『スーパーマン』ジェームズ・ガン&デヴィッド・コレンスウェット語るDCユニバースの今後

DCユニバースの新たな幕開けとなった、スーパーマンの完全新作映画『スーパーマン』。世界中で大ヒットを記録している本作で監督を務めたジェームズ・ガンとクラーク・ケント/スーパーマン役で主演を務めたデヴィッド・コレンスウェットにリモートで単独インタビューを行った。撮影秘話などの貴重なエピソードや、DCユニバースの今後について重要な発言も飛び出した。
「4カ月間、ほとんど一人で黙々とトレーニングをしていました」
ーースーパーマンのオリジンストーリーを描くのではなく、すでにスーパーマンが存在している世界から物語がスタートするのに驚きました。しかもスーパーマンが「負ける」ところから始まります。
ジェームズ・ガン(以下、ジェームズ・ガン):以前から、肉体的にも感情的にも、より脆いスーパーマンを見せたいと思っていました。今までと違うスーパーマンというわけではなく、これまで僕たちが観てきたものとは違う彼の側面を見せたかったんです。そしてどういうわけか、脚本を書き始めたときに、雪の中でスーパーマンがクリプトに助けられる、あの瞬間が浮かびました。また、僕らはスーパーマンに関して、観る必要があるものは既にすべて観ていると思いました。この映画では、スーパーマンは既に存在していて、マントをつけた空飛ぶスーパードッグが存在する世界に住んでいる。スーパーマンは脆さも持ち併せているし、負けることだってある。ただただスーパーマンが他を凌駕するような“スーパーマン映画”ではありません。立ち向かっているのは真の脅威であり、レックス・ルーサーもまた本物の脅威です。本作で描かれる危機はものすごく大きいものなんです。そんな中、「孤独の要塞」のマジカルなところや美しさ、驚異を感じてもらうことで、観客にこれから足を踏み入れるマジカルな世界がどんなところなのかを察してもらおうと考えました。ある意味、『ゲーム・オブ・スローンズ』や『ハリー・ポッター』のような世界観ですね。スーパーヒーローのオリジンものの世界には限界がありますが、この作品はそうではない。Kaiju(怪獣)やロボット、他のスーパーヒーローたち……マジカルでワンダフルなものがたくさん存在する世界に僕らは足を踏み入れるんです。
デヴィッド・コレンスウェット(以下、コレンスウェット):実際のところ、こういうオープニングになったことで、キャラクターへの入り口を見つけるのがとてもラクでした。というのも、スーパーマン映画の課題・挑戦は、いかに彼を無敵だと感じさせないか、そのためにいかに信憑性のあるリスク・危機を描けるかだと思うのですが、当初、その辺りをどうしたいか自分なりのアイデアをいくつか持っていたんです。でも、ジェームズの脚本はすぐにそういった概念を覆し、スーパーマンが冒頭からいきなりリアルな脅威と直面していることがわかるんです。もちろん、スーパーマンを負かすのが簡単だというわけではありません。でも、彼と匹敵する力がこの世界には存在していて、スーパーマンも相手を打ち負かすには、本気で努力しなければならないんです。それに、これはジェームズと明確に話したかどうかは覚えていませんが、スーパーマンがある敵を簡単に倒すことができたとしても、彼は葛藤するんです。自分がいまどこにいる必要があるのか、どこにどうやって辿り着けばいいのか、いまの状況にどう対処するのか……と。窮地を救い、敵を打ち負かすことができるからといって、それが彼にとって簡単なことだとは限らないんです。その葛藤こそが、演じがいがあるところです。葛藤は常にキャラクターへの入り口でもあり、観客に即座にリスクの高さを伝えてもくれますから。
ーーデヴィッド・コレンスウェットさんは『Pearl パール』や『ツイスターズ』の頃と比べて“ビジュアル”も大きく変化していますよね。体づくりは大変だったのでは?
