『ダンダダン』“不器用な三角関係”が最高! 若山詩音×花江夏樹×佐倉綾音が生む熱量

異星人と幽霊が跋扈する“異常”な日常を舞台に、高校生たちの甘酸っぱい恋愛も描かれている『ダンダダン』。だが、本作が魅せるのは、ただのロマンスではない。極限の非日常の中で生まれた三角関係は、従来のラブコメにない緊張と切実さを帯びながらも、バトルと同じ熱量で描かれているのだ。オカルン、モモ、アイラという3人が織りなす恋のかたちは、感情と感情がぶつかり合い、やがて絆と呼べるものに変化していく過程そのものでもあり、その不器用で真っ直ぐな過程こそが、読む者の心を掴んで離さない理由のひとつだ。
『ダンダダン』第17話はついに邪視編が決着。だが安心も束の間、ジジの身には怪異邪視の影が依然として宿っている状況で、冷水をかけると邪視、お湯をかけるとジジへと人格が切り替わる奇妙な現象が起こる。その対応策としてモモが取ったのは、“みんなでお泊まり”という、いかにも『ダンダダン』らしい荒療治だった。モモ、オカルン、ジジ、そしてアイラがモモの家に集うという、ラブコメ展開まっしぐらの“同居生活”が始まった。そしてこの一連の出来事を通じて浮かび上がったのは、オカルン、モモ、アイラ3人の関係性の変化だ。
かと思えば、そこに容赦なく割り込んでくるのが、やはり『ダンダダン』らしさである。何気ない食卓のシーンでは、おでんの鍋を囲む中、アイラの無遠慮な発言やモモの牽制、オカルンの困惑が絶妙に絡み合い、会話のひとつひとつに微妙な駆け引きが宿る。第18話では三角関係がより深く進展していくことになるだけに、あらためて整理してみたい。
物語の核となるのは、モモとオカルンの不器用な両片思い。お互いに好意を抱きながらも、感情の伝え方を知らない2人は、常にすれ違いを繰り返してきた。でも、それがいい。第5話の階段シーンに象徴されるように、彼らの恋は縮まっては離れ、近づいてはまた迷うという不器用なもの。その背景には、いじめや孤独といった社会的な痛み、そして好きを言葉にする恐怖があるのだが、言葉にはできなくても、怪異に立ち向かう中で、信頼と尊敬、そして確かな愛情が育まれていく。この死地での成長という構図は、まさに『ダンダダン』ならではの演出だ。
そんな2人の間に現れたのが、アイラだった。彼女は、恋愛においては明らかに“加害者”として登場する。オカルンに一直線に好意をぶつけ、唐突にキス未遂まで仕掛ける強引さは、モモに嫉妬を生み出し、三角関係の構図を一気に表面化させた。
だが、アイラは単なるかき乱し役では終わらない。むしろ、彼女のまっすぐすぎる想いが、モモとオカルンの関係に波紋を投げかけ、停滞していた空気を少しずつ動かしていく。アクロバティックさらさら戦での死と蘇生、そしてオカルンへの恋心が芽生えるまでの流れには、どこか不器用で、だからこそ胸を打った。
興味深いのは、モモとアイラの関係性だ。顔を合わせれば決まって飛び出すのは「バカ」「ブス」などの口げんか。でもそのやり取りには、どこか遠慮のなさと心地よさが同居している。いつもはお利口に振る舞っているアイラが、モモの前では気取らず本音でぶつかり合っている様子は、まるで素の自分を見せられる唯一の相手のようだ。言葉の応酬の奥にあるのは、喧嘩するほど仲がいい、そんな不思議な信頼関係である。

共闘の中で、彼女たちは互いを戦友と認め合い、背中を預け合う。バトル漫画において、恋のライバルがここまで強固な信頼と対立の両立を見せる例は珍しい。これは、女性キャラクターを記号化せずに、等身大の人物として描く『ダンダダン』ならではの視点の表れだろう。
何よりモモが第17話で恋敵であるアイラを自宅に招いたことは、感情よりも仲間としての関係を優先する選択だった。オカルンは、その中心で困惑しながらも支え合う関係の中で、新しい役割を得ていく。恋愛、友情、戦友、家族といった多重関係こそが『ダンダダン』の三角関係の真価であり、その複雑さがリアルな青春の揺らぎを映し出している。
この恋がどこに辿り着くのか。最も重要なのは結末ではない。恋の過程で、3人がどのように自分を乗り越え、変化していくのか。『ダンダダン』の三角関係は、決着をつけるためにあるのではなく、共に過ごす時間のなかで、その輪郭を柔らかく変えていくものなのだ。いち視聴者として3人の姿を見ていると、恋に悩んだり、言いたいことが言えなかったりする時間こそが、大切に思えてくる。モモもオカルンもアイラも、不器用ながらも相手を想い続けている。だからこそ、この3人で過ごす時間を、もう少しだけ見ていたくなる。
■放送・配信情報
TVアニメ『ダンダダン』
第1期:各配信サイトにて全話順次配信中
第2期:MBS/TBS系スーパーアニメイズム TURBO枠にて、毎週木曜0:26〜全国同時放送
キャスト:若山詩音(モモ/綾瀬桃)、花江夏樹(オカルン/高倉健)、水樹奈々(星子)、佐倉綾音(アイラ/白鳥愛羅)、石川界人(ジジ/円城寺仁)、田中真弓(ターボババア)、中井和哉(セルポ星人)、大友龍三郎(フラットウッズモンスター)、井上喜久子(アクロバティックさらさら)、関智一(ドーバーデーモン)、杉田智和(太郎)、平野文(花)、磯辺万沙子(鬼頭ナキ)、田村睦心(邪視)
原作:龍幸伸(集英社『少年ジャンプ+』連載)
監督:山代風我
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
音楽:牛尾憲輔
キャラクターデザイン:恩田尚之
宇宙人・妖怪デザイン:亀田祥倫
アニメーション制作:サイエンスSARU
第1期オープニングテーマ:Creepy Nuts「オトノケ」
第1期エンディングテーマ:ずっと真夜中でいいのに。「TAIDADA」
©龍幸伸/集英社・ダンダダン製作委員会
公式サイト:https://anime-dandadan.com/
公式X(旧Twitter):@anime_dandadan






















