生田絵梨花、舞台で鍛えたスキルが光る 『明日はもっと、いい日になる』で際立つ静かな演技

フジテレビ“月9”枠で放送がスタートした『明日はもっと、いい日になる』。その中で、児童心理司・蒔田向日葵を演じるのが生田絵梨花だ。明るく感情豊かなキャラクターが並ぶ中にあって、彼女の演じる蒔田は、落ち着きと知性、そして他人に寄り添う静かな強さを漂わせている。ドラマの中でも特にセリフが多いわけではない。けれど、そのまなざしや仕草、間の取り方が場面に呼吸を与え、説得力をもって物語を支えている。
近年、生田が映像作品の中で見せる表現にはミュージカルの舞台で磨き上げた圧倒的なスキルと、映像表現に求められる繊細さがある。だからこそ、今の生田には説得力が生まれている。
生田の俳優キャリアを語るうえで、まず欠かせないのがミュージカルでの豊富な経験だ。『レ・ミゼラブル』では主要女性キャラクター3役を演じ分け、『モーツァルト!』『ロミオ&ジュリエット』『四月は君の嘘』など、数々の大作でヒロインを務めてきた。その実力は業界でも高く評価され、2019年には第四十四回菊田一夫演劇賞を受賞。名実ともに実力派舞台女優の道を歩んできた。
このキャリアは、乃木坂46のメンバーとして人気を博した“アイドルの生田絵梨花”という枠を超えて、彼女を表現者として際立たせたものでもある。一方で、舞台から映像への転向は、決してスムーズだったわけではない。カメラの前での演技には、控えめでリアルであることが求められる。大きな表現で伝える舞台とは対照的に、映像はほんのわずかな目線の揺れや、声のトーンの変化までをも映し出してしまう。まるでアプローチが異なるのだ。
だが、彼女はそのズレを違和感なく映像演技に落とし込んできた。たとえば、間の取り方、沈黙の活かし方、カメラに映る表情の変化をどう操るか。その試行錯誤の積み重ねが、今の彼女の自然体で柔らかな演技に繋がっている。
生田絵梨花、アイドル時代とは違う新たな挑戦 「どれも足を踏み入れたばかりという感覚」
7月期のABCテレビ・テレビ朝日系の日10ドラマ『素晴らしき哉、先生!』で地上波連続ドラマ初主演を務めることも決まった生田絵梨花…2024年放送のドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジテレビ系)では、生田はクールで感情を抑えた役柄・西島麻衣を演じた。セリフこそ少ないが、静かな佇まいと視線の動きだけで、その内に抱えた思いや葛藤を観る者に伝えてくる演技だった。舞台での表現力を映像用に調整し、説得力ある形で落とし込んだ好例だろう。一方で、同年の『素晴らしき哉、先生!』(ABCテレビ・テレビ朝日系)では一転して、感情を激しくぶつけるヒロイン役に挑んだ。地上波連続ドラマ初主演という大役だったが、そこでも印象的だったのは、彼女が見せる爆発力のある演技。第1話から生田演じる笹岡りおが「どこの高校で万引きはだめですよって教育すんだよ。教育なんかしねえよ、常識だわ。言うなら親に言え、育てた親に」と愚痴をこぼすというよりも吐き出すシーンは強烈だった。心をむき出しにするような演技と、ふと見せる繊細な表情とのコントラストが、キャラクターの輪郭を一層引き立たせていた。
この2つの作品の間で彼女が見せた表現の幅の広さは、舞台で培ったスキルと、映像作品への的確な適応力の賜物と言える。今の生田は、シーンごとのトーンや役柄に合わせて表現を柔軟にコントロールできる俳優へと進化している印象がある。






















