興収で読む北米映画トレンド
北米映画トレンドに新展開、ホラーとコメディの時代が来る? 話題作『Weapons』No.1

今週のランキングからは、ハリウッド映画がゆるやかに新たな転換期を迎えつつあることがうかがえる。そもそもコロナ禍以来、ホラーとコメディはある意味で対極の位置にあったのだが、両者の足並みがここにきて揃いはじめているように見えるのだ。
映画界がコロナ禍からの回復に苦戦するなか、ホラー映画はスーパーヒーロー映画とともに劇場興行を支えていた。ホラーには「ともに怖がる」という劇場体験があり、観客を映画館に向かわせるポテンシャルがあると信じられていたのだ。かたやコメディ映画は、スタジオ各社が次々と劇場公開を見送り、配信リリースにしたことで存在感が失われた。劇場公開される本数が激減し、公開されてもヒットするケースはほとんどなかったのである。
そんな中、人気コメディ映画『裸の銃を持つ男』をリーアム・ニーソン主演でリブートした『The Naked Gun(原題)』と『シャッフル・フライデー』というタイプの異なるコメディ映画が揃ってヒットしていることは、コメディジャンルにおいて大きな光明だ。数年間の空白を経て、「映画館でともに笑う」という体験の意義を、観客が再び求めはじめているのかもしれない。
意外なのは、『Weapons』と『シャッフル・フライデー』という、これまた対極の2作品が、ヒットのカギとされる若年層の女性観客を奪い合った可能性が指摘されていることだ。25歳未満の女性客の割合は、『シャッフル・フライデー』で全体の19%、『Weapons』では全体の18%とほぼ同率。そのうち、友人を連れて劇場を訪れた割合は『シャッフル・フライデー』が50%、『Weapons』が46%とこちらも近い数字となっている。
もちろんこの結果は、ストリーミング時代に慣れている若い観客が、配信ではなく映画館でホラーやコメディを観ることに興味を向けている証左だとも解釈できる。ホラーとコメディ、両方の今後に注目したくなる良い兆しだ。
その一方、前述の通りコロナ禍の映画館を支えたスーパーヒーロー映画の勢いが落ちていることも、やはり時代の転換期を意味しているのかもしれない。マーベル映画『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』は公開3週目も前週比マイナス59.9%と大きめの下げ幅となり、北米興収は2億3041万ドル、世界興収は4億3421万ドルと苦戦気味。DC映画『スーパーマン』は変わらず大ヒット中で、世界興収6億ドル超えが迫っているが、『ファンタスティック4』と同じく海外市場では期待を下回る数字となっている。

これらと対照的なのが『ジュラシック・ワールド/復活の大地』で、一時は成否が懸念されていたものの世界興収8億ドルを突破。海外興収は北米を上回る4億7318万ドルを記録した。北米では配信リリースもスタートしているが、週末ランキングでも第7位に入っている。ブラッド・ピット主演『F1/エフワン』も海外興収が4億ドルに迫る勢いで、アメリカ国内をはるかに超える数字だ。

2010年代からコロナ禍を経て、ハリウッド映画は時計の針を“スーパーヒーロー映画時代”よりも以前に戻している――現時点でそう言い切るのは早計だとしても、興味深い動きが起こっていることは確かだ。
北米映画興行ランキング(8月8日~8月10日)
1.『Weapons(原題)』(初登場)
4250万ドル/3202館/累計4250万ドル/1週/ワーナー
2.『シャッフル・フライデー』(初登場)
2900万ドル/3975館/累計2900万ドル/1週/ディズニー
3.『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』(↓前週1位)
1550万ドル(-59.9%)/3600館(-525館)/累計2億3041万ドル/3週/ディズニー
4.『The Bad Guys 2(原題)』(↓前週2位)
1040万ドル(-52.7%)/3860館(+8館)/累計4340万ドル/2週/ユニバーサル
5.『The Naked Gun(原題)』(↓前週3位)
837万ドル(-50.2%)/3363館(+19館)/累計3300万ドル/2週/パラマウント
6.『スーパーマン』(↓前週4位)
780万ドル(-43.1%)/2920館(-617館)/累計3億3124万ドル/5週/ワーナー
7.『ジュラシック・ワールド/復活の大地』(↓前週5位)
470万ドル(-46.4%)/2691館(-549館)/累計3億2680万ドル/6週/ユニバーサル
8.『F1/エフワン』(↓前週7位)
283万ドル(-32.1%)/1351館(-673館)/累計1億7858万ドル/7週/ワーナー
9.『Together(原題)』(↓前週6位)
260万ドル(-61.6%)/2225館(-77館)/累計1721万ドル/2週/NEON
10.『Sketch(原題)』(初登場)
252万ドル/2157館/累計501万ドル/1週/Angel Studios
(※Box Office Mojo、Deadline調べ。データは2025年8月11日未明時点の速報値であり、最終確定値とは誤差が生じることがあります)
参照
https://www.boxofficemojo.com/weekend/2025W032/
https://www.hollywoodreporter.com/movies/movie-news/weapons-box-office-freakier-friday-opening-1236341131/
https://variety.com/2025/film/news/box-office-weapons-freakier-friday-opening-weekend-1236486028/
https://deadline.com/2025/08/box-office-weapons-freakier-friday-1236482095/
https://deadline.com/2025/08/weapons-jurassic-world-box-office-milestone-global-international-1236483094/





















