『魔法少女山田』は異色すぎるホラー じわじわと迫る“不安感”に中毒者続出

令和のホラーブームとでも呼ぶべき現象が続いているここ数年。さまざまな趣向のホラー作品が生み出されるなか、魔法少女もの×ホラーという組み合わせによる異色作『魔法少女山田』が登場し、大きな話題を呼んでいる。
7月28日深夜にその最終話が放送・配信される予定なので、このタイミングで作品の見どころを振り返っておきたい。
同作は7月14日からテレビ東京系で放送が始まり、テレビ東京公式YouTubeチャンネルでも配信中。仕掛け人はホラー界隈ではお馴染みの大森時生プロデューサーで、たびたびSNSを賑わせてきた「TXQ FICTION」シリーズの第3弾にあたる。
「TXQ FICTION」についてざっくりと紹介しておくと、本物のドキュメンタリー番組のように作り込まれたフィクション、すなわちフェイクドキュメンタリー(モキュメンタリー)を専門的に扱った人気シリーズだ。
ジャンルとしてはホラーにあたり、2024年4月に公開された第1弾『イシナガキクエを探しています』は、数十年前に姿を消した女性をTV番組で公開捜査するという設定。同年12月公開の第2弾『飯沼一家に謝罪します』は、運気を上げるための儀式を行った結果、呪いに巻き込まれてしまったと思われる家族の真相に迫るという内容だった。
いずれも本当に存在する番組を扱っているような体裁でありながら、“この世のものではないナニカ”の存在がじわじわと浮き彫りになってくる作りで、現実と虚構の境界線がかき乱されるような恐怖感を与えてくれる。
そして待望のシリーズ最新作として公開された『魔法少女山田』も、同様に完成度の高いホラーモキュメンタリーとなっている。そして本作は“魔法少女”という異質な要素を含んでいるのが特徴だ。

まず第一夜では、ネット上で話題となっている「唄うと死ぬ歌」についての相談がTV番組に持ち込まれることに。相談者の貝塚陽太という男性は、なぜかこの歌をブームになる以前から知っていたという。そして歌の原型が『魔法少女おじさん』というマイナーな自主制作映画にあることが判明する。
第二夜では映画の一部が放送されるのだが、その内容はかなり奇妙。魔法少女風の衣装とお面を身につけ、不登校児のための授業動画をアップしている中年男性・山田正一郎に密着した映像となっており、例の歌を歌う姿も映し出されている。

しかしなぜその歌が、「唄うと死ぬ歌」としてネット上に流布されていたのかは不明。そして貝塚が歌の存在を知っていた理由も謎のままだ。こうして不穏な雰囲気のまま、物語は最終夜へと突入する……。
同作の見どころとしては、画面に満ちた独特の生々しさを挙げられる。作中作『魔法少女おじさん』はまるで本物のドキュメンタリー映画のような質感で、山田という人物の生活を細部まで映し出す。その一方で映像を撮影した人物の作為も滲み出ており、複雑に積み重なったリアリティが好奇心を刺激すると共に、“嫌な感じ”を醸成している。






















