『ダンダダン』ジジはなぜ邪視に選ばれたのか？　石川界人の緩急自在の演技力が光る

　TVアニメ『ダンダダン』第14話「邪視」が放送され、多くの視聴者に強い衝撃を与えた。なかでも印象的だったのは、これまで緩急自在な“チャラ男”として振る舞ってきたジジと、突如その姿を現した怪異・邪視の存在だ。

　本稿では、この第14話を軸にジジと邪視というキャラクターを掘り下げながら、作品が提示する“善意と悪意の表裏”、“怪異に宿る人間性”といったテーマの深化を読み解いていきたい。

　第14話では、鬼頭家の200年にわたる因習であるモンゴリアンデスワームへの供物の儀式と、ジジの家に隠された過去が明かされる。霊力による念波で自殺を図るモモとオカルンを、ジジが命がけで救出する展開は、彼の持つ優しさとフィジカルの強さを浮き彫りにした。

　だが皮肉にも、その“善意”が事態をより悪化させる。ジジの強すぎる同情心こそが、強力な怪異・邪視を呼び寄せる器となったのだ。この展開は「霊に同情するな」というターボババアの忠告を想起させ、『ダンダダン』が単なるバトルアニメではなく、倫理的選択を強いる青春ドラマでもあることを強く印象づけた。

　ジジは一見すると明るく軽薄な“陽キャ”だが、その内側には仲間を思う真摯な心がある。第14話では、仲間を救うために自ら危険に身を投じ、ついには邪視に憑依されるという、まさに“選ばれてしまった”キャラクターとしての運命が描かれた。注目すべきはそのギャップだ。普段の軽さがあるからこそ、邪視の力を宿したときの変貌が鮮烈に映える。

　この二面性を支えているのが、ジジ役・石川界人の演技である。軽妙な会話劇から、内面の怒りや悲哀が滲む邪視憑依後の演技まで、緩急自在の演技力が光った。石川の代表作には『ハイキュー!!』の影山飛雄、『僕のヒーローアカデミア』の飯田天哉など、誠実で芯のあるキャラクターが並ぶ。ジジという一見チャラいが実は繊細な役柄にも、彼の演技力が存分に活かされていた。