演じたクリスティーナ・リッチの再登板、そしてシニカルでエキセントリックな“のけ者”を演じてきたスティーヴ・ブシェミが出演した、シーズン2の前半に続き、満を持して後半では、レディー・ガガが出演することが分かっている。そう、今度は本物のポップスターの重鎮が、ジェナ・オルテガやエマ・マイヤーズと並ぶのである。今後配信される4つのエピソードでは、そこで起こる化学変化や、それが引き出すだろうロールモデル論についての深化にも期待したい。

■配信情報
Netflixシリーズ『ウェンズデー』シーズン2
パート1:独占配信中
パート2:9月3日(水)より世界独占配信

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