戸田恵子が放つ圧倒的な“はちきん力” 『あんぱん』薪鉄子でも“声”の説得力が光る

NHK連続テレビ小説『あんぱん』で代議士の薪鉄子を演じている戸田恵子。1988年にアニメ『それいけ!アンパンマン』(日本テレビ系)が放送を開始してからアンパンマン役の声優を務めて37年になる。満を持しての本作登場に熱い視線が注がれた。
ガード下の女王という異名を持ち、戦争孤児のための政策に力を入れている鉄子。高知新報の記者として取材を依頼してきた主人公・のぶ(今田美桜)の様子を何気なく見ていると思ったら、自分のもとで働かないかと勢いよく誘い、のぶだけでなく周囲を驚かせた。

のぶは、子どもの頃から足が速く、負けず嫌いで「はちきん」と呼ばれていたが、鉄子もまたプロフェッショナルな筋金入りの「はちきん」ぶりを発揮。良家の子女としての教育を受けつつ、決断力も行動力も度胸もある。戦争のために生活基盤を失った弱い立場の人たちを守るため、立ち向かう勇気を持った女性だ。アンパンマンにも通じる正義だが、女性である鉄子が代議士として取り組んでいく姿に意味があるように思える。
鉄子とのぶは、同じ高知出身の職業女性というだけでなく、出会ってすぐにお互い強く共鳴しあうものがあったのだろう。「飢えている子どもたちを後回しにしてはいけない! 現況の子どもたちの苦境は、戦争を起こした大人の責任だと思いませんか? 皆さん、私たちの力で世の中を変えていきましょう!」と胸を張って語る鉄子の演説をのぶは真剣な眼差しで見つめた。
女子師範学校で学んだのぶは、教師になった頃にはすっかり軍国主義に染まってしまった。教え子に「立派な兵隊さんになりなさい」と教育していたし、それが正しいことだと信じていた。高知にも大規模な空襲があり、やっと戦争が終わる。すると、それまで教えてきたことが間違いだったと教科書を墨で塗りつぶすことになり、のぶは教師を辞めた。そして、夫の次郎(中島歩)が病気で亡くなった。

生きることの意味も希望も見失ったのぶを、戦争から戻ってきた嵩(北村匠海)が励ました。高知新報の入社試験に合格して記者になっても、のぶは教え子を戦地に送るような教育をしていたことの罪悪感は消えていなかった。そんなときに出会ったのが、代議士・薪鉄子だ。
編集長の東海林(津田健次郎)にも、「子どもに同情する記事ばかり書いてしまうのは軍国主義教育に加担した罪滅ぼしのつもりか?」と指摘を受けただけでなく、飢えている子どもを救いたい気持ちが強く、鉄子の活動を手伝いたいなら東京に行くようにと背中を押された。
東京での鉄子との出会いによって、のぶは仕事をきっかけに新しい人生をスタートさせた。のぶの「はちきん」ぶり以上に、鉄子の「はちきん」ぶりにはスピード感と勢いがあって面白い。戸田は緩急自由自在の演技、伸びやかな声の説得力で、強い正義感だけでなく、包容力や優しさも想いのままに表現している。




















