『スーパーマン』はなぜ愛される傑作となったのか ジェームズ・ガンの卓越したバランス

『スーパーマン』はなぜ愛される傑作に?

 スーパーマンの葛藤や彼と地球上の両親の絆の深い親子の物語というドラマパートも秀逸だが、ラブストーリーも忘れてはいけない。クラーク・ケントとロイス・レインを演じた、デヴィッド・コレンスウェットとレイチェル・ブロズナハンのケミストリーが、とにかく素晴らしい。特にブロズナハンの芸達者ぶりはレインを演じた歴代の女優の中でも出色で、2人の宙に舞いながらのキスシーンは確かにアイコニックだが、それ以上に、両親が自分を地球に送り込んだ真意を知り傷心のスーパーマンがレインに初めて「I love you」と告げるシーンでは、薄暗い部屋のバックで巨大な目のクリーチャー(Fifth-Dimensional Imp)とジャスティス・ギャングが静かに戦っている。このカラフルで美しく幻想的な巨大異次元生命体を、例えばイギリスのロンドン・アイ(巨大観覧車)やニューヨークのマンハッタン・ブリッジのように、壮大な背景の装置として活かしながら、こんなに静謐で親密な、ロマンティックなシーンが生まれるとは予想していなかったので、驚愕するとともに心から感動した。そしてロイスは正義感たくましい記者としてレックス・ルーサーの悪行を暴きつつ、命懸けでスーパーマン=クラーク・ケントの救出に向かう。これぞ愛の力である。蛇足ながら、ブロズナハンは駆け出しの頃、アリ・アスター監督の2本の短編に出演したことがあり、タイプは異なるが元ホラー監督ジェームズ・ガンとは相性が良かったのかもしれない。

 視覚的に楽しいイマジナティヴで高度なアクションをこれでもかと畳み掛け、心の琴線に触れるドラマとロマンス、センスの光るユーモア(時にブラックな)で紡ぐ確かな手腕をジェームズ・ガンは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014年)でも披露していたが、今作はそれを上回ったのではないだろうか。アクションとドラマとコメディが高いレベルでバランス良く融合されたとき、傑作は誕生する。

 敗北から始まり、勝利で終わる『スーパーマン』。完全無敵な存在ではなく我々人間と同じように弱点も欠点もある、正義と希望の象徴であるスーパーヒーロー。それこそがスーパーマンが長年にわたって世界中で愛される要因だろう。

 2026年は本作にカメオ的に登場したスーパーガールを主人公に据えた『スーパーガール』が公開される。その先には必ず、『スーパーマン』の続編が待っているだろう。ジェームズ・ガンの『スーパーマン』ユニバースの行く末に大いに期待したい。

■公開情報
『スーパーマン』
全国公開中
出演:デヴィッド・コレンスウェット、レイチェル・ブロズナハン、ニコラス・ホルト、エディ・ガテギ、ネイサン・フィリオン、イザベラ・メルセド、スカイラー・ギソンド、ウェンデル・ピアース、ベック・ベネット
監督:ジェームズ・ガン
配給:ワーナー・ブラザース映画
© & TM DC © 2025 WBEI
IMAX® is a registered trademark of IMAX Corporation.
公式サイト:superman-movie.jp

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