『あんぱん』『あさが来た』『ゲゲゲの女房』も 朝ドラが描き続ける“結婚の価値観”の変化

NHK連続テレビ小説『あんぱん』では、のぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)が無事に結ばれ、結婚式こそないものの、両家の家族が総出で祝うシーンが繰り広げられた。時代と社会の変化を反映してきた“朝ドラ”。ヒロインの生き方や仕事、家族との関係に加え、彼女たちがどのように結婚に至るのかという描写も、世相を映す鏡として興味深い。これまでの結婚の描かれ方を振り返ってみた。

幕末が舞台となっていた『あさが来た』(2015年度後期)では、主人公のあさ(波瑠)には許嫁の白岡新次郎(玉木宏)がいる。歳の差は11歳とかなり離れているのだが、当時、名家同士の結婚は生まれた時から決まっていることも珍しくなく、歳が離れていることも少なくなかったようだ。あさは、木登りばかりしているようなおてんば娘で、母親に「女に学問はいらない」と言われると、押し入れに籠城したりする気の強いお嬢様だった。当然、大人たちは狼狽するのだが、結婚相手である当の白岡は、子どものあさに対しても人として紳士的に礼儀正しく接する。「赤ん坊の頃から何べんもあさちゃんを見ているけど、あさちゃんのこと好きやで」と言うセリフは、現代的な感覚からすると違和感があるが、小さい頃から決められている相手への言葉としては当たり前の言葉なのかもしれない。家同士が決めた相手として、好きになるしかない、愛さなければならない、という義務感も感じる。白岡は、結婚後、商才溢れるあさを支える夫となる。とはいえ、ないがしろにされていると感じている節があったり、後継ぎが生まれないなど、家同士の結婚だからこその苦悩もともなっていく。時には幸せとはいえないような場面もあるのだが、辛抱強く添い遂げることに意味があると感じるようなラストだった。
朝ドラ『あさが来た』五代様ブームから10年 ディーン・フジオカが不動の人気になった理由
今から約10年前に放送されたNHK連続テレビ小説『あさが来た』(2015年度後期)の五代友厚役でブレイクしたディーン・フジオカ。…『ゲゲゲの女房』(2010年度前期)では、主人公の布美枝(松下奈緒)は、お見合いを繰り返している。戦後のため男性が少ないという事情もあるのだろうが、控えめすぎる性格と高すぎる背丈のせいでなかなか結婚が決まらない。父親が探してきたのが、水木しげるをモチーフにした村井茂(向井理)だ。茂は戦争で左手を失った貸本漫画家で、お見合い相手としては条件が良いわけではなかった。しかし、そこはお互い様とばかりに、たった5日で結婚式をすることになる。まだ「いきおくれ」といった言葉が残っていた時代、お嫁にいくことが親孝行だったのだろう。苦労を承知で嫁にやる両親と、覚悟を決めて東京へと旅立つ布美枝の姿に、当時の生活の厳しさも感じた。新婚生活も極貧なのだが、茂の漫画への情熱を間近に見るにつけ、布美枝は胸うたれ、彼のために奔走するようになる。やがて手にする成功は、二人が一緒に掴み取ったものだった。
1970代くらいになると、少しずつ恋愛結婚も目立つようになる。『ひよっこ』(2017年度前期)のヒロイン・みね子(有村架純)は、集団就職で東京へやってきて、大学生と付き合って失恋したりを経験しながら、仕事場の同僚と結ばれる。高度経済成長期、女性が地方から都会へ出てきて働き、外の世界と関わりを持つようになる中で、結婚の相手もまた、家とは別の場所で出会うようになった。






