コレンスウェット:この役をオファーしてくれたときに、ジェームズが気を遣いながら、「君はいい身体をしているけど、トレーナーを付けて肩のあたりを強化してほしい。それと、(スーパーマンの)脆さもね」と言ってきたんです。“強さ”と“脆さ”というのがいい言葉ですよね(笑)。でも面白いことに、それがトレーニングに入る前に交わした最後の具体的な会話だったんです。SAGのストライキで一緒に仕事をすることができなくなり、監督と会話することができないまま、4カ月間、ほとんど一人で黙々とトレーニングをしていました。実は前々から体重を増やしたいと思っていたので、リーズナブルな範囲でできるだけ身体を大きくすることを目標にしていました。でも当時は「これって理不尽!」と思うようなトレーニングも結構あったので、リーズナブルな範囲内というのは正しくないかも(笑)。とにかく、できる限り身体を大きくしようと考えて、監督と話せなかった4カ月間で40ポンド(約18キロ)ほど体重を増やしました。で、やっとジェームズと再会して夕食を食べに行ったら……。
ガン:デカくなってたよね(笑)。ヒゲも生えてたし。
コレンスウェット:みんなにちょっとショックを与えちゃって(笑)。そこから、どうやってより洗練された身体にするかという話になりました。でも、そこで僕らの見解が一致していることを発見できたのは良いことだったと思います。細身で脱水症状のボディビルダーみたいな体格を目指すのではなく、パワーリフターみたいな体格、農作業で体力をつけ、食べることが大好きで、たまにシリアルを食べまくるのが大好きな、農家の青年みたいな体格を2人ともイメージしていたんです。実際、困惑するトレーナーをよそに、シリアルもかなり食べていました(笑)。スーパーマンのクレイジーなほどにバキバキな身体になるために、脱水と飢餓を自分に強いると、あまり一緒にいて楽しくない人間になってしまうと個人的に思うんです。人に親切に、優しく接するのがとても難しくなる。明るく、誰にも優しいスーパーマンであることが重要だと思っていたので、食制限をやり過ぎてスーパーマンのそういう善良なところが影響を受けないようにすることも大きなポイントでした。
ーークリプトが想像以上に活躍していたのも印象的でした。
ガン:クリプトが登場することはかなり初期の段階で決めていました。僕の飼い犬のオズがいなかったら、このような映画にはなっていなかったと思います。もともと12フィート(3.65メートル)×12フィートのスペースで60匹の犬を飼っていた女性のところにいた犬だったんですが、重なるように生活し、餌を食べるのにも戦わなければいけない、重なったままおしっこをするような、本当に酷い状況で。里親になって引き取ったときはもうすぐ1歳になる頃だったのに、人と接したこともなかったんです。だから僕のことも怖がったし、触らせてくれませんでした。妻にも触らせなかったですね。そして、家に連れて来たら、家を本格的に破壊し始めたんです(笑)。家具も全部かじられたし、買ったばかりの1万ドルのノートPCもかじりました。本も書類もやられたし、靴も全部ダメにするような、史上最悪の犬で(笑)。おまけにいつだって僕の足を噛んでいました(笑)。やめてくれないんです(笑)。僕は裸足で家の中を歩き回るから、足を噛まれれば当然痛いし、だから、大声を出せない電話をしているときは、カウンターの上に登って話をしていたんですが、そうするともっと足を噛もうとカウンターに向かってジャンプするのが目に入る始末で(笑)。最悪だなと思ったけれど、少なくともこの犬がスーパーパワーを持っていなくて良かった思ったところで、ハッと閃いたんです。「クリプト、つまり“スーパードッグ”がいたらどうだろう? しかも、いつも描かれているような完璧で堅物な犬ではなかったら?」と。とにかく最悪で、めちゃくちゃ行儀が悪いけれど、愛すべき犬で、でもやっぱり最悪で……。アイデアはそこから生まれていきました。スーパーマンの世界は本当に複雑ですね(笑)。一方にはヴィランがいて、もう一方では家を荒らしまくり、ロボットに小便をかける犬がいる。問題ですよね(笑)。映画の中のクリプトはCGですが、撮影ではスタンドインの犬がいました。
コレンスウェット:僕はなるべく一緒に演じたくて、彼女を巻き込むようにしていました(笑)。
ガン:そうそう。名前はジョリーンで、彼女とのカットを撮ってから、人間に入ってもらっていました。親友のマーフを含め、とても小柄な女性を何人か雇って、犬のふりをして四つん這いで走り回ってもらいました。実際の犬の映像は使っていません。例えば毛皮がその環境でどんなふうに映るかを確認するための参考用のスタンドインだったので。
コレンスウェット:だから、ほとんどはジェームズが言葉で説明してくれました。クリプトがどんな行動をしていて、どうしてスーパーマンが時にイラっとするのかを。面白かったですね。ジェームズの頭の中にあるイメージをつかむために、オズのビデオも何本か一緒に観ました。
ガン:クリプトの扱い方は手慣れたものだったよね。苦手だったのが、ロイス・レイン役のレイチェル(・ブロズナハン)で(笑)。
コレンスウェット:そう!
ガン:膝の上に犬が乗っているシーンも、実際は犬がそこにいないから難しいんですよね。サイズも変わっちゃうので。レイチェルはそれを覚えられなくて(笑)。デヴィッドは素晴らしかったです。
コレンスウェット:僕の出身校、ジュリアード(音楽院)の先生が聞いたら喜ぶと思います(笑)。最初の1年間は、毎日何時間も何時間も、物や感覚と向き合うだけで、すべて想像上の作業だったので。一貫性を保つためにもその経験を活かそうとしたんです。
ガン:ジュリアードの話をどこでぶち込んでくるのかと思ったらここでか(笑)。
コレンスウェット:うまく入れられました(笑)。























